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SAS Forum Japan 2019レポート 精度の高い需要予測を実現する SASならではの技術と知見

edited by DB Online   2019/08/08 06:00

 6月11日に東京都内で開催された「SAS FORUM JAPAN 2019」は、デジタル変革の推進に不可欠な 「Technology」、「People」、「Process」をテーマに、先進的なユーザー事例や最新テクロノジーをはじめとした多くのセッションが行われた。ここでは、SAS Institute Japanのコンサルティングサービス本部 IoTグループの部長である河野芳明氏による「SASコンサルタントが語る、成果を生む需要予測プロジェクト 成功の要因」の模様をお伝えする。

需要予測の成功要因と課題 

 河野氏は本セッションについて、「お客様より高い評価を得られた過去案件の中で、実際にどのような課題があり、それらをどのように解決してきたかを、具体的にお話しします」と述べ、SASが現在までに日本のお客様に対して実施してきた「需要予測」における複数の成功例を、製造業とリテール業に分けて説明するとした。

 まず、需要予測の成功要因として、河野氏は実績を分類して紹介した。産業では、製造業とリテール業を対象としていた。業態では、完成品および部品、ライフサイクルでは、新商品、既存品、季節品、キャンペーン品、限定品をカバーした。予測算出対象は、受注数、出荷数、販売数、多くは徹底して客数を予測していたという。そして予測算出粒度は日別、週別、月別で行った。

 需要予測には、一般的にどのような課題があるのか。河野氏は6つを課題に挙げた。世の中の流れとしての陳腐化やコモディティ化の加速、利益確保施策としての「短ライフサイクル化(多品種化、少量化)」。昨今多発する異常気象による予実乖離や、販売・出荷実績値の乱れとなる「異常気象によるイレギュラー対応」。高齢化および労働人口減少、データサイエンティスト人材需要の増加、労働力売り手市場状況による流出および流入への対応となる「人手不足」。

 各産業・各社がデジタルトランスフォーメーション(DX)へ乗り出す中での競争の熾烈化、自社DXへ向けた中長期計画へのアライン・計画策定といった「DX」。KKD法による、根拠の怪しい予測算出や属人化、定常的に多くの業務工数を要する予測・計画策定などの「予測算出業務」。根拠が残っていない、予実乖離時のアクションが取れないといった「予測根拠の不在」となる。

SAS Institute Japanのコンサルティングサービス本部 IoTグループの部長である河野芳明氏
SAS Institute Japanのコンサルティングサービス本部 IoTグループの部長である河野芳明氏

製造業の需要予測における課題

 河野氏は続いて、製造業で一般的に見られる主な課題を紹介した。その内容は一変し、部品に関する課題がその多くを占めるようになる。まず、販売実績レコードがない中での予測値・計画値の策定、およびその策定方法の確立といった「発売前の需要把握・算出」。販売開始後の初回生産分のはけ方と、その後の極端な動きの捉え方といった「急激な動きへの対応」。製品の供給・サポートの年限を見越した部品の一括購買、およびその適切な必要量の算出といった「部品の一括調達」。

 限られた予算枠内での、製品稼働率を最大化するための「部品発注の最適化」。部品数など予測対象数が非常に多い、予測業務工数や予測算出処理がともに重いといった「予測対象の多さ」。そして、対象数が多い中での「適切なクラスター化」。これには単なるカテゴライズではない需要・出荷の動きの類似度も加味したクラスター処理も含まれる。

 リテール業で一般的に見られる主な課題においても、独特のものとなっている。特に、変化への対応に関する課題が多いことが特徴的だ。まず、B to Bではないため受注データは残らないが、欠品などにより「需要数と販売数はイコールではない」ケースが多く発生する。在庫切れや異常気象、近隣イベント・近隣競合などにより恣意的な動きが多く入り込み「データに問題・ノイズが多い」こと。チラシ特売などにより、通常は0~数十個の販売数の商品が、数百~千個単位で売れるといった「販売数の急激な変化」。

 販売数だけでなく、「同日中の価格の変化」もある。いわゆる見切り品などによるもので、これの販売数への影響が見えづらくなる。「季節性、間欠性」も課題で、間欠データによりモデルの作成が困難になる。また、販売開始時の予測の立ち上がり・ボリューム感を捉えづらくしてしまう。そして「在庫データの不在」。在庫状況がデータとして取れていないため、欠品=機会損失状況の実際が把握できない。

製造業で一般的に見られる需要予測の主な課題

製造業で一般的に見られる需要予測の主な課題

 こうした課題をいかに解決し成功したか。河野氏は需要予測プロジェクトの成功事例から、その要因を具体的に紹介した。まず、成功したプロジェクトには「対象とする課題の適切な選定」と「プロダクト・手法の最大活用」の2つがあるとした。さらに細かく見ていくと、課題の選定では「正確な課題の把握」「ユーザー様の強いコミットメント」「現場側の巻き込み、取り組みテーマへの賛同取り付け」「蓄積されたコンサルティング経験、知見」を挙げた。

 プロダクト・手法の活用では「最新鋭かつ高生産性な分析プロダクト」「システム化可能かつ大量処理実行可能なプロダクト」、そして「蓄積されたコンサルティング経験、知見」を挙げた。いずれも、蓄積されたコンサルティング経験、知見が重要な要素であり、SASはその点で創業1976年から多くのナレッジの集積と豊富なコンサルティング経験がある。また、予測手法のマルチアプローチが可能である点も特徴で、お客様に合わせて様々なアルゴリズムを組み合わせることも可能で、最適な解を提案できるとした。

