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ITユーザのためのRFP書き方講座

組織の目的を確認して洗練しよう


 前回は「RFPって何を書けばいいの?」と題して、IT導入におけるRFPの位置づけと記載項目の概要についてお話ししました。RFPはIT導入の入り口であり、その記載内容が契約や要件に大きく影響していくこと、そして、まだ契約前であることから、思い切ってワガママを書ける文書でもあることと言ったお話をしたと思います。今回からは、その記載項目に沿って順々にご説明をしていきたいと思います。今回のテーマは、RFPの最初に書かれる「組織の基本状況・状況と課題」の中から「目的」あたりを中心にお話ししたいと思います。

目的に合わないITは、ただの無駄遣い

 当然の話ですが、ITの導入は、結局、なんらかの目標を達成したりするために行います。基幹システムであれ、情報系システムであれ、あるいは通販サイトのような営業系システムであれ、結局は業務の効率化や生産性向上、売上拡大と言ったなんらかのメリットを組織にもたらす為に高いお金を払って導入する訳です。逆に言えば、どれだけ洗練され、高度な技術を使ったITであっても、それが組織の売上やコスト等に貢献しないモノであればお金をドブに捨てたのと同じ話になってしまいます。ちょっと、以下の裁判の例をご覧ください。

 あるユーザ企業が基幹情報システムの刷新をベンダに発注した。その目的は「販売・購買業務の効率アップ」「CRMの基盤作り」,社長・役員に会社の全ての業務が正確に見える。『見える経営』」だった。ところが、システム作りは難航し多数の不具合や要件の過不足が問題突なって、結局、契約は途中で解除された。

 ユーザ企業側はシステムの未完成を理由に開発費用を払わなかったが、ベンダ側はプロジェクト失敗の原因は企業側にこそあるとして訴えを起こした。

 これについて東京地方裁判所は、そもそもユーザ企業側のあげた目的が曖昧すぎる(要件の過不足の責任はユーザ企業側にある)として、これに費用の支払いを命じた。

                          (東京地裁 平成22年12月28日 判決より)

 このプロジェクトでは、あまりに目的が抽象的だったためユーザとベンダのシステムイメージ(要件や新しい業務の姿) がズレてしまったようです。このように「目的」があやふやだったせいでIT導入が失敗するという例は一般にもよく見られます。基幹業務の効率化を目指してERPを刷新するはずだったのに、いつの間にか、ERPパッケージの導入自体が目的となり、自社業務と合わないERPの機能に合わせるために不要な業務プロセスを組み込まざるを得ず、かえって業務効率が落ちたという話はよく聞きます。また、当初は顧客の層別分析を行なうはずだったシステムが、ダイレクトメールを送るための営業ツールになってしまったなどという話も聞きます。結局のところ、これらは、皆、組織的には役に立たないITに多額の投資をしてしまった訳です。

要件は目的と課題から導出される

 これらはいずれも、開発者に目的がはっきりと伝わらないか、あるいは途中で忘れ去られてしまったせいで起きたことです。目的を失ったITは当然、組織が意図した改善をもたらすことなく、時には、部分最適に資することはあっても、組織全体から見れば「お金をドブに捨てる」ということになってしまいます。しかも、そうした失敗はユーザ組織内部の責任であることが多く、意図しないものをベンダが作ってきても、弁償してもらえるわけでもありません。

 後々、ベンダにITや導入を依頼するときには要件が金科玉条となる訳ですが、それは、組織の目的があって、そこから目的達成の方針が打ち出され、それを実現するたねにITを入れる、その基本要件へと繋がります。

 ですから、ITを導入する際には、その元となる組織の目的がハッキリしていることが大切ですし、要件を定めたときには、それが組織の目的・方針と合致していることを確認すること、その後のプロジェクトでも、この繋がりをメンバが意識し続けることが大切です。このトレーサビリティについては、この連載の中で別途取り扱うことにします。

次のページ
組織の目的を洗練する。

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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