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クラウドの優位性はPaaSで決まる。Azure App Serviceが世界で選ばれる理由とは?

2016/12/20 07:00

 IaaSから普及したクラウドコンピューティングは、よりクラウド本来の価値を提供しやすいPaaSやSaaSへとシフトしてきている。現在、マイクロソフトのPaaSはAzureの中でどのような位置づけなのか。さらには、今後PaaSはどういった方向性を目指しているのか。PaaSのサービスの中核であるAzure App Serviceの開発チームを率いる、プリンシパル・プログラム・マネージャーのアパルバ・ジョシ(Apurva Joshi)氏に話を訊いた。

ユーザーの利便性の向上がPaaSの目的

――IaaS先行で始まったクラウドですが、これから利用が本格化するのはPaaSやSaaSになると思います。Microsoft AzureのPaaSサービスの中核であるAzure App Serviceは、どのようなサービスなのでしょうか?

米Microsoft 社 Cloud & Enterprise プリンシパル・プログラム・マネージャー 
アパルバ・ジョシ(Apurva Joshi)氏

 マイクロソフトでは、クラウドのサービスを提供し始めた1日目から、PaaSが優位性になると考えてきました。そんな中、Azure App Serviceは、当初はWebのワークロードをクラウドに展開する新しい方法の1つとして提供しました。

 現状、クラウドには3つのワークロードがあります。まずはIaaSで、Amazon Web Services(AWS)はここから始まっています。次がPaaSで、マイクロソフトはここにもっとも力を入れています。またSaaSは、Salesforce.comがスタートさせたものでしょう。

 この3つを実世界にたとえれば、IaaSは自分の家を所有するようなものです。キッチンをどこに置き、寝室をどうするかなど、すべてを自分で決めることができます。とはいえ、いざ何かが起これば自分自身で直す必要があります。

 PaaSは賃貸住宅のようなものです。壁紙などを選ぶ自由はありますが、寝室やキッチンの場所を変えることはできません。多少のメンテナンスは自分でする必要はありますが、ほとんどのことは大家さんがやってくれます。SaaSは、高級ホテルのようなものでしょう。どこに何があるかは心配する必要がありませんが、その分高いコストを払うことになります。

 マイクロソフトは今、PaaSにもっとも投資をしています。我々のPaaSは5年前、ブログなどを簡単に展開、運用できるようにするAzure Websitesというシンプルなサービスでした。時間をかけてそれを拡張し、ECサイトなども含むあらゆるワークロードをクラウドで展開できるようにしたのがAzure App Serviceです。

 すでにグローバルで37万5,000を超える顧客がいて、120万ものアプリケーションがホストされています。120万のアプリケーションからは、日に100億のリクエストがありそれが処理されています。そしてアプリケーションは、世界中の30リージョンにあるデータセンターから提供されています。Azure App Serviceは、5年間、毎年3倍の速度で成長してきました。今後も同じような速度で成長すると考えています。

――マイクロソフトのPaaSが目指しているのはどんなところですか?

 PaaSの目的としては、当初は既存のコードをスムースにクラウドで使えるようにすることでした。それが今では、自動化を進め持続的なアプリケーションの構築やトラフィック管理などさまざまな機能が追加され、エンドユーザーの生産性の向上が大きな目的となっています。将来的にPaaSは、1つの技術を深掘りするのではなく、横展開でさまざまなものを取り入れていくことになるでしょう。マイクロソフトがLinuxに対応しているのも、そのような将来を見据えてのことです。どんな開発プラットフォームを使ってもAzure App Serviceなら効率的にアプリケーションを開発、展開できるようにします。

 もう1つの方向性としては、特定のニーズに応えていくというのもあります。政府やレガシーな企業が、クラウドの良さは意識しているけれどなかなか踏み出せないでいる現状もあります。踏み出せない理由は、セキュリティの懸念であったり、特有な要件に答える必要があったりとさまざまでしょう。

 マイクロソフトでは、さらにAzure App Serviceに投資して複数環境で利用できるようにし、ハイブリッドクラウドで容易に使えるようにしていきます。そのための1つには、たとえばパブリッククラウドの革新をオンプレミスやプライベートクラウドでも使えるようにするAzure Stackがあります。

 また、SIerやISVなどが自社データセンターなどで展開してきたサービスを、マイクロソフトのクラウドデータセンターに持ってくることで、さらなる価値の提供をサポートするのもPaaSの目的です。Azureに持ってくれば、既存のAzureの顧客に自社サービスを展開して価値を提供しやすくなります。これら目的を果すためのPaaSへの投資は、Azure App ServiceだけでなくAzureサービス全体で重要なものとなっています。

サーバーレスアーキテクチャが次なるITの変革をもたらす

――Azure App Serviceの中で特に力を入れているものはありますか?

