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エンタープライズ企業のための『グローバルPRのすゝめ』

DX x SDGsが拓くポストパンデミック『グローバルPRのすゝめ』


 海外IT系企業が日本に市場進出する時のPR活動やパートナー戦略の立案に携わってきた共同ピーアール総合研究所(PR総研) 副所長の上瀧和子氏の寄稿。本稿では、グローバル展開するエンタープライズIT企業に必要な「BtoBのPR」について解説してもらう。

 ワクチン接種によりコロナ禍の状況はやや落ち着いたとはいえ、世界的には予断を許さない状況が続いています。その一方、パンデミック対応によりデジタル化は加速し、世界中のあらゆる企業がこれまでにないほどITの力を糧にしています。長く唱えられていたDXがようやく等身大の取り組みとなりグローバルな商機が生まれ、海外IT企業の日本進出が加速しました。NASDAQ上場の急成長企業やシリコンバレーのテクノロジー企業はもちろん、香港、台湾などアジア企業の日本展開が加速しています。今や日本にオフィスを構えずとも、バーチャルに市場展開できる時代。今回は、世界第三位の経済国、日本由来の企業にも必要なエンタープライズ企業における「グローバルPR」をひも解きます。

BtoB企業にPRは要らない?

 ビジネス向けのソリューションを提供するエンタープライズIT企業では、「うちはBtoBだからPRは要らない」と言う声を聞くことがあります。客観的な事実や、自社ならではの主張を発信し、あるべき方向性への変容を促すことがマーケティングにおけるコミュニケーション、PRの役割です。コミュニケーションによる「透明性の確保」ならびに「変化の促進」がコロナ禍からの脱出、事業継続を可能にします。消費者との直接的な接点がなく商談サイクルが長いエンタープライズIT企業だからこそ、事業を続行し、成長するために継続的なPR活動が不可欠なのです。

 ことに、米中のあつれき、データのガバナンスなど課題が山積する複雑な世界情勢の中で生き残るには、日々のPR遂行のための多様性の理解や感覚のアップデートが求められます。地球の持続性、SDGsを追求する世界市場において戦うグローバル企業のPR活動は、日本語、日本文化というガラパゴス環境で守られた日本のIT企業の競争力強化にも役立つでしょう。

Fortune 500に占める日本企業の数、売上も年々減少 History of the Global 500 fortune.com

Fortune 500に占める日本企業の数、売上も年々減少 引用元:History of the Global 500 fortune.com

ITの進化がもたらすマーティング、PRの効率化

 情報が海はもちろん時空を超え、世界が近くなったのは、この四半世紀ほどのインターネットの浸透、そして早10余年となるスマートフォンの普及によるものです。今では個人の手のひらが、けた違いのコンピューティングパワーと膨大なデータにアクセス可能となりました。PCや携帯電話が日常にある環境で就職し、仕事を覚えたミレニアル世代(20代後半~40代前半)が、現在の従業員の中堅層を占めています。そしてソーシャルメディア、スマートフォンアプリに親しむZ世代(~20代前半)が新入社員として入ってきています。

 時を同じくして、企業のIT環境はオンプレミスからクラウド、ハイブリッドに移行。システム、ネットワーク、セキュリティ、バックアップなどあらゆるものがハードウェアからソフトウェア、サービスに形を変えています。スマートフォンはもちろんセンサーやカメラなど様々な端末からデータが集まるようになり、その分析によって企業の体力を強化する流れがDXにつながっているのです。

 これに伴い、マーケティングおよびPRのあり方も大きく変わりました。IT投資の決定権を持つ見込み客(リード)を集める場は、かつて数多あった雑誌や展示会から、ニュースサイト、オンラインメディアに移りました。前述のソーシャルメディア、スマートフォンが、企業でも使いやすいITツールになったのです。機械学習、自然言語処理などの人工知能、AIによりターゲットの特定、インサイトの獲得、エンゲージメント強化といったマーケティング活動がデジタル化、自動化され、広告の最適化が進んでいます。

最初のミレニアル世代が成人した2000年頃の展示会ブース、「The Infrastructure for the Digital Economy」を掲げる米Exodus

最初のミレニアル世代が成人した2000年頃の展示会ブース、
「The Infrastructure for the Digital Economy」を掲げる米Exodus

 同様に、広報と呼ばれる報道媒体や記者への働きかけ、メディアリレーションズ*の領域でも、プレスリリース配信、転載、分析の自動化によるデジタル化が行われています。また自社のターゲット媒体、記者を網羅したメディアリストのデジタル化によって、PRイベントへの誘致、記事執筆の有無などを追跡しています。これにより、これまで属人的な知識と技に頼っていたPR活動の戦略立案から実践、報告までを効率化しているのです。

 *共同ピーアール株式会社の登録商標

流動的な「PR」の定義と広がる汽水域、広報と広告の形

 ここで、とくに広報業の方はモヤモヤを覚えているかもしれません。なぜなら、PRという言葉の定義は、人や場面、文脈によって流動的だからです。「PR」とはそもそもはパブリックリレーションズ(Public Relations)」の頭文字、「アピールする、宣伝する」といったニュアンスがあります。広義には、さまざまなメディアを介し、社会やユーザー、パートナーなど様々なステークホルダーと信頼関係を構築するためのコミュニケーション活動全般を指します。

 中でも「広報」名称で組織された狭義のPR専門職は、プレスリリースや取材、記者会見といった情報発信により報道媒体や記者に働きかけるメディアリレーションズを担います。成果として報道露出(パブリシティ)をもたらし、認知獲得に貢献します。報道機関、記者の取材活動によって生まれる記事には、第三者情報ならではのウィンザー効果、信頼性があります。一方で、自社内では情報伝達が完結しない、コントロールできない難しさがあります。これを支援する専門の代理店がPR会社です。

 一方で広告は、クリエイティブと呼ばれる広告デザインを行い、出稿する枠を買い、効果測定により売上促進やブランディング効果を数値化、可視化するのが仕事です。プロセスが複雑で人手がかかる広告の予算は、往々にして広報の10倍~100倍と高額です。自社メッセージの直接的な発信が広告なので、第三者による客観性な報道、パブリシティと比べると信頼性が低く、スキップされ見てもらいづらいという難しさがあります。ここは広告代理店の専門領域です。

 時代とともに、広告と広報の境界線がより緩やかになり、融合が進んでいます。広告はかつてのマスメディアからオンラインメディア、ソーシャルメディアに移行し、体裁も広報とは見分けがつかない自然なもの(ネイティブアド)になっています。そして「広告」と示す際に「PR」と表記することも一般的になりました。ある程度の規模の広告予算を投じれば、パブリシティの呼び水にもなり、広報と広告の相乗効果が生まれます。また、広報担当者やPR会社が得意な文章表現を活かした記事広告も、アドバトリアル、ペイドパブリシティとも呼ばれる広告領域です。これらが総体的に広義のPR、企業のコミュニケーション活動全般を形成するのです。

PRの根幹:メディアリレーションズとは 引用元:共同PR

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コロナが変えたPRチームのあり方

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この記事の著者

上瀧 和子(コウタキ カズコ)

 共同ピーアール株式会社 総合研究所(PR総研)副所長、テクノロジーリード。現SCSKのマーケティング、現ソフトバンクの広報に従事後、PR業界に転じ、テクノロジーとインクルージョンの知見を柱にグローバル企業のコミュニケーション支援、SDGs・ESG投資推進のシンクタンク運営にあたる。IABC(国際ビ...

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