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衆議院議員 原口一博氏に聞く―地域主権と次世代インフラ実現のためのICTビジョン


震災からの復興への気運が高まる中で、既存の社会構造への反省とともに、被災地、そして日本全体の社会のあり方が様々に論じられている。その鍵を握るのが「光の道」やスマートグリッドなどの次世代インフラだ。鳩山内閣、第一次菅内閣では総務大臣として、地域主権の確立とICTを活用した持続的社会の実現を目指す「原口ビジョン」を策定するなど、積極的なICT活用を提唱している衆議院議員原口一博氏にICTの可能性と今後の日本社会のあり方についてお話を伺った。

有事の情報共有に貢献 ICTの有用性と可能性

― 東日本大震災では、政府、多くの自治体や政治家個人がTwitter などのソーシャルメディアを積極的に活用し、迅速な情報提供や安否確認に大きく役立ちました。その有用性をどのように捉えていらっしゃいますか。

民主党衆議院議員 原口一博氏
民主党衆議院議員 原口一博氏

 災害時における政府のICT、そのなかでもTwitterなどSNSの有用性を実感したのは、昨年2月に起きたチリ沖大地震の時でした。津波による原発事故が懸念され、沿岸地域では不安が広がっていました。そこで「3m以内の津波では問題ない」という調査結果を私的なTwitter で流したところ、短期間で収束が見られ、避難情報にも即効性があったのです。当時、総務大臣だった私は、消防庁と電気通信の局長にTwitter による災害時の情報提供をシステム化するように指示し、幸いそれが先日の東日本大震災でも活かされることになりました。また「光の道構想」にも着手していたのも、同様に災害時のリスクを予見してのことです。

 そもそも将来的にトラフィックの飛躍的な増大があり、加えて災害時の対応も大きな課題でした。解決策の1つには、まず情報処理法を変える方法があります。現在の方法は莫大なエネルギーを必要とし、排出する熱量も膨大です。一方、人間の脳は低エネルギーで働き、変化に強く、曖昧なものをもとに情報処理を行なっています。これを情報処理システムに取り込む方法を研究しているのが「脳情報通信融合研究」です。とはいえ即時交換は難しいため、現在のICTを前提にした解決策として「光の道」が必要となります。

 「光の道構想」では、2015年までに全世帯に超高速ブロードバンド網を適用するという目標を掲げています。米国でも今年になってオバマ大統領が「米国民の98%が次世代高速無線ネットワークを利用できる環境を5年以内に整える」と宣言しました。まさに国際的に災害に強いインフラづくりの重要性が認識されています。

光の道とスマートグリッドが実現する「分権社会」とは

― 情報通信インフラの地域格差、それに伴う情報格差についてはどのようにお考えですか。

 カルフォルニア州よりも小さい日本でこうした格差が存在することが異常だと思います。その原因は、今回の原発問題でも明らかになったように「巨大なエネルギーを独占的、集中的、閉鎖的に作る」一部の大企業に富が集まる社会構造になっているからです。それを分散し、小規模で各自が自分のエネルギーに責任を持つ、開かれた社会へとパラダイムチェンジするのというのが、私が総務大臣時代に立ち上げた「緑の分権改革」なのです。
 

 例えば、酸素吸入が必要な人が多数いるにも関わらず、東電は計画停電を断行しようとしました。そんな権限がどの企業にあるというのでしょう、あまりに理不尽です。誰かから支配される、放射能のリスクを持たされるエネルギーではなくて、自らの環境を確かめながら、自らつくり出し、地域を循環するエネルギーへと変わっていく。一人ひとりが自らのエネルギー使用に権利を持つ、私は「エネルギープロダクツライツ」と名付けているのですが、それが適切に行使される社会に生まれ変わろうじゃありませんか。

 ICT はその改革のための道具であり、イノベーションの基盤となるでしょう。私は格差という問題を社会主義的な分配で埋めようとするのではなく、光の道やスマートグリッドで解決したいと考えているわけです。従来の社会的分配の考え方では、偏りはもちろん、ぼったくりや中抜きなどの不正も生じてきました。そろそろ本当の意味での分権がなされる時代へと移行すべきなのです。

意見交換から生まれる価値、解答力より問題解決力の育成へ

― 新たな地域主権型の「分権社会」を実現していくためには、具体的には何が必要となるのでしょうか。

 何度も繰り返すようですが、ICTにおいてはなんといっても「光の道」です。電力における「スマードグリッド」も同様の考え方です。隅々まで網羅されたインフラで大容量が流通可能、需要側がコントロールできる主権をもっていること。これはなにもシステムやエネルギーに限った話ではなく、教育を含めた「人のあり方」に対するイノベーションでもあります。

 例えば原発事故の対応を見て、「答えが1つしかない教育」を受けてきたエリートがどんなに弱いかがよく分かりました。そうした人々は、ヒエラルキーに従順で排他的です。しかし、教育とは本来、多くの情報を共有し合うことで、様々な意見をつなぎ、解決法を議論する力を育むものであるはずです。そこでICT の活用によって、様々な価値観や情報、人々の叡智や「真善美」に触れることができれば、子どもたちのそうした問題解決力を高めていくことが可能になるでしょう。現在10 校あるフューチャースクールでそうした教育が行なわれていますが、韓国ではすでにすべての学校に1人1台のPC が行き渡っています。日本でもできるだけ早い段階ですべての教育機関に対して進めていくことが必要でしょう。

 また企業活動においても、様々な情報を共有し、異なる意見を融合することで競争力や企業価値が高まります。社会の活性化、復興の意味でも、政府としてICT環境の整備は可及的速やかに取り組むべき課題なのです。(次ページへ続く

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分散化でリスク回避、危機管理におけるクラウド

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この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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