 Azure App Serviceは、Web App、Mobile App、API App、Logic App、そしてサーバーレスアーキテクチャを実現するAzure Functionsといった5つのユニークなAzure Application Platformで構成されています。

 この中でも、サーバーレスアーキテクチャのAzure Functionに力を入れています。この領域には他に、AWSのLambdaが一般提供サービスとして展開され GoogleのGoogle Cloud Functionsがプレビュー版でサービスされクラウドでもっともホットなところです。オンプレミスに対しクラウドが登場してIT環境が大きく変革したように、サーバーレスアーキテクチャはIT、クラウドの世界に大きな変革をもたらすと考えています。

 私には今2人の子どもがいますが、彼らは学校でコーディングを学んでいます。彼らの状況は決して特殊なものではありません。子どものうちにコーディングを学ぶのは、世界中で起きていることです。今後は、どのような職業に就くとしても、コーディングを使えることが業務を大きく助けることになるでしょう。そうなったときに、サーバーレスアーキテクチャは重要で効果的なものになります。インフラがどうなっているかを気にすることなくコードが書けるのです。

 そのため、私が率いているチームの半数、15名を昨年このサーバーレスアーキテクチャの機能開発に割り当てました。そして、ゼロから始めて3ヶ月ほどで基本的な仕組みを開発し、6ヶ月という短い期間で一般提供にまでこぎ着けました。

――その他でPaaSの領域で力を入れているところはありますか?

 もう1つ力を入れているのが、Linuxのサポートです。マイクロソフトは、Linuxが大好きです。数年前までは真逆のことを言っていたかもしれません(笑)。とはいえ今は、Linuxのコミュニティを愛しているのです。我々がLinuxに関わった成果を、コミュニティや顧客に提供したいと真剣に考えています。これはAzureがオープンなプラットフォームだからこそのマイクロソフトの変化です。

 すでにAzure App Serviceの35%はオープンソース・ソフトウェアベースのもので動いています。こんなことは5年前にありませんでした。実際にLinuxのワークロードのサポートに大きく投資をしており、すでにAzure App ServiceではPHPやNode.jsなど開発者の好きなものが使えるようになっています。これまで使い慣れてきたものを使えるのです。さらにマイクロソフトはDockerも大好きです。AzureにプリセットされているLinuxだけでなく、自分のDockerコンテナをAzure App Serviceで使えます。そこではRubyでもPythonでも好きなものが使えます。

 このLinuxやDockerへの投資は、日本の市場でも重要です。日本でさまざまな顧客に会い会話をしていると、これらの領域に投資したことは正しかったと確信できます。これらの投資でAzureのサービスに、パートナーが参入しやすくなっています。Linuxのサービスは現時点ではプレビューですが、なるべく早くに一般公開する予定です。

Azure App Serviceが成長する企業のアプリケーションインフラを支える

――Azure App Serviceを活用している成功事例を教えてください。

 まずは、Jet.comというECサイトの成功事例があります。Jet.comはAmazon.comに競合するようなEコマースのスタートアップ企業です。Amazonよりも安価に商品を提供する手法で、巨大な先駆者に果敢に挑戦しています。Jet.comは創業当初からAzure App Serviceを同社のサービスインフラとして活用し、商品がカートに入ると、リアルタイムに最安値となる価格を再計算する仕組みなどを構築しています。それらを活用して、Jet.comはかなり速いスピードで成長しました。そしてその将来性が見込まれ、小売り大手のウォールマートが30億円で買収するに至っています。Jet.comが小規模の頃から大きく成長するまでを、Azure App ServiceのPaaSが支えたのです。

 もう1つの事例としては、ニュージーランドでマーケティングと分析サービスを提供するPlexureという会社があります。小売業では実際の店舗でのさまざまな物理的な移動を把握したいと考えています。顧客が店舗内のどの通路を歩き、どの商品を手に取り、手に取ったのに買わなかった商品は何かといったことを知りたいのです。このような情報は、じつはオンラインのEコマースでも同様に把握したいものです。

 さらに、顧客がどのような商品に興味を持っていて、ソーシャルネットワークなどで自分たちの店や商品についてどんな発言をしているかも知りたい。顧客のさまざまな情報を収集し、そこに小売業の新たなビジネスロジックを見いだすようなサービスを提供しているのがPlexureです。彼らは、アーリープレビューの段階からAzure App Serviceを利用していました。見いだしたロジックを、Azure App Serviceを使って顧客企業のソリューションに組み込んでいます。

