ベンダのプロジェクト管理義務の範囲はどこまで及ぶ?
ここで、以前から私の連載記事をご覧いただいている方には思い出していただきたいことがあります。ベンダのプロジェクト管理義務です。
システム開発のベンダには、ユーザのプロジェクトへのかかわりを管理する義務があり、具体的に言えば、決められた期限までの要件凍結、必要な情報提供、ユーザテストの実施などプロジェクトを円滑に進めるためにユーザがやるべきことをやらないときには、そのプロジェクトへの影響を説明し、ユーザの協力を促したり、プロジェクト立て直しのため、なんらかの代替案を提示する義務があるというものです。ベンダがこれを怠ると、プロジェクト管理義務違反という不法行為となり、一見すると迷惑をかけられたように見えるベンダの方に損害賠償が命じられることがあるというものです。
この事件で言えば、ユーザがデータの登録をしてくれないことについてベンダが、「いつまでに登録してくれないとカットオーバに間に合いません。もしできないなら、こうしましょう……」と、代替案を示すことが必要というわけです。今回、ベンダは、こうした義務を果たしていたと言えるのでしょうか。一方、ユーザの行いは、ベンダのプロジェクト管理義務を問えるものだったのでしょうか。判決文は実に一方的なものでした。