SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

週刊DBオンライン 谷川耕一

ハードウェアの競合はAWSのクラウドサービス/青梅魂が生み出す東芝ノートPCの優位性


 今週はハードウェアの話題を2つ。まずは、日本ヒューレット・パッカードの2014年度サーバー戦略。HPはここのところ、あまりビジネスが順調とは言えなかった。「2013年は、いろいろな面でチャレンジの年でした。確実にHPの経営変革は進んでいます。キャッシュフロー、資金面での改善がなされ、2014年以降は事業を拡大していきます」と自己分析するのは、日本ヒューレット・パッカード HPサーバー事業統括本部 事業統括本部長の手島主悦氏だ。

HPのサーバー戦略は原点回帰でR&Dに投資するところから

日本ヒューレット・パッカード HPサーバー事業統括本部 事業統括本部長 手島主悦氏
日本ヒューレット・パッカード
HPサーバー事業統括本部
事業統括本部長
手島主悦氏

 2014年からはHPの復活の年であり、そんな中で同社はモビリティー、クラウド、ソーシャル、ビッグデータという4つのメガトレンドに対応していく。これら4つのメガトレンドに対応するために、これまでは企業買収などで新たなテクノロジーを手に入れてきた。その結果が良いものもあれば、あまり芽が出ず活性化していないものもある。

 M&Aをやめるわけではないが、今後はどうしていくのか。

「コアテクノロジーの変革、R&Dに対する投資を最大化していきます」(手島氏)

 これは、テクノロジーベンダーとしての原点回帰でもあり、研究開発を行い自らコアテクノロジーを生み出す意思表示でもある。中でもコア事業となるのが、サーバー。この領域でどうリーダーシップをとっていくかが、今後の課題となる。

 「テクノロジーの進化なくして、サービスの進化はありません。技術がなければ、新しいトレンドには対応できません。HPはR&Dに回帰し、サーバープラットフォームを再定義していくベンダーになります」(手島氏)

 さて、その再定義したサーバープラットフォーム戦略の1つが、昨年発表された「Project Moonshot」。カートリッジ型の「かなり小さなサーバー」を高密度に搭載し、新たなハイパースケールサーバーを提供している。今回は新版となるリモートデスクトップ環境を構築するHP ProLiant m700と、動的Webのワークロードに対応するHP ProLiant m300の2機種を発表した。

 m700は、1つのカートリッジに独立した4ノードを実装し、4.3Uの専用シャーシに45カートリッジで合計180ノード実装できる。これを用いHDI(Hosted Desktop Infrastructure)を実現する。HDIはVDI(Virtual Desktop Infrastructure)のように仮想化技術を使うのではなく、リモートデスクトップに物理的に1ノードを割り当てる。これにより、隣の人が重たい処理となる動画を扱っていても、自分のリモートデスクトップには影響のない環境が手に入る。

 m300は、CPUにインテルAtomプロセッサを搭載したサーバーカートリッジだ。最新のCPUとなり、CPU性能は既存製品に比べ最大で7倍となる。モバイル端末向けのAtomを利用することで極めて高密度化し、スペースも発熱量も劇的に小さくしたMoonshotだが、2013年に提供を開始した初期モデルはさすがにサーバーとしては非力だった。なので、顧客からもう少しパワーのあるモデルが欲しいとの声があり、m300はそういった要望に応えるものだ。

 これらMoonshot Systemは、単なる「高密度なサーバー」ではない。高密度の汎用サーバーであるブレードサーバーとは異なり、リモートデスクトップや動的Webのワークロードのように、特定ワークロードの処理に特化したハードウェアであることが最大の特長だ。リモートデスクトップならばそれに必要なメモリー、動的Webであれば必要なネットワークリソースなど、それぞれの目的に最適化されたハードウェアを設計となっている。ソフトウェアをあらかじめ搭載してはいないが、利用目的が明確化している点ではアプライアンス的な製品と言えるかもしれない。

 ところでこのMoonshotの競合は、どんな製品だろうか。他社ブレードサーバーなのか。じつは発表会でも関連質問が出ていたが、競合としてはAmazon WorkSpacesが挙げられる。ユーザー企業はいまや、積極的にハードウェアを選択していない。欲しいのは高密度なサーバーではなく、リモートデスクトップ環境。そうなったときにMoonshotを選ぶのか、クラウドのリモートデスクトップ・サービスであるAmazon WorkSpacesを選ぶのか。対ブレードサーバーであれば、高密度の度合いや消費電力量の少なさなど比較しやすい。しかし、相手がクラウドサービスとなると、同じ土俵で比較するのは難しい。

 こう考えるようになると、ハードウェアビジネスはかなり難しい時代になった。より高性能で効率的なサーバーに明らかに優位性があった時代から、サービスを実現するために最適な方法は何か、そのために必要なインフラはどんなものかを考える時代に。ベンダーは、サーバーを売るために全く新しい活用シナリオを提案する必要がありそうだ。

次のページ
BIOSまで自社開発するが故の明らかな優位性がある

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
週刊DBオンライン 谷川耕一連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/5522 2014/01/15 13:55

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング