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なるほど! AIの使い方――在住外国人向け多言語チャットボット、サクラマスの陸上養殖

稚内の陸上養殖実験を支えるIoT・AI

 北海道稚内にある株式会社カタクラフーズは、魚醤やホタテエキスなどを製造している食品製造業を営んでいる。これに加え、かつては水産加工場から残渣(未利用部位)を購入して、鳥・豚・魚の飼料原料・肥料原料となる魚粕・魚粉末を作る飼肥料事業も運営していたが、近年の漁獲量減少のあおりを受け、昨年、事業を閉鎖せざるを得なくなってしまったという。

 漁獲量が減ると、なぜ飼肥料事業が廃業へと追い込まれるのか。その謎を解くためには、魚の流通について知る必要がある。一般的に、水揚げされた魚は鮮魚として市場で売られ、店舗を経て我々の食卓に並ぶ。鮮魚として扱われなかった魚は、水産加工場でかまぼこなどの加工食品へと姿を変えて、我々の食卓に並ぶ。さらに、水産加工場で使われなかった魚の頭・尾・骨・皮など部位や、原料にならないほどの小さな魚は、魚粕工場に運ばれて、飼肥料へと生まれ変わっていた。

 しかし、近年の漁獲量減少にともなう魚価の高騰により、魚粕工場が仕入れられる原料の量はピーク時の10分の1以下にまで落ち込み、工場稼働率が低下。つまり、原価が上昇した結果、廃業に至ったというわけだ。

株式会社カタクラフーズ 業務部営業課 藤山 純氏
株式会社カタクラフーズ 業務部営業課 藤山 純氏

 カタクラフーズ 業務部営業課の藤山 純氏は、「水産資源枯渇は、もはや避けられない現実。今後、水産業を維持・発展させるためには、水産加工業者が“育てる”ところから行う6次産業化が必要です。そこで我々は、北海道立総合研究機構の6試験場との共同研究として、北海道内の民間企業では初となる、海水魚類“陸上養殖”実証実験を開始した次第です」と語る。

 この実証実験の養殖魚はサクラマスである。サクラマスは河川で1年半、その後1年の海洋生活を送る。サクラマスは希少魚で、北海道のサケ・マスの全漁獲量年間15万トンのうち、500〜1000トンを占めるのみだ。それに性格は非常に繊細で、サケ科魚類の中でも養殖が難しいとされている。だから、「サクラマスで成功すれば、他の魚種での成功率も高くなるだろう」ということで選ばれた。

養殖魚は「サクラマス」
養殖魚は「サクラマス」
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 稚内は言わずと知れた日本最北端の地。地の利もある。夏でも海水温が22℃を超える日はほとんどないため、海水冷却のエネルギーコストを抑え、年間通し陸上養殖を実施できる可能性があるのだ。さらに、自社や近隣で発生するホタテ未利用資源を活用した飼料原料の開発により、飼料コストの削減も狙う。

 この実証試験で低コストでの陸上養殖が成功すれば、稚内の新規産業になり、地域の活性化も期待できる。そして“育てる漁業”が普及して、北海道陸上養殖のブランドが確立できれば、北海道における水産変革につなげられるかもしれない。そんな夢を抱きながら、日本オラクルとともにIoT・AIを用いた効率化および省労力化に挑んでいる。

 藤山氏がIoT・AIの力で叶えたいのは、「遠隔監視」「魚の個体識別」「自動給餌」の3つを安価かつメンテナンスがいらないシステムで実現することだ。その願いを叶えるため、日本オラクル デジタルトランスフォーメーション推進室の内田直之氏が立ち上がった。

日本オラクル株式会社 デジタルトランスフォーメーション推進室 内田直之氏
日本オラクル株式会社 デジタルトランスフォーメーション推進室 内田直之氏

 まずは初期段階として、画像によるフィッシュプールおよび養殖魚群の監視をすることにした。注水口の水量・エアレーションの気泡量・サクラマスの回遊魚影、これらを1個2000円もしなかったという安価なマニュアルフォーカスのカメラで撮影した画像にフィルタをかけ、数値化したデータを分析する。

陸上養殖のシステム概要 陸上養殖で用いる想定アルゴリズム
陸上養殖のシステム概要とそこで用いる想定アルゴリズム
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 クラウドのコストを下げるために、1秒間で30フレーム撮影できるうち、3秒に1枚しか画像を送らないようにしているほか、画像に加工を加えグレースケール化することでデータ容量を抑えた。また、異常検知のためにディープラーニングを使うとコストがかかってしまうため、CannyフィルタやLaplacianフィルタを使って特徴点を捉え、そこから分析するアプローチをとった。Oracle Database Cloudに搭載される機械学習エンジン「Oracle Data Mining」を使って解析してみたところ、実証実験を行った5日〜6日の間に撮影した8万枚の写真による学習結果から、アキュラシーが80%以上という精度が得られているという。

エアレーションと注水の画像解析
エアレーションと注水の画像解析
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 実証実験はまだ始まったばかりだが、データベースアプリケーションをノンプログラミングで開発できるOracle Database Cloudの標準搭載ツール「Oracle Application Express(Oracle APEX)」で開発したアプリによって、遠隔地からもスマホなどでリアルタイムに水槽の様子が見られるようになっただけでなく、異常な数値を検知すると自動でメールが届くシステムも実装されている。今後は個体識別にもチャレンジしていく予定だ。

 このようにオラクルはエンタープライズの顧客だけでなく、新規事業でIoT・AIにチャレンジするSMBの顧客にも広く門戸を開いている。これからますますオラクルのAIは、見えないところで私たちの生活を支えてくれることだろう。

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり・...

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