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紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

施行間近!120年ぶり民法改正、アナタの会社のIT契約書への影響は?

ベンダはどのように対応するか

 ベンダの社員の方ならお分かりかと思いますが、システムを開発した後に何年も不具合に対応できる体制を維持するにはコストがかかります。通常、開発に参加したメンバーは、保守に必要な人だけを残して他のプロジェクトに散っていきます。

 無論、何か問題があれば再集結することもあるかもしれませんが、これまでは、とにかく1年経てばベンダ側が対応の可否とスケジュール、必要な費用を提示して交渉できました。別のプロジェクトに参加している旧メンバーを引きはがして対応させるために必要な準備を、ユーザ側の協力も得て対応してきた訳です。

 しかし、新民法の下ではベンダにそうした裁量権がありません。言われたらとにかく直さなければなりませんし、他のプロジェクトに迷惑をかけてでも対応しないと、最悪の場合、貰ったお金をすべて返した上で損害賠償を命じられる可能性もあります。

 となれば、すべてとは言わなくても主要メンバーの多くを、いつでも出動可能な状態にしておかなければなりません。そしてメンバー達を抑えておくお金はベンダ側が負担することになります。そうなればベンダは初期開発の見積もりに、その分の費用を上乗せすることになるでしょう。

 ベンダも、実はそんな仕事の仕方をしたいわけではありません。メンバーを開発後も固定することは彼らのキャリアアップを阻害することにもなりかねませんし、それに不安を感じて退職してしまう可能性も高まります。IT企業にとって優秀な人材は、正に収益の源泉であり宝物ですから、ユーザから多少上乗せした費用を貰っても、企業存続の意味合いで考えればやはり損だと考えられます。

今まで通りではダメなのか

 このように考えると、新しい民法の条文を契約書にそのまま流用するのはユーザにとってもベンダにとってもリスクがあります。実は私は今、経済産業省でまさにこの新民法に対応する契約書のひな型を考えているのですが、この部分については、省内やベンダの関係者に文案を示しても、異論がいろいろと出てきます。

 では以前のままの条文にしておけば良いのでしょうか。民法のこの部分は任意規定なのだから、当事者同士が合意すれば今回の改正に対応しないことも可能では? との意見もあります。しかし、今回の民法改正ではITにおける受発注に関する問題を解決しようという意図が感じられます。これはIPAのワークグループでも議論されたことですが、以下の問題点の解消が、今回の民法改正にはあるのだろうと思います。

  • そもそもシステムの不具合を1年で見つけるのは難しい場合もあるのではないか(様々な業務パターンを試さないとわからない問題、年次処理の不具合やデータが集積して初めてわかる問題など)。
  • 元々がベンダの作りこんだ不具合なのに、別途有償作業にしたり、保守契約で対応というのはユーザに一方的な不利益をもたらすものではないか

 前の民法のままでは、こうした問題を解決できないままとなってしまいます。

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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