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全ての会社がテックカンパニーになる時代~福田康隆と探るDX最前線

「ITの前にビジネスありき。その思考がCIOには必須」アフラック生命保険 二見通×福田康隆のDX対談

セキュリティの確保は絶対条件

福田氏:顧客接点を考えると、保険は新しいテクノロジーを活用した顧客接点の構築など環境に応じた素早い変化が求められる一方で、「ホストとの連携」「セキュリティや堅牢性」など他業界と比べても、より高い基準が求められると思います。

二見氏:セキュリティは絶対です。優先順位としてはトップですね。ITには「攻め」と「守り」がありますが、どんなに「攻め」の素晴らしい技術やソリューションでも、「守り」のセキュリティがおろそかでは絶対に市場で評価されません。当社にはCSOが別にいるので、そのCSOとコミュニケーションを取りながら「攻め」と「守り」のIT戦略を構築しています。

福田氏:二見さんが、私の質問に間髪入れずに「セキュリティが絶対」とおっしゃったのが強く印象に残りました。私がセールスフォースに参画して間もないころ、会社のバリューは何かとトップに尋ねたことがありました。その時、やはり即座に「トラスト」と返ってきたんです。

 それがなければグロースもないし、カスタマーサクセスもない、と。そしてこの考えを、社内全員が抱いており、同社の組織力とリーダーシップの強さを感じました。それと同じ印象を二見さんのお話から受けます。

他の金融機関と比べ、生命保険会社はお客様との接点は少なく、契約者との接点も限られている

二見氏:生命保険業界は金融業界の中では変化が遅い分野と感じています。その原因の1つは、たとえば銀行などと比べた場合、日常でのお客様との接点は少なく、結果、発生する個々人のトランザクションデータも少ないことだと思います。たとえば、今日は天気がいいから買い物に行こうと思い、銀行からお金を引き出すために立ち寄ることはあります。または、証券なら株価を毎日見るかもしれない。一方、毎朝医療保険を見直そう、今日はがん保険を契約しよう、来月は定期保険に加入しようなどとは思いませんよね。

 銀行には、最低月に1度は給与などの確認で口座にアクセスするでしょうが、生命保険の場合、一度加入したら、いざという時までほとんど保険会社(システム)へアクセスされません。こうしたトランザクションの発生頻度もデジタル化の遅れにつながっているような気がします。デジタルが進化している今だからこそ、競争も激化している状況であり、生命保険業界においてDXを進めるためには、まずは、お客様のタッチポイントを新たに創り、増やしていく必要があると考えています。

 また、このコロナ禍においては、そのタッチポイントはデジタル技術の活用によって増やせる可能性があると感じています。そして、セキュリティの話題へ話を戻すと、タッチポイントが増えれば増えるほど、セキュリティは一層重要になってきますから、今の段階からセキュリティを第一に据える意味があるのです。

福田氏:保険の場合、新たにタッチポイントを創っていく難しさはあるのでしょうか?

二見氏:生命保険の場合、目に見える商品ではなく、保障、信頼を価値としてお客様に選んでいただく商品です。また、前述しましたように、毎日、毎月、毎年購入するような商品ではありません。よって、お客様とのタッチポイントも限られるわけです。

 たとえば、同じ保険でも、損害保険、特に自動車保険ならば、自動車というハード(IoT)を通じて、日々、保険会社と連携できる可能性はあるかと思います。また、自身の運転技術によって保険料が変化するテレマティクス保険などは、技術をベースにした新しい商品であり、新しいタッチポイントともいえます。

 一方、生命保険会社が介護の分野などでIoTを活用するようなケースも考えられているかもしれませんが、損害保険会社のIoT活用と比べると、まだまだ試行錯誤は続くかと思います。だからこそ今、生命保険業界に変革を起こせれば大きなインパクトになるともいえます。

福田氏:実際、御社は様々な変革を起こされていると思います。アジャイルなどもいち早く取り組まれましたよね。

二見氏:2018年ごろからでしょうか。まだ日本では展開例もなく、海外に事例を学びに行ったことを思い出します。大きなゴールを定め、その上でゴールにたどり着くために今から2週間で何がアウトプットできるのかを考え、動くのです。そして、それを都度レビューしていく。現在はこのサイクルがかなり社内でも馴染んできました。一方、最近ではシステム開発の方が、ユーザーのアジャイルな動きに対して遅れをとってしまうこともあります。

「ITが遅れをとる」時代、IT部門に求められるマインドチェンジ

福田氏:ITが遅れをとる、とは?

二見氏:IT部門以外の、いわゆる企業におけるユーザー側がIT部門よりもアジャイル型の取り組み、活動が進んでいます。たとえば、ユーザーがアジャイル手法でUI/UXをこう変えましょうとか、お客様向けのWebアプリケーションを開発しましょう、という話が出ると、ユーザー側でどんどんとアイデアが生まれ、作業も進みます。しかし、IT部門の考え方がウォーターフォール型のままだったりすると、ユーザー側がこうしたいという思いに対してIT部門が実装段階で遅れをとってしまうんです。今はその遅れをなくす取り組みもしていますね。

福田氏:まさに今の取り組みなのですね。現在は新型コロナウイルスによって、企業も変化を求められています。取り組みという点で、コロナ禍で何か変化はありましたか?

二見氏:当社はリモートワークを以前から推奨していたので、課題に対して先回りができたと感じています。リモートワークがこれからは増えると予測していたので、VPNの増強を2月から始めており、新型コロナウイルスでニーズが一気に高まる前にスムーズに完了しました。今、IT部門は100%在宅勤務です(7月17日取材時点)。システム部門のみならず、多くの部門で在宅勤務が徹底され、日常ではテレビ会議でほぼ全てのコミュニケーションが行われています。一方、課題も明確になってきましたので、さらに進化した在宅勤務環境を目指します。

 また、営業の領域では、昨年から準備を進めていたことにより、非対面でお客様に保険商品をご紹介し、販売できるシステムを8月にリリースすることができました。今後は、この非対面でのデジタル営業システムが威力を発揮してくれると信じています。

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保険会社が今の保険会社とはまったく違う形で存在している未来へ

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この記事の著者

中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)

株式会社エヌプラス代表取締役デジタル領域のビジネス開発とコミュニケーションプランニング、コンサルテーション、メディア開発が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

福田 康隆(フクダ ヤスタカ)

1972年生まれ。早稲田大学卒業後、日本オラクルに入社。2001年に米オラクル本社に出向。2004年、米セールスフォース・ドットコムに転職。翌年、同社日本法人に移り、以後9年間にわたり、日本市場における成長を牽引する。専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めた後、2014年、マルケト入社と同時に代表取締役社長に、2017年10月同社代表取締役社長 兼 アジア太平洋日本地域担当プレジデントに就任。マルケトがアドビ システムズに買収されたことにより、2019年3月、アドビ システ...

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