
近年、リモートワークなどを契機に業務システム環境のクラウド移行が進展。オフィスの固定電話を廃止し、インターネットを使った「クラウドPBX」への移行が増えています。しかし、利用環境を十分に整備できなかったために、通信品質に問題を抱えてしまうケースも少なくありません。問題を未然に防ぎ、快適に利用するためにはどのような対策を打てるのか。具体的な事例を交えて紹介します。
クラウドPBXの“責任共有モデル”をひも解く
オフィスやコールセンターで利用する電話は、従来オフィス内に設置したPBX(Private Branch eXchange)機器に電話機を配線して利用する構成でした。それに対してクラウドPBXは、クラウドPBXプロバイダーがデータセンターに構築したPBXをインターネットを通じ、ユーザーがパソコンやスマートフォン、電話機を利用して電話の発着信を行う形態のサービスです。

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そして、このとき押さえておくべきものが「責任共有モデル」。システム運用における責任について、クラウドサービスプロバイダーがどこまで担保するのか、ユーザー側もどこまで負うべきなのか、その責任範囲を明確にするための考え方です。

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クラウドPBXでも同様に、クラウドPBXプロバイダーとユーザー間で責任共有モデルに照らし、それぞれが責任をもって構築・運用することで、クラウドのメリットを十分に享受できるようになると考えています。運用負担の軽減、迅速かつ低コストなサービス利用にもつながるでしょう。
では、具体的にクラウドPBXにおける責任共有モデルはどのような形になるのか。まずは、その構成図(下図参照)から確認していきましょう。
クラウドPBXの構成要素は、クラウドPBXプロバイダー側から順に、通信会社のPSTN(Public Switched Telephone Network:公衆交換電話網)に接続する電話回線(多くの場合SIPトランキング)やPBX、インターネット回線、社内LAN、パソコン・スマートフォン、ヘッドセットとなります。

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とはいえ、現実にはユーザー側で責任を持つ範囲において、クラウドPBXにかかわる深いノウハウを持ったシステム管理者が組織にいるとは限りません。その場合は、担当営業やサポートセンターに相談して、情報提供をしてもらえるかどうかを導入前に確認することが必要です。検討しているプランでカスタマーサポートを利用できるのか、購入や契約に関する相談だけでなく、利用に関する専門的なアドバイスまで受けられるのかを製品選定時に考慮するようにしましょう。
責任共有モデルを理解し、自社の役割を把握しておくことで、想定されるトラブルを回避した効率的な導入・運用を実現できるでしょう。では、そうした考慮が不足していたらどのようなトラブルが起きてしまうのか。その失敗例について具体的に紹介していきます。
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平村 健勝(ヒラムラ タケカツ)
株式会社RevComm 執行役員 CTO
東京工業大学大学院修士課程を修了後、アクセンチュア株式会社に入社。データサイエンス部門のマネージャーとして、通信業界向けの最先端技術を活用したプロダクトの開発や、ITコンサルティング案件を多数指揮。2018年6月より、音声解析AI「MiiTel」を開発・提供する株...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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