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週刊DBオンライン 谷川耕一

Oracleが入ってきてクラウド市場は面白くなってきた

 先週はOracle OpenWorld 2014の取材でサンフランシスコに行っていた。今年の注目ポイントは、CEOの座を降りCTOとなったラリー・エリソン氏からどんな発言が飛び出すのか。思っていた以上に強調されていたのは「クラウド」。それも「クラウドでNo1を目指す」というものだった。数年前にOracleは、パブリックもやるけれどクラウドはどちらかといえばイネーブラーに徹するという方針だった。それがSaaS、PaaS、IaaSと3つのラインナップを揃え、どれも本格的に市場展開すると言う。これは、大きな変化であろう。

クラウドNo1のメッセージは日本発

 そもそも「クラウドと言えばOracleになる」と公に宣言したのは、日本オラクルの代表執行役社長 兼 CEOの杉原博茂氏だ。彼の社長就任時の日本オラクルの指針として、2020年までにこれを達成したいと表明した。米国本社からこの発言をすることが認められているとはいえ、その時点ではこれがOracle全体の方針ではなかった。それが今回のOracle OpenWorldでは、エリソン氏からも新CEOのマーク・ハード氏からも「No1 In The Cloud」と言うメッセージが発せられた。こうしてOracleは、クラウドでNo1を目指すことになったのだ。

「クラウドと言えばOracleになる」と公に宣言した杉原氏
「クラウドと言えばOracleになる」と公に宣言した杉原氏

 ところで、クラウドでNo1といってもいろいろな尺度が考えられる。Oracleが目指す1つのターゲットはクラウド関連の売り上げ数字だと言うのは、SVPでチーフ・コミュニケーション・オフィサーのボブ・エバンス氏だ。

ボブ・エバンス氏
ボブ・エバンス氏

 「OracleはすでにSaaSのサービス数ではNo1です。売り上げ規模はセールスフォース・ドットコムに比べるとまだおよびませんがやがては追いつきます。OracleがクラウドでNo1になるのがいつか、日付は約束していません。とはいえ、いまOracleではクラウドの収益を上げるところに会社のリソース集中しています。プラットフォーム部分のデータベースもJavaも、Oracleは世界1のものを持っています。この2つの組合せは、プラットフォームのサービスでトップに立てるものでしょう。インフラについては、Oracleは高いハードウェアの技術を持っており、これは結果的にコンピュータリソースの費用を下げることにつながります」(エバンス氏)

 杉原氏は、クラウドについてはすでにテクノロジースタックは揃っているので、あとはやり方だと言う。クラウドについては他のベンダーはどちらかといえば広く浅くのビジネス展開している。Oracleはそれとは逆で、クラウドでも「顧客に深く入ります」と杉原氏。たとえば、クラウドの活用で顧客のグローバル展開をいかに支援するのか、そういったアプローチをしていくのだと。この深く顧客に入るときに鍵となるのが、今回力を入れてアピールしていた「Database as a Service」や「Java as a Service」で構成されるPaaSの部分だ。

目立っていることとイケテルことは違う

 杉原氏は、今回のOpenWorldで語られていたことはそのまま日本でやりたいと言う。しかし、そのままではうまく行かないものもあり、当然日本用にモディファイしなければならない。特に、米国などと事情が異なるパートナーとのビジネス部分はモディファイが必要だろう。「パートナーとはコ・セーリングでやります。SIerと一緒に顧客に入るようにします」と杉原氏。

 SIerにとって、クラウドはいま脅威になっているとも杉原氏は言う。目先の売り上げを見ればAmazon Web Servicesやセールスフォース・ドットコムに関わったほうがビジネス数字は上げやすいかもしれない。

 「しかし3年、5年とそれで本当にSIerは生計を立てられるのか。Oracleとしては、次世代のクラウドビジネスをやります。それをパートナーと協業しながら変革していきます。そのための会話はパートナーとすでに始めています。認知度が高いことと実際のビジネスがイケテルのとは違います。それは見極めないとなりません。いまは技術の会社ではないところでクラウドが活況を呈しています。多くのベンダーが、既存技術の上でクラウドをやっているにすぎません」(杉原氏)

 ミッションクリティカルなクラウドがOracleの本業であり、Oracleは技術の会社である、というわけである。

 とはいえ、当面のライバルはAmazon Web ServicesでありGoogleのような会社であるとも言う。クラウドのビジネスの世界を彼らが牽引していることは認めた上で、後発のOracleはどうするのか。ちなみに、IBMはミッションクリティカルなクラウドというよりは、コンサルティングというイメージがまだあるというのが杉原氏の見解だ。なので、OracleとIBMでは目指しているクラウドはちょっと違うのではとのことだ。

 「Oracleが入ってきて、クラウドの市場は面白くなってきたのではないでしょうか」(杉原氏)

 Oracleはクラウドで本当にNo1になれるのかはまだまだ不透明な部分もある。とはいえ、ブーム的に始まったクラウドの世界が一段落し、いよいよ真のビジネスとして本格化する第2世代に突入した感はある。第2世代のクラウドでは、プレイヤーの交代もあるかもしれない。ラリー・エリソン氏もすでに70歳。CTOとして技術面に注力できるようになりむしろ元気を取り戻したようにも見える。しかし、No1になるまでにあと10年はかけられない。3年、5年で何らかの結果を出すことが求められるだろう。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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