クライアント仮想化でも有効なシンクライアント
ところで、クライアント仮想化技術の発展に伴って、新たな活躍の場を得たのがシンクライアントだ。
シンクライアント自体は以前からあるソリューションで、決して目新しいものではない。1990年代、サーバ/クライアントシステムにおけるPC運用管理を簡素化し、TCOを大幅に削減するという触れ込みで登場したシンクライアントだったが、当時はまだネットワーク帯域や端末の性能に制限があり、大々的に普及するまでには至らなかった。
さらに2005年に個人情報保護法が施行され、クライアントPC経由の情報漏えいが大きくクローズアップされたことから「シンクライアント第二次ブーム」とも呼べる現象が起きる。この時期に各メーカー、ベンダーからさまざまなシンクライアントソリューションが登場した。日立製作所(以下、日立)はいち早く「セキュアクライアントソリューション」を発表し、市場を牽引。特に同社のシンクライアント端末「セキュリティPC」は堅牢なセキュリティ機能を持ち、多くの企業で導入された。

このように、シンクライアントはこれまで、セキュリティ対策、TCO削減、コンプライアンス強化のためのものだととらえられてきた。しかしここに来て、前項で説明したクライアント仮想化技術の登場により、その活用範囲が一気に広がることになった。
最近では、社外でインターネットに接続するための通信インフラの整備やデータ転送に利用する通信プロトコルの進化など、周辺をとりまく環境の変化もあって、性能や使い勝手といったシンクライアントが抱えていた課題も改善されている。
さらに、使い勝手の面でシンクライアントの世界に新風を吹き込んだのがクライアント仮想化技術だ。シトリックスやマイクロソフトといったベンダーが提供する先進的な仮想化製品を利用すれば、PCとほぼ同等の使い勝手をシンクライアント端末上で実現できる。「PCだったらこのアプリケーションが使えるのに……」「ネットワークにつながないと、何もできない……」。このようなシンクライアントに対するこれまでの不満の多くが、解消されつつあるのだ。
事実、これまで国内のシンクライアント市場をリードし続けてきた日立も、いち早くクライアント仮想化技術を取り込んでいる。特に近年では、シトリックスとマイクロソフトとの協業体制により、ハードウェアからOS、仮想化ソフトウェアまですべてのコンポーネントを揃えたトータルソリューションを提供している。マイクロソフトは、2010年7月から仮想デスクトップ用のクライアントOSライセンスを変更し、クライアント仮想化の導入をサポートしている。こうした動きもクライアント仮想化の普及を後押しすると日立は見ている。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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