製造業の需要予測に有効な施策

 河野氏は、製造業向けの需要予測の成功事例から、有効であった施策を紹介した。具体的には「フェーズごとの予測手法切り替え」「発売前、発売直後予測」「予測精度の自律的改善」「新製品~既存品へのトランジション」「既存品予測」「カニバリゼーション」「部品の一括調達」「部品調達最適化」となる。河野氏は実際のフェーズを追いながらポイントを説明した。

 第1フェーズは発売前、第2フェーズは発売直後、第3フェーズは既存品になるまでの間ということになる。フェーズに応じて適切な予測モデルを作ることで、高い成果が得られる。それがSASの知見であるとした。なお、それ以降は既存品となるため、既存品としての需要予測を活用する。第1フェーズには、類似品を計算により算出するケースと、類似品をユーザー自身が選定するケースがある。

 計算で算出する場合は、商品の属性や特徴、対象ユーザー層などの条件から過去の新商品を照会し、多次元空間で距離計算を行って近いものを選ぶ。過去の新商品の販売波形は参照できるので、これに類似度を掛け合わせて波形の合成を行う。これにより、今回の新商品の販売予測値が算出される。ユーザー自身が選定する場合は、ユーザーが類似品を数個選定し、それらの波形を合成する。この「合成する」というところにSASの知見があり、精度の高い予測値を導き出せる。

 発売直後の第2フェーズは、多少の実績値があるので、この動きを過去の新商品と照らし合わせる。SASには、波形の類似性を計算できる機能が搭載されており、これにより類似度の高い波形を数個選び出し、重み付けをした上で波形を合成、予測値を作成できる。「これをヤドカリ方式と呼んでいます」と河野氏。この予測方式は、誤差率が12週目で20.8%、16週目で12.9%と、時間が経つにつれて精度の高い予測値に自ら変わっていくことが特徴となっている。

「ヤドカリ方式」による需要予測
「ヤドカリ方式」による需要予測

リテール業の需要予測における課題

 河野氏は、リテール業向けの需要予測の成功事例から、有効であった施策を紹介した。具体的には「客数予測→販売数予測」「変数の大量投入」「価格弾力性」「予測モデルのハイブリッド化」「在庫切れ対応」「季節性商品」「異常データ除外」「ロス率の考慮」となる。リテール業では販売予測の前段として、客数予測(レジの回数)を行う。ここをしっかりと予測することで全体の予測精度の底上げができる。この部分も、SASが知見を蓄積しているとした。

 変数の大量投入では、一般的に80から90の説明変数をお客様にご用意いただいている。変数は、価格系、店舗イベント・企画系、カレンダー系、競合要因系、周辺地区要因系、天気系などに分類することができ、さらに大きく内部要因系と外部要因系に分けることができる。客数予測では、日別で誤差率5%程度の非常に高い数値を実現しており、さらに時間帯別で予測することでレジ打ちパート人員の最適化に落とすことも可能であるとした。

 客数予測では、大雪などのイレギュラーな要因もある。一般的に大雪の前日は来客数が増え、当日は下がるが、これも様々なテクニックを駆使することで前日の立ち上がりと当日の落ち込みを予測できる。また、リテールでは特売やキャンペーンなどの施策により、通常時は販売数が20~30個の商品が200~400個、あるいは1000個レベルまで売れることがある。この予測は非常に難しく、非線形回帰モデルではうまく予測できないと河野氏は指摘する。

販売予測の第1段階

販売予測の第1段階

 そこでSASでは、段階的な予測を行っていく。最初の段階では、自己回帰的な時系列モデルで算出した。ほぼ動きは追えているが、平常時の販売数が上振れ傾向にある。そこで次に層別予測という、層に分けて予測する手法を適用した。これにより平常時の上振れが解消されるが、急激な販売数の突き上げは追い切れておらず、累積値に差が出ている。第3段階としてイベント効果考慮モデルを追加すると、ほぼ完全な予測となった。

販売予測の第3段階

販売予測の第3段階

 河野氏は、季節性・間欠性への季節性変数の投入、在庫切れ発生時のデータを除去することによる対応、値付けや棚割(売り方)の変化を下降トレンドと解釈しないことによる対応、近隣で花火大会があって特定の商品が急激に売れた際の対応、見切り品の賢い売り方のための予測などを詳しく説明した。

SASのリテール業向けサービス

 最後に河野氏は、SASがリテール業向けに提供している「需要予測 クイックPoC」サービスについて紹介した。これは、短期間・低費用で実施可能な予測算出・精度検証サービスで、SASが過去、主に日本のお客様向けに行ってきた需要予測プロジェクトからの知見が蓄積・反映された予測モデルを使用する。サービスでは、まずお客様に販売実績やイベント情報、販促情報など80~90のデータを準備していただき、それを元にSASが需要予測を行う。

「需要予測 クイックPoC」サービスの進め方
「需要予測 クイックPoC」サービスの進め方

著者プロフィール

  • 吉澤 亨史(ヨシザワ コウジ)

    元自動車整備士。整備工場やガソリンスタンド所長などを経て、1996年にフリーランスライターとして独立。以後、雑誌やWebを中心に執筆活動を行う。パソコン、周辺機器、ソフトウェア、携帯電話、セキュリティ、エンタープライズ系など幅広い分野に対応。

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