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Oracleのクラウドビジネス成功の鍵はカリスマ ラリーの「次なる存在」か


Oracle CEOのラリー・エリソン氏が、Oracle OpenWorldのキーノートセッションを土壇場でキャンセルした件で、日本でライブキャストを待ち構えていた五味さんがだいぶお怒りモードだった。では、サンフランシスコ現地はどうだったのか。雰囲気的には「お怒り」とまでいかなかったが、「やられた」「残念」という空気が蔓延。日本からの取材陣の、以降の取材、執筆モチベーションが大きくダウンした感は否めない。

ラリーのキャンセルよりも後継者問題が気になった

ラリーの後継者問題が気になる
ラリーの後継者問題が気になる

 このキャンセルをきっかけに、五味さんはガートナーのマジック・クアドラントを引き合いにOracleのクラウドビジネスへの態度に不信感を示していた。まあ、あのマジック・クアドラントはInfrastructure as a Serviceを対象にしたものだ。2012年にOracleはIaaS参入を高らかに発表したが、サービスインは今回のOracle OpenWorldのタイミング(Web上ではいまだ”PREVIEW”となっている)。正式に始めていないので、あそこに登場していなくても致し方がないか。来年度以降、どうポジショニングされてくるかに注目したいところだ。

 Oracleの「業界唯一のComprehensive Cloudだ」という主張については、Oracle OpenWorldのセッションを現地でいくつか聴いた身としては、SaaS、PaaS、IaaS、そしてプライベートクラウド、オンプレミスに至るまでを、同じアーキテクチャ基盤で包括的に提供している唯一のベンダーだと言いたいのだと理解。OracleのSaaSやPaaSを利用しているユーザーがIaaSを使いたいときに、Amazon EC2やWindows Azureしか選択肢がないのはちょっと困る。もちろんこれらのサービスとはオープンスタンダードなインターフェイスで連携できるが、より密接に連携させて使いたければ、同じサービス基盤上にIaaSも用意すべきということだ。

 Oracleだけでなく、多くのベンダーがオープンスタンダードが重要だと言う。もちろんそうだろう。とはいえ、オープンスタンダードな口は持っていても、なるべく1つのベンダーで囲い込んだほうが管理、運用は効率的になるのも事実。複数ベンダーの製品やサービスでシステム・インテグレーションをするより、アプライアンスやOracleのエンジニアードシステムが指示されているのも、それを裏付ける。OracleがIaaSを提供するのは、彼らは選択肢の提供と言う。しかし裏を返せば、IaaSもOracle Redに染めてねと言うわけだ。

 Amazon EC2は、IaaSでは圧倒的なシェアを確保している。とはいえ、CRMやERPなどのSaaSは提供していない。先日も記事で取りあげたDynamoDBや、RedshiftなどのPaaSというかDBaaS的なサービスも、まだまだ始まったばかり。今後、企業はIaaSだけでなくSaaSやPaaSを組み合わせ、ITシステムの多くを徐々にクラウド化していく。それに対し、Amazon Web Servicesは今後どのようなサービスラインナップを揃えるのか。その際には、クラウドサービスベンダー勢力地図がいったいどうなるのか。

 Amazon Web Servicesが、主要プレイヤーであることは疑いない。その他のプレイヤーは、今後は買収の動きも活発化するだろうから予測しにくい。Microsoft、IBM、Oracleなど、体力あるプレイヤーが業界をかき回すことだけは確かだろう。

 ところで個人的には、今回のドタキャンよりも、ラリーの後継者問題のほうが気になった。今回の件でラリーの穴を補える人材が、いまのOracleにはいないことが露呈した。多くの人が席を立った事実からも、技術的に十分な知識もバックグラウンドもあるトーマス・クリアン氏では、明らかに役不足だった。HPでCEOを務めてきたマーク・ハード氏でも、おそらくラリーの代役は無理だっただろう。

 彼は極めて強烈なインパクトとカリスマ性を持ったCEOであり、そのラリーの強い意志で牽引されているのがOracleという会社だ。とはいえ、そのラリーも69歳。いつまでも強い意志を持ち続けられるだろうか。その現れの1つが、今回のAmerica's Cupへの浮気というか思い入れかもしれない。ラリーがいなくても、しっかりとOracleのメッセージが伝わる。そんな体制の構築が、急がれるところだ。

 とはいえこの問題は、先日CEOの交代を発表したMicrosoftのスティーブ・バルマー氏の後継も同様だろう。Appleのスティーブ・ジョブズ後もしかり、極めて強いCEOの次なる体制の難しさだ。Oracleがクラウドで確たるポジションを獲得するかどうかも、次なる体制がどのようなリーダーシップ、カリスマ性を示せるかにかかっているのかもしれない。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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