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システム障害管理の効率化──AIOpsへの道筋

「Runbook(ランブック)」とは何か、インシデント対応に追われるIT運用を変えるメソッド

Runbookの活用で得られる「4つのメリット」

 現代のIT環境は日々進化し、複雑性を増しています。その中で、システム管理者やIT運用担当者は、予期せぬ問題やインシデントへの対応に追われることも少なくありません。その際に、もし担当者自身ですぐに判断や対応ができない場合、どうすればよいのでしょうか。

「Runbook(ランブック)」とは何か

 予期せぬトラブルやインシデント対応に追われる際、「解決策を見つけるためにGoogleで検索する」「社内Wikiやドキュメントに目を通す」「共有スクリプトの場所を探す」「同僚に尋ねる」など、ありとあらゆる方法を試されるかもしれません。特に経験の浅い担当者にとって適切な判断や対応は難しく、解決策を探すために膨大な時間と労力を費やすことも珍しくありません。

 しかし、頻発する問題について同じ解決策を何度も調べているような状況があるならば、効率性の観点から見直しを検討すべきでしょう。このような状況を改善し、効率的かつ安定したIT運用を実現するために活用できるのが『Runbook(ランブック)』です。これは、頻繁に発生するIT業務や問題解決の手順を詳細に記した説明書であり、たとえるならば“料理のレシピ”のようなもので、特定の作業を迅速かつ正確に実行するための手順が明確に記載されています。

 Runbookは単なるマニュアルではなく、経験豊富なメンバーの知識やノウハウを形式知化し、チーム全体で共有するための貴重な資産となります。具体的にRunbook の形式は、下記3つに大別できます。

  1. マニュアル形式:手順を文章で説明した最も基本的な形式
  2. 半自動形式:一部のワークフローが自動化されており、手動と自動の作業が組み合わさっている
  3. 完全自動形式:すべてのワークフローが自動化されており、人の介入なしで作業が実行される

 IT運用の現場では、サーバーへのパッチ適用、WebサイトのSSL証明書の更新など、繰り返し行われるルーティン作業が数多く存在します。一見すると単純な作業に見えるかもしれませんが、現代のITシステムは複雑に絡み合った多種多様なソフトウェアで構成されており、一つひとつの作業を正確に、漏れなく実施することが求められます。

 しかし、これらのルーティン作業を個々の担当者の知識や経験に頼って行うことは、様々な問題を引き起こす可能性があるでしょう。

 たとえば、経験の浅い担当者は作業内容や手順を理解するのに時間を要することで、成長が遅れてしまいます。また、担当者によって対応方法が異なったり、非効率な方法が用いられたりすることで、作業品質にバラつきが生じてしまうリスクも生まれるでしょう。さらに、問題が発生した際のインシデント対応においても、経験の浅い担当者は適切な判断を下すことが難しく、経験豊富なメンバーへのエスカレーションが増加する傾向があります。これにより、重要な業務が中断されたり対応が遅延したりする可能性も高まります。

 何よりも深刻な問題として、早急にエスカレーションが必要な状況においても担当者が自ら解決しようとすると、膨大なドキュメントやWebサイトを検索することで情報収集に時間を費やしてしまいます。結果的に、迅速な対応が求められるインシデント対応において、さらなる遅れが発生するという悪循環に陥ってしまう可能性があるのです。

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この記事の著者

草間一人(jacopen)(クサマカズト)

PagerDuty株式会社 Product Evangelist
通信事業者でプラットフォームエンジニアを務めたのを皮切りに、いくつかの外資系企業でプロフェッショナルサービスやプリセールスエンジニアとしてクラウドネイティブやプラットフォーム製品に携わるなど、10年以上さまざまな形でプラットフォームに関与し...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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