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DX推進に「待ったなし」脱ハンコ・デジタル化で実現する業務改革最新事情

京都大学公共政策大学院 岩下直行教授×アドビ 神谷バイスプレジデント対談

電子化は仕組みだけではなく、関わる人たちのマインドを変える必要がある

押久保:私たち日本人は、ハンコを押すのが当たり前になりすぎて、切り替えられない——。

岩下氏:そうですね。その結果、やっぱり紙だよね、となってしまうとまた元に戻ってしまう。それはもったいないです。

神谷氏:弊社では昨年(2020年)リモートワークを取り入れた後の7月に、社内で困ったことはないかというアンケートを取りました。その結果、約3割の人がリモートワークに関して、不便や困りごとがあると回答しました。ところが、昨年末の11月に同じアンケートを実施すると、困っている人の割合が5%にまで下がったのです。つまり、慣れていくことでマインドも変わるのではないかと思うのです。

岩下氏:それは素晴らしい結果ですね。つまり、便利だということが実感できれば人の気持ち=マインドも変わる。

神谷氏:はい。私には子どもが二人いますが、小学校から日本はそもそも紙が多いですよね。アメリカなどはタブレットなどにお知らせが載りますが、日本は異なる。良くも悪くも紙が好きな国民性なのかもしれません(笑)。電子化について考えてみても、コロナ禍の前までは一部の業種や事業改革が必要な企業は取り入れようとしていましたが、それはごく一部。

 たとえば弊社での取り組みでいうと、ソニー銀行さんの事例がそれです(参考)。当初は、数億円規模の住宅ローンを電子契約サービスで通すなんてとんでもないという意見が社内でも大半だったとか。もちろん法律上は電子でも問題ありません。マインドがそうだっただけなのです。この状況をソニー銀行さんはトップが「変える」という強い意志で推進した結果、大きな変革、そして成長につながった。

 これは余談ですが、弊社ではコロナ禍と関係なく2020年3月に在宅勤務についての調査「テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査」を実施してます。当時はオリンピック中に電車が混み合うためテレワークで仕事は可能かというアンケート内容でしたが、その結果6割の方が「紙が必要なので(テレワークは)難しい」と回答していました。

押久保:その後、本当にテレワークが必要な状況になりました。

神谷氏:最初はやっぱり何を紙に残し、何を電子化するのかというのが政府側の指針もなかったので、大手企業は特に電子化に踏み切れなかったようですね。それから少しずつ規制が緩和され、だいぶ状況が変わってきました。結果、上場企業の多くは電子化を導入しています。また、特筆すべきはその導入までの期間です。通常こういったシステムの変更には数年かかるものですが、今は急を要するお問い合わせも多く、コロナ禍前とはもう比較ができません。

押久保:切迫感があるということですね。

神谷氏:導入までのスピードが速いということは、意思決定が迅速に行われているからでしょう。特に海外の企業に関しては社員の安全が重要とされるので、我々の会社もそうですが、CEOが会社に行くなと決め、リモートワークが強制的に始まる。トップの判断でシステムの導入も早く行われたりしていますね。

押久保:民間のほうではそのトップの意思決定次第で、会社の未来が変わりそうですね。行政はどうでしょうか。岩下先生のお考えもお聞きしたいところです。

岩下氏:役所に提出する書類はハンコを押すものが多いのですが、認印でいいのです。河野大臣も話していおられましたが、認印なら100円ショップで買えてしまう。実印であれば区役所に登録している印影があるので、それと照合できるので必要性がまだわかる。そういう(実印の)効力を期待しているなら、ハンコが必要というのもわかります。しかし、役所に提出するものの多くは、実は認印だけで良かったりする。ここに課題があります。

 民間で脱ハンコができるようになってきたのは、こうした認印が無意味なものだとわかったからです。効力のないものに時間を取られているのにもかかわらず、ハンコさえ押されていれば、大丈夫。そういう認識がまだあるのですよね。だから立派な文章、責任の多い文章ほど脱ハンコが難しくなってしまう。

神谷氏:それはドキュメントの世界でも一緒だと思います。古い慣習的なものを一気にデジタル化し、それを新しい習慣とするのは大変なことです。トップが「やろう」と言わないとなかなか動けないですよね。これまで私も多くの企業の導入に対してお手伝いさせていただいてきましたが、トップの意識は非常に重要だと感じます。

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切羽詰まった時が、一気にブレークスルーさせる機会でもある

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長1978年生まれ。立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)

株式会社エヌプラス代表取締役デジタル領域のビジネス開発とコミュニケーションプランニング、コンサルテーション、メディア開発が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施...

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