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data tech 2021 レポート

ライオン×ヤマハ発動機のDX推進リーダーが「DXの進め方」を考察 AI/データ活用、組織の在り方とは

data tech 2021 パネルディスカッション:ライオン 黒川博史氏×ヤマハ発動機 大西圭一氏


DXが進まないのは理解が足りないのか?人材が足りないのか?

岡本:それでは、2つ目のテーマに移りたいと思います。IPA『DX白書2021』の調査結果によると、日本におけるAIの導入課題として、2020年は「自社内にAIについての理解が不足している」という回答が最も多く、2021年では「AI人材が不足している」が最多となっています[※1]。若干の進展はあるものの、大きな前進はないようです。また、DXの文脈では、AI単体でなくデータ利活用とあわせて語られることが増えているように感じます。お二人は、AIとデータ活用の必要性についてどうお考えですか?

大西氏:わかりやすいケースでは、マーケティングやお客様接点が例に挙げられると思います。たとえば、お客様自身が商品を買うとき、まずアプリやWebサイトで調べますよね。お客様の行動がオンラインやデジタル情報にシフトしているため、そこからお客様の興味関心、行動情報などのインサイトを得るように企業自身が変わる必要があると思います。

黒川氏:大西さんがおっしゃること、社内でもよく議論します。私からは、新人研修で伝えている話を例に挙げようと思います。たとえば、天気予報で「降水確率が50%」と出たら、あなたは傘を持っていきますか? 過去の気象データに基づいて、降水確率を出すことはまさにAIの領分です。しかしながら、降水確率がどんな数字であれ、傘を持つかどうか意思決定するのはあなたですよね、と教えています。ちなみに私は常に鞄に傘が入っているので天気予報は見ません(笑)。

 データ活用を難しく考えず、DXは既に生活周辺にあるものなので、実際にどうなるのかユースケースを解きながら取り組んでいくことが大事です。そこがわかってくると、上手な付き合い方が見えてくるのではないかと思います。

大西氏:確かにデータ活用やAIは、専門スキルや正しい知識が必要なように見えます。しかし、前段階として大切なことは、どういう課題があり、どういう目標を達成したいのかといった部分です。

 たとえば、製造現場で熟練エンジニアが退職すると、その人の知見が失われると懸念されています。その熟練者の暗黙知を形式知に変えていくところで、データやAIを活用できます。何かに強い思いを持つ、あるいは何か目標があれば、必然的にツールやソリューション、データの有無など具体的な議論に進むかと思います。

黒川氏:同じく、課題設定は重要だと考えています。「データがあるから分析をしてほしい」のようになりがちですが、「ここに課題がありますよね」とこちらから提案することが大切だと思っています。そのため、研修や育成に力を入れています。目標をきちんと定めると手戻りも少なくなり、後々結果が出やすいプロジェクトになると思います。

岡本:前段階が大切ですね。とはいえ、「うちは専門人材がいないから」と諦めている企業もいらっしゃいます。

黒川氏:最低限のリテラシーやイメージを持つことは必要です。次の段階として、Pythonも含めて機械学習を理解することも必要でしょう。ただし、高度な専門家は自社にいなくてもいいと思っています。分析専門の企業やスタートアップと協業してもいい。色々な企業とコミュニケーションを取りながら、情報をアップデートすることも重要なポイントになると考えています。

大西氏:DXやデータ利活用はワンショットで終わるものではなく、継続していくものです。誰かの行動が変わり、定着するまでやりきらないといけません。そのため我々も内製化、社内では「手の内化」と呼びながら注力しています。データ分析の民主化を掲げる中で、データサイエンティストと会話をしたり、一緒にプロジェクトを進められたりする人を増やし、裾野を広げているところです。

岡本:お二人の話を聞くと教育も必要になってきますね。どういう取り組みをされていますか?

黒川氏:今年の実績では、いくつかの社員向けセミナーを実施しました。アンケートで内容を募るなどして企画しています。たとえば、開催する時間帯を分けてみると、面白いことに時間帯によって出席者が異なるという発見もできました。具体的には、役職のある方が参加しやすい時間帯、お子さんのお迎えがある方などが参加しやすい時間帯などがありました。こうした部分も加味しながら、本当に地道にやるしかないなと実感しています。

岡本:DXにはデジタルでない、アナログな部分での苦労もあるのですね。

大西氏:アナログという意味だと、部門間の連携とか、人との信頼関係などは大事だと思います。データやAIのように新しいものを扱っていますが、改善対象のオペレーションは、もう何十年も脈々と続いてきたものです。言い換えてみれば、会社のカルチャーそのものだと言えます。そういう部分は、本当にアナログでウェットな世界だなと感じています。

黒川氏:本当にそうですね。DXのXはトランスフォーメーションであり、Dはデジタルでツールでもあります。「じゃあ、トランスフォーメーションって何なのか?」と考えてみると、組織やプロセスをどう変えていくかということが重要になります。データを利活用できたとしても、業務を変えていくには意思決定の仕方を変えていくことになります。組織のあり方にまでメスを入れる必要がありますが、歴史がある企業ほど現状の在り方にはそれなりの理由があったりします。多くの方が、現状を尊重しながらもドラスティックに変えていくことのジレンマの中で模索していると思います。ここは悩むところです。

[※1] 『DX白書2021 日米比較調査にみるDXの戦略、人材、技術』(IPA、2021)より、第1部第4章「DXを支える手法と技術」(PDF)

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部門の壁を乗り越えるには、経営層を巻き込むにはどうしたら?

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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