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Interview

Google Apps導入とクラウドラーニング事業

システム・テクノロジー・アイ 代表取締役社長 松岡 秀紀氏に聞く


 eラーニングやIT技術者資格教材やとオラクル研修などで有名なシステム・テクノロジー・アイ。同社はGoogle Appsを自社で導入するとともに、Google Appsの公式リセラーにもなった。「クラウドラーニング」を掲げる同社の導入の意義と戦略は何か。社長の松岡秀紀氏が語った。

Google Appsへの移行と導入効果

---Google Apps導入のきっかけを教えてください。 

われわれ自身がeラーニングを展開していくにあたって、これからはクラウドを積極的に使っていこうと考えました。それまでは、Exchangeサーバーを社内に立てていましたが「もうメールサーバーは社内にある必要はない」と決意したわけです。いろいろ他のサービスも検討しましたが、25G で年間一人あたり6000円というのは、他には無かった。

導入については、いくつか心配もありましたが、「駄目なら元に戻せば良い」ぐらいの軽い気持ちでした。

それまで、ポスティーニというメールセキュリティのソフトを有料で使っていましたが、Googleに買収されて、Google Appsに無料で含まれたので、ポスティーニの費用でGoogle Appsを導入できた。もちろんExchangeサーバーの運用分のコストが下がったことになります。 

---導入に際しての課題はありましたか?

 当社はBtoCのビジネスも展開しており、大量のお客様の情報を保有していることと、お客様とのメールのやりとりも頻繁なため、社外や自宅からメールが読めてしまうのは好ましくないわけです。そのためメールの利用を社内のみにするオプションを検討しました。

一人あたり数百円の社外利用制限やシングルサインオンのサービスはあるのですが、当社なりのID管理の方法もあるので、自分たちでその仕組みを作ることにしました。そうこうするうちに、親会社のSE H&Iがグループ企業として、Google Appsリセラーとなったこともあり、そのID管理の仕組みを「iStudy ID Manager」として販売していくことになりました。

システム・テクノロジー・アイ 代表取締役社長 松岡 秀紀氏
システム・テクノロジー・アイ 代表取締役社長 松岡 秀紀氏

 

シングルサインオンの仕組みを構築

 GoogleのSAMLというAPIを使ってシングルサインオンの機能を開発し、われわれのiStudy Enterprise Server(以下、「iES」)という製品の中に組み込む形で自社開発しました。社内のネットワークでしか使えない人、モバイルで客先からVPN経由で使える人などの設定をできるようにして、外部では社外取締役や監査役も使えるようにしました。現在は社外役員だけは社外から、「iStudy ID Manager」にパスワードを入れて使うことができ、一般社員は社外からは使えないという形にしています。

 もうひとつは、お客様からの問い合わせに対応するため、Googleのグループ機能を使うことをルール化しました。個人ではなく、グループでメールを使うことで、掲示板のような使い方が出来、そこからリプライも出来る。ただそれでは、問い合わせに答えたかどうかがわからない。

そこで、これもiESの機能に加えました。製品のサポート業務などで、問い合わせから返事までのリードタイムやサービスレベルや問い合わせの件数などを管理出来て、担当者の対応状況なども把握できるシステムをGoogle Appsをベースに作ることで、問い合わせ業務の移行が完了したといえます。

 ---企業の場合、クラウドで問題となるのはセキュリティやガバナンスの問題だと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?

 クラウドコンピューティングというと、セキュリティやガバナンスに限界があると思われますが、むしろ逆です。うちでは内部統制上、非常に厳しいITガバナンスを施しているため、変更管理やID管理は、すべてワークフローで管理しています。Google Appsを使うにあたっての情報管理規定なども新たに作りました。

メールクライアントは賛否両論ありましたが、ブラウザのみにしました。当社では、従来のOutlookなどのメールソフトを、POPやIMAPのクライアントとして使うことは禁止しました。メールのデータが個人のPCのメールボックスの中にローカルに保存されるということはリスクですから。

当初、ブラウザだけというのは抵抗はありました。こっそり自分だけ、メールクライアントソフトを使おうかと思ったのですが、使っていません(笑) Chromeであれば、早いし軽いのでWebで充分です。また、Google Appsのメールのアーカイブは企業のコンプライアンスやガバナンス上も有効だと思います。メールストレージは海外にあることで、いろいろ意見はありますが、別に会社のメール保管が海外でも問題はないでしょう。 

クラウドによる業務改革

 ---過去のメールデータの移行はどうされましたか?

 移行は可能ですが、Outlookは今でも立ち上がるので過去メールはそちらで見るようにしています。ツールもあるので出来なくはないのですが、別にすべて移行させる必要はないでしょう。社員に、注意しているのは、メールベースのコミュニケーションに拘束されないことです。

メールを開けっ放しにすることによって、業務効率が悪くなっている。特に開発など技術部門の場合、メールをチェックするのは、頻繁でない方が良いのです。

私などもそうですが、メールは1日3回ぐらいしかチェックしません。朝、昼、夜の3回ぐらいの方が、集中できるし、業務効率は高まる。よくメールのリプライは早いほうが良いといいますが、メールを頻繁にチェックしていると、思考そのものは中断しているのです。サポートなどの部門を除いては、今すぐ答えなければいけないものというのは案外少ない。

社内でも個人へのメールではなく、なるべくエイリアスでグループに送った方が良いといっています。グループで共有する方が良い。バッチ処理できるものはバッチ処理ですませた方が業務効率は確実に上がる。そういう業務変革も重要です。

 ---Google Appsの導入をきっかけにビジネスのやり方を変えようということですね。

 クラウドを導入したり、システムを変えた時でないとやりづらいのです。Google Appsを入れる時は、今までのやり方を変えて、企業が変われるチャンスでもあると思います。NotesをExchangeに変えても変革は起こしづらい。Google Appsは変革が起きやすい。 

今、社会的に長時間労働や超過勤務などが問題になっています。サービス残業は労働基準局に厳しくチェックされる時代です。むしろ残業しないで早く帰り、自宅でも、メールなどチェックしないに超したことはないでしょう。チャイムを導入したぐらいですから。6時と9時にチャイムを鳴らします。残業は確実に減りました。業務も全然支障はありません。 

---ユーザーとしてクラウドを導入し、その経験でクラウド型のビジネスも提供していくわけですね。

 すでにうちが販売しているオラクルの資格研修のテキストは、電子テキストになっています。電子テキストはPDFがベースとなっていますが、注釈やコメントを書き加えることが出来、かつそれが学習者ごとのデータとして、サーバーに保管できる仕組みです。

これは、われわれが今後めざしていく「クラウドラーニング」の形です。eラーニングも研修環境もその方向で展開していく考えです。クラウドラーニングを実現する上で、「サービス結合」という考え方が重要です。あらゆるサービスと結合していく必要があるという考え方です。

 われわれだけではなく、いくつものクラウドのサービスが結合していくことではじめて、お客様のクラウド環境が出来る。そのサービス結合のひとつがGoogle Appsなのです。我々自身がそれを使いこなすことで、様々なクラウドのサービスを結合していくビジネスを展開していきたいと考えています。

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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