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DBオンライン的ロンドンオリンピック評―過去最高メダル獲得数を支えた、さまざまなデータ活用

2012/08/21 00:00

熱い戦いを繰り広げた、ロンドンオリンピックが終わってしまった。日本のメダル獲得数は38個、金メダルこそ少なかったものの過去最高だったらしい。そんな中、日本のお家芸と呼ばれる柔道は、なんとも見ていてやるせなくなった競技の1つ。柔道はJUDOであって、もはやまったく別物になってしまったんだなと。さて、DBオンライン的ロンドンオリンピック評として、日本チームのさまざまなデータ活用について振り返ってみよう。

フェンシングチームが使っていたのはインフォテリアのHandbook

 さまざまな競技で期待に応えられた選手もいれば、実力を出し切れなかった選手もいたことだろう。今回のオリンピックでよかったなと思ったことの1つが、これまで日本ではあまり注目されてこなかった(メダルを期待されていなかった)競技で、メダルがたくさん取れたことだ。このことで、日本におけるスポーツの幅の広がりを感じたし、日本人ってなんだか器用にどんな競技でも力を発揮できるんだなぁと思った次第。

 この幅広い競技でメダルが取れた背景には、「味の素ナショナルトレーニングセンター」の活用があるようだ。これは、2000年9月に文部大臣告示として策定された「スポーツ振興基本計画」を受けて設置された、日本のトップレベル競技者用のトレーニング施設だ。味の素が命名権を持っており、オリンピック競技に出場するようなレベルの選手やコーチ、スタッフが、専用で利用しているとのこと。オリンピックに向けて、この施設を活用してきた競技が、今回のオリンピックではいくつかメダルを獲得している。

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 もちろん、たんに専用の練習施設や合宿所を提供しただけではない。国立スポーツ科学センターが併設しており、医療や科学などの面から競技を全面的にサポートする体制があったのだ。この国立スポーツ科学センターでは、インフォテリアが提供するコンテンツ作成・配信・閲覧サービス「Handbook」を採用している。

 Handbookは、ドキュメントやファイルなどのさまざまな情報を、iPadやiPhone、Android搭載タブレットやスマートフォンに配信し共有できるサービスだ。これを使って選手とコーチ間などで、効率的な情報共有が行われたらしい。たとえば、団体で銀メダルを獲得したフェンシングナショナルチームは、Handbookに相手選手の試合や選手自身のトレーニング動画を約300件保存、その動画を用い試合での得失点・攻撃/防御の回数を数値化して戦略を立案し活用していたとのこと。このようなデータ活用が、メダル獲得に少なからず貢献したのだろう。

女子バレーチームは「Data Volley」でデータ分析

 そして、iPadの活用で有名なのが女子バレーボール。代表監督の真鍋政義氏が、試合中にiPadを手にして何らか情報を確認している姿は、テレビ中継などでもよく目にした。ちょっと調べてみたら、このバレーボールでのデータ活用には、バレーボール分析ソフトウェアの「Data Volley」が使われていたらしい。このソフトウェア、バレーボール界ではシェアも高く、トップレベルチームから大学、一般チームに至るまで、強豪チームは軒並み採用している有名なソフトウェアらしい。

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 Data Volleyはすでに10年以上の実績があり、2003年からは日本語版も提供されているとのこと。収集したデータの統計分析やビデオ分析が行え、たとえばスパイクやサーブのコースを選手別や、ローテーション別、また状況別に分析できるらしい。このソフトウェアでの分析結果が、監督の手にするiPadに表示されていたというわけだ。

 報道などを見ると、たんにこのソフトウェア導入し利用すればいいというわけではなさそうだ。まずは、的確にそしてタイムリーに詳細なデータが取得できなければならない。ここの部分は、ソフトウェアが自動的にデータ収集をしてくれるわけではなく、専門のアナリストが試合を見ながら瞬時にかつ正確にデータをソフトウェアに入力する必要がある。まずは、この専門アナリストの力が重要となるわけだ。

 そして、分析した結果を、即座に戦略に反映させ、それを実践しなければならない。分析結果を見て、過去を振り返っていても仕方がない。次に何をするべきなのか、それはどう実践すればいいのか。ここは、戦略を柔軟に考える監督やコーチの力量であり、当然、選手たちがその新たな戦略に応えられるスキルを持っていなければならない。

 この一連のデータ活用は、流行のビッグデータの活用とまさに同様だ。タイムリーかつ詳細にデータを集め、それを迅速に分析して新たな施策を考える。そして、当然ながら、その施策を実施できる柔軟な組織を作り上げなければならない。データやソフトウェアはあくまでも新たな施策のための材料だ。それを活かす体制があって始めて、収集したデータや分析の結果が有効になる。

 スポーツの世界で勝利をつかむためには、今後さらにデータ活用が重要となっていくのだろう。とはいえ、結局は選手そのものスキルや精神力が、最後はものを言う世界だ。フェンシングのメダルをかけた試合での、残り1秒の攻防などを見ていると、まさに勝つという気持ちこそが人を感動させてくれる結果を生んでくれるのだなぁと思うところだ。

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著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにし...

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