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なぜ、ゴーグルをした兵士は目を負傷したのか~米軍の事例に学ぶデータ活用の効用

IBM Information On Demand 2010 Conferenceレポート


ある時、米軍が過去の戦争における死傷者の記録を閲覧していたところ、目の負傷が原因で視力を失う兵士が多数存在していることに気が付いたそうです。保護用のゴーグルをしているはずの彼らがなぜ目に傷を負うのか。調査チームがデータ分析を行った結果、判明した理由とは? 2010年10月24日~28日にわたって米国で開催された「IBM Information On Demand 2010 Conference」から、2日目のゼネラル・セッションにゲスト・スピーカーとして登場したAtul Gawande博士の講演をレポートします。

戦死者を減らすための「データ活用」

 「ひとつのシンプルなデータをごらんいただきたい」。

アメリカの戦争死傷者

 2010年10月24日~28日にわたって米国で開催された「IBM Information On Demand 2010 Conference」の2日目、ゼネラル・セッションにゲスト・スピーカーとして招かれた外科医で作家のAtul Gawande博士が講演の冒頭に示したのが上の表である。これは、独立戦争以後にアメリカが経験した戦争とそれによって死傷した兵士数をまとめたものだ。例えば、アメリカ独立戦争では10,623人が負傷し、そのうち4,435人が最終的に亡くなったことがわかる。以降、南北戦争から二つの世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争を経て、イラク・アフガニスタンに至るまでの系譜が示されている。

 ここでひとつ念頭におきたいのが、この表はそれぞれの戦争の規模や犠牲になった兵士の数を示すと同時に、後方で兵士達を支援する医師達が繰り広げた奮闘の結果をも表わしているということだ。戦闘で傷ついた兵士達に適切な治療を施し、彼らが戦死者の列に名を連ねることをいかにして防ぐか。戦争の暴力と医師達の努力がせめぎ合う様子ををGawande氏は「人を傷つけるための武器というテクノロジーと傷つけられた人を救うための医療というテクノロジーの干渉」と表現する。

 さて、この表を見ると、独立戦争以後の負傷兵士の致死率は20~30%で推移していることがわかる。「イラク・アフガニスタン戦争では負傷者45,000人に対し、死者は4,500人にとどまっている。数字だけを見れば、過去の戦争よりも戦闘が穏やかになっていると考えてしまうかもしれない。しかしそれは違う。その背景には大きな変化があるのだ」とGawande氏は言う。

 独立戦争から現在に至るまでの間、兵士を殺傷するためのテクノロジーはシングルショットのライフルや拳銃からマシンガンや高性能爆薬へと格段に進歩を遂げてきた。そのことを考えれば、一定以下の水準で推移している致死率は兵士達の生命を救うための取り組みを米軍が継続的に行ってきたことを示している、ということだ。

 Gawande氏によれば、米軍が戦死者を減らすためにとったアプローチは2つある。そのひとつはもちろん医療テクノロジーの強化だ。医療技術の進歩は負傷者の救命に直結するため、古くは止血技術から最近では人工血液や皮膚の再生技術といった分野に至るまでサイエンスの新領域に対して米軍は莫大な額の投資を行ってきており、実際にそこから得られた成果によって大きなリターンを享受してきた。

 ただし、テクノロジーの強化ばかりが武器の進歩に抗してきたわけではない。もうひとつの重要な取り組み、それがInformation On Demand Conference 2010のテーマでもある「データ活用」である。

 (次ページへ続く)

 

 

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この記事の著者

緒方 啓吾(編集部)(オガタ ケイゴ)

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