 ロンドン運輸局の事例では、Azure App Serviceを使ってモバイルアプリケーションでオフライン時のデータを活用するソリューションを実現しています。これは運輸局の社員が利用するモバイルアプリケーションで、設備の故障などを発見したらモバイル端末で該当箇所の写真を撮影し報告するものです。地下など電波の届かないところが多いのでオフラインで写真を撮り、地上に出てオンラインになると自動でデータをサーバーに送る仕組みを実現しています。

 また、Azureが絶大な威力を発揮したものとしては、カナダのテレビ局であるCanadian Broadcasting Corporationの事例があります。ここでは2015年に実施されたカナダの総選挙の投票結果を、Azureを使ってリアルタイムに速報で配信しました。このときは6時間で36億ものリクエストが処理され、ピーク時には毎秒なんと80万リクエストもの処理が行われました。これだけの処理を遅滞なく行えるのが、Azureの威力なのです。

――Azure FunctionsやLinux以外に力を入れているところはありますか?

 今は、この2つがトッププライオリティです。迅速にサービス強化を進めるため、一度にたくさんのことには手を出さないようにしています。とはいえ1つ考えているが、既存のAzure App Serviceユーザーの日々の作業を効率化して改善することです。そのために機械学習やAIの仕組みをうまく使い、アプリケーションの問題を簡単に診断できるようにすることを考えています。これは顧客の収益などに直接結びつくものではないかもしれませんが、Azure App Serviceを使い続けてもらうことにつながると思います。

 こういった取り組みはAzure App Serviceに限った話ではなく、トップから出ているAzureサービス全体の方針です。ユーザーは新しいものにも興味を示しますが、既存の環境をより良くすることでさらにたくさん使ってもらえるようになると考えています。

PaaSの費用削減効果が判明!フォレスター社によるAzure PaaSのユーザー調査レポート公開<全29頁、無料PDF>

米独立系調査・コンサルティング会社であるフォレスターコンサルティング社では、Microsoft Azure PaaSによる便益や費用、リスク等の企業の実態を把握するために、「Azure IaaS」から「Azure PaaS」に移行したユーザー企業へのインタビューを基に、Total Economic Impact(TEI:総合的経済効果) の調査を実施しました。本資料(全29頁、無料PDF)は、このTEI調査により明らかになった、ITコスト、人件費、サービスの市場投入までの時間、アプリ開発とテスト関連の節減、プロセス関連の節減、新たな利益と収益など、ビジネスへの影響について詳細に調査・分析したレポートです。本資料をクラウド活用のビジネス効果やPaaS導入における参考資料としてお役立てください。  

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Azure App Service on Linuxの登場で日本でもPaaSユーザーが飛躍的に増える

――Azure App Serviceで特に気に入っている機能はありますか?

 私はAzure App Serviceには、チームが立ち上がった初日から携わっています。この5年間、Azure App Serviceのすべてに関わっているのです。自分の子どもたちのうちだれが好きかを選べないのと一緒で、App Serviceのすべてに愛情を持っています。

 どれが好きかではありませんが、今はサーバーレスアーキテクチャにはわくわくしています。これが将来的にはあらゆる人の生活を改善することになるのではと考えています。

――競合となるPaaSのサービスに対して、Azure App Serviceのもっとも優れているところは?

 他との大きな違いは、Azure App Serviceがあることでしょう。我々は豊富なPaaS機能を提供しています。この豊富さは、AWSにもGoogleにもありません。これはPaaSとSaaSの間にある開発時間を大きく削減します。それだけでなく、ユーザーはAzure App Serviceならば将来的にも安心してここに投資できます。すでに37万5000のカスタマーがいることが、その1つの証明です。ユーザーがAzure App Serviceの良さに自ら気づいて利用してくれています。毎日使用する量が増えており、ユーザーが自らAzure App Serviceの拡大に寄与してくれていることが分かります。

――日本の市場に対する期待は?

 とにかくPaaSをよりたくさん使って欲しいです。これまでAzure App Serviceを使ってもらえなかった理由の1つは、Linuxのサポートがなかったからではと思っています。それも、Azure App Service on Linuxとして提供されます。日本では、ゲームなどモバイルアプリケーションの市場がどんどん拡大しています。それらのワークロードをサポートするプラットフォームはLinuxの場合が多い。そういったニーズにも十分に応えられるようになります。on Linuxはなるべく急いで一般公開するので、期待してください。これが出れば、日本でも飛躍的にAzure App Serviceを利用してくれるユーザーが増えるのではと考えています。

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著者プロフィール

  • EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

    EnterpriseZine(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営するデータテクノロジー/企業セキュリティを中心に企業ITの最新動向を発信するITリーダー向け専門メディアです。

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにし...

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