2025年11月12日、Kongは「API Summit Japan 2025」を開催した。
API Summit Japan 2025は、「No API, No AI, No FUTURE」をテーマとした同社主催のイベント。日本での開催は初めてとなり、パートナー企業やユーザー企業、そして有識者による講演などには多くの参加者が詰めかけた。Kong 代表取締役社長の有泉大樹氏は「APIは新しい価値を生み出す、“接続”の力だ。AIが企業の競争力を左右する時代において、APIは新たな価値の源泉となる。業界や立場を越えて、未来を描くための場としてのイベントとしたい」と述べる。
現在、企業システムにおけるデータ量が増加する中、AIが急速に浸透。APIを統合的に管理できていないことでセキュリティやコストだけでなく、“AIの進化”という観点からも障壁になるような状況にあるという。そこでKongでは統合的なAPI管理プラットフォームを提供しており、同日には国内の主要IT企業・団体計11社と新たなAPIエコシステム創出を目指すために「APIファースト共創宣言」も発表している。
イベントにあわせて来日したKong CTO 兼 共同創業者 マルコ・パラディーノ(Marco Palladino)氏は、「クラウドからマイクロサービス、そしてAIエージェントへと移り変わる中、すべてはAPIで実現されるようになった」と述べると、AIのトークン消費が爆発的に増加しているように、AIエージェントは単なるツールでも、ワークフローでもなく、より自律的な存在として組織を変革しているとする。
一方、マサチューセッツ工科大学(MIT)の調査によると、95%のAI活用が失敗していると報告されているように、AIエージェントを活用することの難しさもあるとパラディーノ氏。適切なモデルの選定から構築、セキュリティとガバナンスへの配慮、コストの抑制など、ビジネスシーンでの課題は枚挙に暇がない。まさにAPIエコシステムが欠如していることで新たな課題に直面している状況であり、Kongのような統合的なAPI管理プラットフォームが必要だと訴えた。
たとえば、先月にリリースされた「Kong AI Gateway 3.12」では、「Konnect MCP サポート」としてMCPにも対応したことで、既存のAPIからMCPサーバーを自動生成できるようになったとのことだ。また、包括的なセキュリティポリシーを一括適用でき、それらを可視化・分析することも可能だとする。加えて、AIエージェントを構築するためのライブラリとして「Volcano SDK」にも触れられると、MCPに対応したAIエージェントを容易に構築する様子がデモンストレーションされた。
なお、イベントの基調講演には、『生成AIで世界はこう変わる』(SBクリエイティブ)の著者であり、GenesisAI 代表取締役社長/CEO、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)客員教授を務める今井翔太氏が登壇。AIの性能向上に関してスケーリング則を紹介すると、たとえば昨年は東京大学の入試問題を解けなかったものが9割ほどの正答率をマークするなど、その質が向上していると述べる。そして生成AIを核としたAIエージェントに注目が集まる中、2028年から2031年には人間が1ヵ月かけていた作業を自動化できるようになるとの予測も紹介した。
一方で、人間の実務においては膨大なコンテキスト(背景情報)を基にして作業しており、限定的な学習データしかないことなど、課題は山積みだとも指摘。将来的には、プラットフォーマーが担っていた役割をAIエージェントが担ったり、WebサイトのアクセスをAIエージェントが占めることでWeb空間が変化していったりと、新たな潮流も予測できるとする。そして、イベントのテーマでもあるAPIにおいても、AIエージェントのワークフローに対応する“Agent-ready”なものが求められるようになるとした。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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