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JPXがシステム障害の苦い経験から学んだアジリティとレジリエンス

「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス」レポート

 東京証券取引所グループと大阪証券取引所との経営統合で、2013年1月に発足した日本証券取引所グループ。2019年10月には東京商品取引所を子会社化し、グループ全体で金融商品の売買から精算、決済に関わる一連の取引の流れをサポートしている。2021年12月1日から2日にかけて行われた「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス」では、同グループでCIOを務める横山氏がゲスト基調講演に登壇。「資本市場の未来へ向けた挑戦」と題した講演を行った。

JPXがDXに取り組む理由

 多くの企業と同様に、日本取引所グループ(JPX)もDXに取り組んでいる。そのジャーニーは始まったばかりで、試行錯誤の只中にある。取り組みの背景について、横山氏はビジネス環境とIT環境、両方の観点から解説した。まず、ビジネス環境の変化については、株式や商品の取引を行う環境を提供するのが、取引所だけではなくなってきていることが挙げられる。特に海外では様々な取引場所の登場で、競争が激化している。さらに、今後はスタートアップやGAFAのようなプラットフォーマーが、取引環境のビジネスに新規参入する可能性も十分に考えられる。

 加えて、現在進行形で起きているIT環境の変化として、AIに代表される新しい技術が続々と登場していることも見逃せない。特に大きな変化として横山氏が指摘するのが、システムを所有する代わりに利用する形態、すなわち「クラウドシフト」が進んでいることだ。これまでのJPXのシステムは、パートナーであるベンダーと共に構築し、それをオンプレミスのデータセンターで運用するものであった。これからクラウドシフトを進めていけば、今までのパートナーとの関係も大きく変わることにもなる。だからと言って、現状維持では中長期的に持続可能なシステムを維持することは難しい。今後の環境の変化を踏まえると、取引所ビジネスでも変革は避けられないと分かる。

株式会社日本取引所グループ 常務執行役CIO 横山隆介氏
株式会社日本取引所グループ 常務執行役CIO 横山隆介氏

 JPXが変革を急ぐ理由は他にもある。2020年10月、株式売買システム「arrowhead」で障害が発生し、取引が終日売買停止に陥る経験をしたことだ。この経験から得た学びは、システムに障害が起こった場合の復旧性、つまり「レジリエンス」の向上が急務ということだ。この件からも分かるように、取引所は極めて重要な社会インフラを提供しているが、その堅実な運営だけでなく、変化に適応する役割も求められている。そして「この2つは相反するものではなく、つなぐ役割をする鍵の一つがレジリエンスです」というのが横山氏の見立てだ。

 JPXがこの課題を克服し、新規参入の脅威に対処するには、変化に強い技術を取り入れ、ビジネスを変革しなければならない。その意味で、これまでのシステムは変化が小さいことを前提としたもので、ウォーターフォール型の開発スタイルが適していたが、これを見直していくことも必要になる。

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PoCから進めるデジタル化

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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