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2032年までに内製人材1,000人を目指すニトリ。急ピッチの人材育成・組織拡大期における文化醸成術

第17回:ニトリホールディングス 情報システム改革室 組織戦略・教育改革チーム エキスパート 山口祐子さん

 家具大手のニトリホールディングス(以下、ニトリ)の情報システム部門が大きく変わろうとしている。2032年までに3,000店舗、売上高3兆円を掲げ、2025年までに情シスだけで(パートナーを含めて)300人増の700人体制、2032年には1,000人体制を目指す。2022年4月には、IT子会社「ニトリデジタルベース」を設立。もともとITも「完全内製」にこだわってきたニトリだが、深い現場理解とデジタルの知見を有した“情シス1,000人”をどう育成していくのか。情報システム改革室 組織戦略・教育改革チームの山口祐子さんに聞いた。

組織拡大には採用以外に「配転」によるリスキリングも

酒井真弓(以下、酒井):情報システム部門に、組織戦略や教育改革の専門チームがあるなんて珍しいですね。

山口祐子(以下、山口):そうですよね。私たち組織戦略・教育改革チームの役割は、情報システム部門の組織と人に関わることすべてを一気通貫で設計し、事業拡大を支える真の内製組織に成長させていくことです。組織戦略の策定はもちろん、人材育成計画──具体的には必要なスキルや求める人物像を整理し、育成プログラムの構築や採用活動などをリードしています。人事制度改革や働きやすい環境づくり、採用広報も重要なミッションです。

 目下の課題は、「2025年までに700人体制」を目指し、多様な人材をいかにスピーディーに戦力化していくかということ。新卒・キャリア採用に加え、私たちは「配転教育」を重視しています。配転教育とは、数年おきに様々な部署・職種を経験して自分の長所や適性に気づき、幅広いキャリアを形成していくニトリ独自の手法で、店長経験者が情シスに配属されることもあるんです。深い業務理解とデジタルの知見を有した情シスの存在は、大きな強みになります。しかし、それには一人ひとりのスキルや適性に合わせた、きめ細やかな教育が不可欠です。

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ニトリホールディングス 情報システム改革室 組織戦略・教育改革チーム エキスパート 山口祐子さん

酒井:内製組織を急成長させていくには、採用だけではなく配転、つまりリスキリングが必要で、まさに教育が要というわけですね。具体的にはどのように進めていくのでしょうか。

山口:今まさに取り組んでいるのが、チームとしてのスキルの底上げです。自分たちが強化したいスキルを明らかにした上で、情シス全員にITスキル標準に準拠したアセスメントを受けてもらい、世の中的に私たちのスキルレベルはどれくらいなのか可視化することからスタートします。強いところもあれば、弱いところもあるはず。自分たちに足りないものを把握した上で、必要なスキルを必要な人に習得してもらう方が効率的です。成長速度も変わってくると思います。

 それでも今のスピード感では、「2032年までに3,000店舗、売上高3兆円」の実現は難しいでしょう。開発スピードも品質も、もっともっと上げていかなければなりません。2023年10月には、若手を中心とした14人で「開発ユニット」という内製強化チームを立ち上げました。まずは今年入社した36人、来年入社する50人以上の若手をいち早く戦力化するため、先輩社員を先生役に、開発力を身につけてもらいます。

酒井:その若手の皆さんがどんどん先生役になっていけば、一人が複数人に教えるより速く組織力が上がりそうですね。

山口:その通りです。次の新卒や配転者が開発ユニットに配属され、開発力を鍛え、今度は新しいメンバーに教えられるようになっていく──そんなスパイラルを回していきたいと思っています。

 実際のプロジェクトもどんどん担当してもらいます。幸いなことに、ニトリはプロジェクト数が非常に多く、リリースも大小合わせて日に7、8件あります。そういった多くのプロジェクトの中から最初は比較的小さくて易しいプロジェクトを選択し、段階的に難易度を高めていくことで、スムーズな育成ができると思っています。

酒井:外部研修や専門家を招いての講習よりも、社内での育成にこだわる理由は何ですか?

山口:スキルアップのスピードと同じくらい、学びの内容が大事だと思っているからです。基礎や原理原則を学ぶには、外部研修などは有効でしょう。しかし、その次のステップに行こうとすると、現場の役に立てるかが重要になってきます。実際の業務やプロジェクトの中で、自分が開発したものを使ってもらい、フィードバックをもらうという経験は、一番の成長の糧になると思っています。

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与えられた“情シスの未来像”では納得できない

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

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