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Oracleのパブリッククラウドサービスへの参入はクラウドマーケットの地図を大きく塗り替えるのか

edited by DB Online   2012/06/12 00:00

 「7年近くにおよぶ弛まないエンジニアリングとイノベーションに加え、鍵となる戦略的買収と数10億ドルに達する投資を行ってきた成果として、Oracleは地球上でもっとも包括的なクラウドを発表します」― 2012年6月6日(日本では7日の早朝)、OracleがPublic Cloudサービスを正式発表した。これはその際のOracle CEOラリー・エリソン氏の発言。昨年の米国Oracle OpenWorldでのお披露目から9ヶ月あまりが経過し、満を持しての発表と言えるだろう。

 

あなたもいますぐにExadataを使うことができる

老眼鏡をかけ、自らデモを行うラリー・エリソン氏
老眼鏡をかけ、自らデモを行うラリー・エリソン氏

 「7年近くにおよぶ弛まないエンジニアリングとイノベーションに加え、鍵となる戦略的買収と数10億ドルに達する投資を行ってきた成果として、Oracleは地球上でもっとも包括的なクラウドを発表します」

 2012年6月6日(日本では7日の早朝)、OracleがPublic Cloudサービスを正式発表した。これはその際のOracle CEOラリー・エリソン氏の発言。昨年の米国Oracle OpenWorldでのお披露目から9ヶ月あまりが経過し、満を持しての発表と言えるだろう。とはいえ、今回のクラウドサービスの準備そのものは、なんと7年前からというのだから驚くところ。当初Oracleは、他社がクラウドサービスに次々と参入する中、クラウドサービスについては自らは展開しない、クラウドサービス事業者の"Enabler"の立場に徹するのだと言っていた。とはいえじつは、その頃から着々とクラウドサービスを展開する準備を行い、サービス提供開始タイミングを見計らっていたことになる。

 今回発表の内容は、昨年のOpenWorld時、そしてその後明らかになった内容から大きく進展があったわけではない。あまり説明がなされていなかったSocial Serviceの内容説明が追加されたという感じか。各種ソーシャルネットワークのデータ、企業情報のデータ、そして自社の顧客データなどをクラウド上で1つにして分析し、顧客とコミュニケーションできるOracle Social Intelligence Servicesについても紹介された。

 もっとも注目すべきは、この9ヶ月間で多くの導入事例が出ていることだろう。同社のサービスの優位性は、なんといってもオンプレミスのOracleベースのアプリケーションが、基本的にそのままクラウドに移行できることだろう。逆にクラウド上のアプリケーションは、オンプレミスの環境に容易に移行できる。既存のアプリケーションを作り直すことなく移行できるというのは、同社のクラウドサービスを利用する敷居を大きく下げるものだろう。このあたりは、先行するSalesforce.comとは大きく異なるところだ。

 Oracle Public Cloudの裏側では、Oracle Exadata、ExalogicといったOracleのEngineered Systemsの技術が最大限に活用されている。あんな高価なマシンは到底導入できないなぁと思っていた人も、Oracle Public Cloudのサービスを利用すればその恩恵に浴することができるというわけだ。とはいえ、これらは雲の向こうにあるので、どのあたりがExadataなのかといったことはよくわからないかもしれないけれど。

SAP HANAの急成長から目が離せない

「Mr.HANA」こと、馬場 渉氏
「Mr.HANA」こと、馬場 渉氏

 今回の発表の中でもエリソン氏は、相変わらずSalesforce.comやSAPを揶揄していたようだ。対するSAPは、ここのところ「データベースベンダーのOracle」を目の敵にしているのだからお互い様か。そんなSAP、インメモリデータベースのSAP HANA最新版SP4の発表を行っている。SAP HANAは、ほぼ6ヶ月ごとにService Packという形でバージョンアップを行い、機能追加を行っている。今回はその4回目であり大規模データに対応し、ビッグデータの解析でにわかに注目を集めている統計言語「R」の対応、データソースとしてApache Hadoopに対応するなどの拡張がなされた。

 現在SAPでは、ERPなどの自社製品について今後は徹底してHANAに対応していくことを決めている。経営層のこの決定について、当初は主流であるアプリケーション製品の部隊からは懸念も出ていたとのこと。そりゃあ、当然と言えば当然。そこを説き伏せ、HANAにかける体制をとっているというわけだ。

 その証しとして、早くも次期バージョンアップとなるSP5でSAP ERP 6.0のデータベースとして利用できるようにする予定だとのこと。当然ながら、シビアなOLTP処理を行うERPアプリケーションにおいて、「HANAで本当に大丈夫なのかというのはある」とSAPジャパン リアルタイムコンピューティング事業本部長の馬場 渉氏は言う。ERP用データベースの敷居の高さは、SAPこそがよくわかっているとのことで、それにあえてSAPはチャレンジしていることになる。

 とにかくいま、データベースのマーケットでSAPは勢いがあるのは確かだ。調査会社の最新のマーケットシェア調査結果でも、テラデータをSAPが抜いて4位になったとか。当然ながら、もとがゼロだったわけで成長率は一番。これまではNo1のERPアプリケーションベンダーとして、常に追われる立場でシェアを奪われないように苦労していた身。それが今度は一気に攻撃側にまわり、どこを攻めても自分たちにとってはホワイトスペースという状況だ。これは、成果が目に見えて上がるはずであり、士気も上がるのだろう。

 とはいえ、長年データベースに関わってきた感覚からすると、SAP HANAのデータベースとしての完成度はまだまだだなと感じることも多い。今回のバージョンアップのように、流行の技術にいち早く対応しているのは目立つところだが、まだまだ荒削りでOracleやSQL Serverなどのデータベースに比べると「あれこんなことはできないの」と思わされるところも多々ある。そんな遅れがあることは、SAPも重々承知なのだろう。だからこそ、6ヶ月という速いペースでバージョンアップし、どんどん必要な機能を実装する。そういった意味では、OLTPに対応することとなる次のSP5は、かなり大きなバージョンアップになると言える。というわけで、DB Onlineとしては今後ともSAP HANAの進化には、さらに注目していきたいと思うところだ。



著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジ...

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