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週刊DBオンライン 五味明子

10年食える技術なんていまはない!―開発のトレンドはアグリゲーションに

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DB Onlineの読者のみなさま、こんにちは。今回から「週刊DBオンライン」を谷川チーフとともにあらためて担当させていただくことになりました。フリーランスになってから1年ちょっとになりますが、自分の名前を冠した連載をもてるというのは物書きとしてとてもありがたいお話です。読者の方々にすこしでもお役に立てる情報がお届けできれば幸いでございます。

 さて、ワタクシ現在、カナダ・トロントのホテルの一室でこの原稿を書いております。7月のトロントは陽射しがきつく、夜は21時過ぎまで明るく、でも湿度は低く、風は心地よく、それはそれは過ごしやすくきれいな街です。こんないい時期に休暇で来れたら最高なのですが、残念ながらそんな贅沢はフリーランス2年目の物書きには許されておりません(しくしく)。そういえばしばらく出張以外で海外に行ってないなあ……。

 というわけで、今回ももちろんお仕事で来ております。マイクロソフトが年に1回、北米のどこかの街で7月初旬に開催する「Microsoft Worldwide Partner Conference(以下、WPC)」というイベントがありまして、今年はここトロントで7月9日から12日までの4日間に渡って開催されました。昨年のL.Aで開催されたWPC 2011にも参加させていただいており、2年連続で同じイベントを見る機会を得たことで、マイクロソフトのここ1、2年の戦略がかなりはっきりと見てとれたように感じます。

世界各国からマイクロソフトパートナーが集結したWPC 2012
世界各国からマイクロソフトパートナーが集結したWPC 2012

 そこで今回のコラムでは、WPC 2012で見えてきたマイクロソフトの方向性について、ワタクシなりに検証してみたいと思います。

マイクロソフトは製品を、パートナーはソリューションを

 マイクロソフトにとってWPCは非常に重要なイベントです。会計年度がスタートする7月初旬にパートナー向けに開かれるこのイベントでは、スティーブ・バルマーCEOはじめ、同社のトップが次々に登壇し、新しい年度の戦略が提示されます。今回のWPCではWindows 8のリリース時期をはじめ、重要な発表がいくつかなされており、我々メディアの人間にとってもネタが満載のカンファレンスでした。

 なぜ一般向けでなく、パートナー向けのイベントで重要な戦略を発表するのか。それはマイクロソフトが売上の95%以上をパートナービジネスに依存しているという事実に大きく起因します。そして近年、「マイクロソフトはプラットフォームを提供する、パートナーがそれをカスタマイズしてソリューションとして提供する」という傾向がますます強くなってきています。つまり、パートナーが顧客に向けて提供するソリューションに必要な商材を、まず年度のはじめにパートナーに見せる。パートナーは新しく並んだ商材をどう扱い、どんなソリューションに仕上げて顧客のもとに届けるのかを考えることになります。つまりパートナーの腕次第で、ソリューションは魅力的になるか、はたまた見向きもされない代物になるか決まってしまうわけです。

 少し前まではパートナーにここまで独自性は求められませんでした。マイクロソフトが提供する製品をとくにアレンジすることなく、インストールベースを単に増やすことだけに集中してても売れる時代もありました。しかしいまは違います。顧客のニーズや時代の流れを把握し、自社の強みを活かしたソリューションに仕上げなければ、マイクロソフトのパートナーとしてビジネスを展開することは非常に難しくなっています。

 今回のWPCの目玉のひとつの発表に「Office 365 Open」がありました。提供開始から約1年が経過したクラウドサービス(SaaS)のOffice 365ですが、これまでマイクロソフトはこのOffice 365についてはパートナーに対し、手数料モデル(アドバイザリモデル)での提供しか認めていませんでした。つまり顧客と直接契約を結ぶのはマイクロソフトであり、パートナーではありません。これは売上を立てたいパートナーにとってはかなりつらいところです。Office 365 Openはこうしたパートナーの声を受け、パートナーが顧客に対して直接Office 365を販売できる仕入れモデルを採用したオープンプログラムです。パートナーはOffice 365に独自のサービスを付加し、自由に価格を設定することが可能になります。つまりパートナーの独自性が反映された"Office 365ソリューション"が提供される下地が整ったといえます。

 「Office 365 Openによってパートナーの利益率はかなり上がると思います。いまはコテコテのSIよりも、すでにあるサービスや製品をうまく組み合わせて独自性を出していく時代。Office 365はそうしたニーズに最適の製品。オープンプログラムの投入で、クラウドに消極的だったパートナーもモチベーションが上がるのではないでしょうか」

 こう答えてくれたのはWPC 2012に参加したソフトバンク・テクノロジー クラウドソリューション事業部 エンタープライズ営業統括部 第3営業部 部長 興梠陽介氏です。ソフトバンク・テクノロジーは、すでにOffice 365のセキュリティを端末制御やシングルサインオンで担保する「Online Service Gate」という企業向けサービスを提供していますが、「Office 365 Openがスタートすれば、パートナーがリーチできる顧客層は大きく拡がるはず。パートナー重視の良いプログラムだと思います」と今回の発表を評価しています

 いまはがっちり作りこむインテグレーションは流行らない - 興梠氏の言葉にも表れているとおり、商売として大きかったオンプレミスでのシステム構築よりも、顧客の目は確実にクラウドに向かっているようです。「IT資産をもちたくない、ハードウェアやメンテナンス要員に割くコストを別のビジネス割り当てたい、などのニーズが高まり、世の中のクラウドに対する違和感がほとんどなくなってきた。とくにOffice 365が登場してからはその傾向が強くなってきていることを日々実感します。クラウドをネガティブに捉える向きは未だ存在するものの、それを打ち消す勢いで伸びているのがすごい」とソフトバンク・テクノロジー クラウドソリューション事業部 ソリューション技術統括部 第3営業部 部長 淡海功二氏は現状を分析します。「クラウドはオンプレミスの構築に比べて売上の数字が小さくなりがちで、エンタープライズになればなるほどクラウドに対して弱腰のパートナーは多い。ですが時代は確実にシフトしており、我々パートナーもマイクロソフトの動きを含め、時代のニーズをきちんと見極める必要があります」(淡海氏)

興梠さん(左)と淡海さん
興梠さん(左)と淡海さん

 クラウドを単なるユーザ数×単価のビジネスとして見るパートナーが成功していくことは難しくなってきている - もしかしたらOffice 365 Openはパートナーの実力をオープンにするプログラムになるのかもしれません。

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開発のトレンドはアグリゲーション - 10年食える技術なんていまはない!

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この記事の著者

五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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