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IT as a businessを実現するTBM入門ガイド

TBMフレームワークに定義されている、IT部門が推進していくべき4つの規律(1/2)

 前回ではTBM(Technology Business Management)のメソドロジーが生まれた背景と概要を紹介し、TBMを定義する5つの構成要素についても紹介しました。今回と次回の2回にわたって、5つの構成要素のうちの1つである「TBMフレームワーク」にて定義されているIT部門が推進していくべき4つの規律について紹介します。

4つの規律其の1:Creating Transparency(可視化)

 推進していくべき4つの規律のうちの1つ目はCreating Transparency(可視化)です。多くの組織ではITコストにかかるリソースや、組織内におけるITの利用状況について正しく捉えられていません。

 たとえば、「このアプリケーションはどれくらい利用されていて、どれくらいのTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)がかかっているのか」、「このITサービスはインフラをどれだけ利用しているのか」「現在の減価償却費は過去の何の投資に起因しているのか」などCIOやステークホルダーが見たい状態ではありません。

 これは多くの組織では、財務視点での2軸でしか可視化されていないことに起因をします。通常、組織では基幹系と言われるシステムの中で、General Ledger(総勘定元帳)をもっており、そこでITコストの情報を保持しております。

 しかし、総勘定元帳だけではChart of Account(勘定科目)とCost Center(コストセンター)の2軸でしかITコストを判別することができません。たとえば勘定科目は「ソフトウェア」「ハードウェア」「減価償却費」「業務委託費」「通信費」などの費目があり、コストセンターは多くは部署コードとリンクをしていますが、これだけでは意思決定に必要な情報を得ることができません。

 必要なのはマルチな軸での可視化になります。ファイナンシャルデータの中でも総勘定元帳だけでなく、購買管理や固定資産、給与などの財務系データ、ITサービスやアプリケーションについてのIT部門にて提供されるサービスに関連するデータ、タイムシートを含めたプロジェクトにかかるデータ、インフラストラクチャーに関連するデータ、利用部門の利用状況のデータ等をTBMシステムの中に取り入れ、TBMモデルで分類・配賦を行なった上でマルチな軸での可視化を行なうことが必要です。

 このTBMタクソノミーに従い可視化されたものをTBMではITコストモデルと呼んでおり、このコストモデルを利活用する事で「利用状況の低いアプリケーションの合理化」や「余剰インフラの削減」「利用部門への納得ある利用料提示とそのITコスト回収」など、IT部門の運営にかかる重要な意思決定に必要なインサイトを得ることができるようになります。

 現実的なデータの話をしますと、ServiceNow社に代表されるようなシステム構成管理システムをお使いの場合は、そこからCMDB(Configuration Management Database:構成管理データベース)のデータやタイムシートのデータを取り入れながら、総勘定元帳・購買管理・固定資産・給与データと掛け合わせることで、IT関連コストは高精度かつ必要な粒度での可視化を実現することができるようになります。

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TBMモデルの信頼性

 このようにTBMタクソノミーは組織のITにかかる意思決定を支援する土台になりますが、ここで重要となってくるのは、まずは「TBMモデルの信頼性」になります。そしてTBMモデルの信頼性は、ステークホルダーに対して納得のある分類・配賦モデルであるかどうかがカギとなります。分類・配賦モデルの信頼性を担保するためには以下を行なう必要があります。

  1. その分類・配賦モデルを使ってすべてのコストについて説明ができることを証明する。
  2. 分類・配賦モデルについてステークホルダーがわかるようにシンプルな形で説明をする(たとえばビジュアルな一枚のスライド)。
  3. コストについてドリルダウンをすることでステークホルダーにコストの構成要素を理解してもらう。

データ

 次に重要なのが「データ」です。最初から必要なデータが綺麗な形ですべて揃っている組織はありません。TBMでは既にあるデータの改善と足りないデータの追加の双方について以下のアプローチを反復させながらデータの精度を上げていきます。

  • 今手元にあるデータを利用して可視化したいTBMモデルを構築する。
  • データをTBMモデルに投入してエラーデータを特定する。
  • エラーデータに対して配賦がなされるように、配賦ロジックを修正する。
  • エラーデータに対して配賦がなされるように、当該データに修正を加える。
  • データソースを修正・追加を行なう。

 TBMではデータの活用と蓄積は表裏一体の関係と捉えており、蓄積したデータから活用方法を考えると共にデータを活用しデータ蓄積を行なっていくということを実践します。

 ですので、たとえば開発パートナーから粒度の粗い請求書をもらっていて、そこからではTBMタクソノミーを構築できないという場合、契約段階などで開発パートナーに適切な形でデータを提供してもらうことを要求するということを推奨しております。

 またTBMではデータの精度を徐々に上げていくのと同時に可視化のスコープも徐々に広げていくことで組織の意思決定レベルを少しずつ挙げていくことを推奨しております。

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 ここまでIT部門が推進すべき4つの規律のうちのCreating Transparency(可視化)につきましてご紹介を致しました。

 上述したように大別して5種類のデータを取り入れ、TBMモデルで分類・配賦を行ない、TBMタクソノミーを利用しマルチな軸での可視化を実現するためには、複数の他システムから大量のデータを自動的に取り込み、分類と配賦方法を構築することが必要です。さらに、それをステークホルダーにわかりやすく説明しながら、マルチな軸のTBMコストモデルを構成するTBMシステムの存在も欠かせません。

次のページ
4つの規律其の2:Plan and Govern(IT予算策定とIT予算管理)

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この記事の著者

成塚 歩(ナリヅカ アユム)

Apptio株式会社 代表取締役社長1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、日本総合研究所に入社。システムエンジニア、大手法人向け営業を経て、2008年に日本マイクロソフトに転職。以後12年間にわたり、エンタープライズ向けにビジネスを展開。直近ではSmat Storeのイニシアティブを立ち上げ、日本の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

東本 成紀(ヒガシモト ナルキ)

Apptio株式会社 エンゲージメント マネジャー早稲田大学卒業後、外資系コンサルティング会社(Big4)に入社。ERP導入プロジェクトに従事。その後、外資系コンサルティング会社、SaaSベンダーにて、グローバルプロジェクト支援を中心に、ERP導入(ロールイン・ロールアウト)、DXプロジェクトなどに...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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