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Interview

新規事業立ち上げに共通するパターン「顧客開発モデル」

スタートアップの成功の秘訣とは

書籍"Four Steps to the Epiphany"は、米国UCバークレー、スタンフォード大のアントレプレナー教育において、キャズムと並ぶ起業系の超人気講座の教科書。本書の著者であるスティーブン氏に、新規事業立ち上げに共通するパターンである「顧客開発モデル」と、スタートアップの成功の秘訣についてきいた。  

 シリコンバレーのシリアルアントレプレナー(起業家)であるスティーブン・G・ブランク氏は、大手ベンチャーキャピタルから出資を受けマーケティング担当責任者からCEOまで様々な役職で8社の企業の創業・立ち上げに携わった。これら8社のうち4社は株式上場を果たした。現在は、大学生・大学院生向けに起業家コースを開発し、UCバークレー、スタンフォード大学、コロンビア大学等において教育・指導にあたっている。

スティーブン・G・ブランク氏
スティーブン・G・ブランク氏

 スティーブン氏の著作"Four Steps to the Epiphany"の日本語版『アントレプレナーの教科書 ―― 新規事業を成功させる4つのステップ』の訳者が、本書の肝となる部分について、スティーブン氏に電話インタビューを試みた。

インタビュア

・堤 孝志(つつみ たかし)

 三井住友海上キャピタル株式会社勤務。ニチメン、Worldview Technology Partnersを経て、2003年から現職(投資開発第一部部長)。エレクトロニクス、情報通信、クリーンテック分野を中心に幅広く投資活動を行う。東京理科大学工学部卒。カナダMcGill大学経営大学院修了。

・渡邊 哲(わたなべ さとる)

 株式会社マキシマイズ代表取締役。新規事業立ち上げコンサルタント。三菱商事を経て渡米、シリコンバレーでベンチャー企業投資関連業務に携わる。2002年、マキシマイズ設立、現職。大手IT企業の新規事業およびベンチャー企業の事業立ち上げを中心に事業展開中。東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。

出版までの経緯と顧客開発モデル

Q1:(インタビュア)

 出版までの経緯について教えてください。なぜ『アントレプレナーの教科書』を執筆したのでしょうか? どうやって「顧客開発モデル」にたどり着いたのでしょうか?

A1:(スティーブン氏)

 私は、これまで取締役等の立場から8社のベンチャー立ち上げに携わってきました。また、10~15社にコンサルティング等で携わりました。その経験や、私が直接関与していない他社における新規事業立ち上げに関する情報から、スタートアップの立ち上げにおいて何度も繰り返される共通するパターンを見いだしたのです。そのパターンはある程度予測可能なものですが、スタートアップ内部の秘話でもあるため、これまで誰もそれについて語りませんでした。そこで、そのパターンから抽出した価値あるインサイト、すなわち「顧客開発モデル」についての書籍を書くことを決意したのです。

 このパターンというのは、起業家が共通して犯す失敗で、「あまりにも早いタイミングで実行に徹すること」、「会社の成長ステージに不適当な人材を採用すること」、「創業者が投資家に期待を先行させてしまうこと」、といったものです。

 スタートアップを生み出すアントレプレナーは情熱に満ちたビジョナリーであるため、すぐに行動を起こそうとする傾向があります。実際、そのこと自体は物事を成し遂げる上で大事なことなのですが、これまでその情熱が上手に活用されていないことが多く、それが失敗の原因となっていました。運を天にまかせるのではなく、成功確率をあげるために進捗をどうやって確認すべきかといったことにはあまり注意が払われていません。そのような確認のためのガイダンス(適切な手順)の欠如から、「とにかくやろう」とスタートアップ立ち上げを進めてしまうのです。顧客開発モデルは、情熱という推進エネルギーを、スタートアップの初期段階におけるリスク低減にうまく結び付けていこうとするものです。

Q1a:(インタビュア)

 せっかくの情熱が、「良い技術なので、良い商品なので、製品の開発が終われば、初日から売れる」との思い込みつながってしまうのですね。

A1a:(スティーブン氏)

 そのような思い込みの背景にある多くの起業家共通の現象として、次のような自問自答によりリスクの低減をはかっていないことがあげられます。

  1. 自分が解決しようとしている問題/課題は何か?
  2. 誰が自社製品を買うのか?
  3. なぜ買うのか?

 このような自問自答をするだけでも、かなりの経営資源の節約につながります。

 私は、本書はもとより、顧客開発モデルについての大学院の授業でも多くの仮説(Hypothesis)を立てるよう推奨していますが、生徒には良くこう言っています。「君たちが仮説という言葉を使うのを許容するのは、高い授業料を払ってここにきているからだ。しかし、仮説(Hypothesis)というのは単に上品に言っているだけで、ビジネススクールの外では、それは推測(Guess)にすぎないのだ」と。起業家は顧客、市場、ポジショニング、価格など、たくさんの推測をします。顧客開発モデルは、これらの推測、仮説を起業家の情熱を生かして非常に速いスピードで公式に検証をしていこうという方法論なのです

Q1b:(インタビュア)

 日本で顧客開発モデルの話をする際に、多くの人から実例はあるかと聞かれます。顧客開発モデルを使った成功事例はありますか?

A1b:(スティーブン氏)

 ベンチャーキャピタルが顧客開発モデルについて価値を認め、投資先企業に適用を進めています。また、スタンフォード大学経営大学院のケーススタディとして、私が取締役として関与しているIMVU社*が顧客開発モデルを活用して事業立ち上げをした例がドキュメント化されています。

*訳注

 IMVU社:米国で人気のアバターベースのオンラインコミュニティサービス

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成功する新規事業/失敗に終わる新規事業

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https://enterprisezine.jp/article/detail/1425 2009/05/15 17:00

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