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IoT時代にデータベースはここまで進化する!

edited by DB Online   2015/03/09 06:00

 IT業界において次なるキーワードとなりつつあるのが「IoT(Internet of Things)」だ。このIoT、クラウドやビッグデータに比べると、システムとしての本格的な展開はかなり速いかもしれない。と言うのも、IoTの実現に必要なクラウドやビッグデータといった基盤技術がすでに定着しているから。さらにモバイル端末の普及や各種センサー活用なども、この言葉が出てくる以前からすでに実践されている。

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IoTの本質はデータを集める技術ではなく集めたものを活用すること

 センサーデータ活用が進んでいるのは製造業だろう。温度や圧力など各種センサーが製造ラインには設置され、さまざまなデータを収集している。何らかの異常値をセンサーから検知すれば、アラートが発信され自動でラインを制御する仕組みもある。さらに航空機エンジンや自動車などの製品にもいまや多様なセンサーが搭載されており、得られるデータを用い故障診断などが始まっている。

 そんな中、温度センサー技術でかなり興味深い技術を発表しているのが富士通だ。2012年6月に発表した「光ファイバー超多点温度センシング技術」がそれだ。通常の温度センサーは1つで1カ所の温度を計測する。これが光ファイバーを使えば、ファイバー線のどこででも温度を計測できる。つまり、データセンターなどに光ファイバーを張り巡らせれば、ファイバーの通っているところを点ではなく線で温度計測できるのだ。

 この技術を使うことで、データセンター内の隅々に至るまで、温度分布を詳細に把握可能だ。従来の点での温度計測では、閾値を設定しセンサーを監視するのが普通だ。閾値を超えたセンサーを検知し、付近の空調をコントロールする。この閾値ベースのコントロールでも、それなりに安定した空調管理が可能だろう。しかし温度調整の最適化では限界もある。

 実際のデータセンター内部は温度分布が均質ではない。サーバー密度が高いところは周囲より温度が高く、逆に稼働が少なければ温度は低くなる。1つのセンサーが異常を示しただけでは、データセンター内に重大な異常が発生しそれがどのような状況になっているかを把握するのは難しい。

 光ファイバーのセンサーならば、単一のセンサーよりも温度分布の状況はより細かく計測できる。「温度分布状況の今までにない変化があれば、それが異常の兆候です」と言うのは富士通 ミドルウェア事業本部 データマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長の安永尚稔氏だ。たとえば温度分布が前日までとかなり違うなど、大きな変化が発生することが問題なのだ。その変化を捉えるには、より多くのセンサーデータを集めて蓄積し、統計学手法などを用いビッグデータ分析を行うことになる。

富士通 ミドルウェア事業本部 データマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長の安永尚稔氏
富士通 ミドルウェア事業本部
データマネジメント・ミドルウェア事業部
事業部長 安永尚稔氏

 データセンター内のある場所にサーバーが追加設置されたために、温度分布が大きく変化することもある。とはいえ、それは管理者側で把握している温度の変化であり異常ではない。こういった問題のない変化は、すでにデータを分析した結果にフィードバックする。それで判断基準を更新する。こうすることで、さらに正確な人の判断が可能となり、空調制御の最適化へとつながる。

 単にセンサーデータから得られるデータを閾値で判断し、機器をオン/オフする程度ではIoTと呼ぶにふさわしくないだろう。より多くのセンサーデータをクラウド技術などで集め、迅速にビッグデータ分析して判断できるようにする。結果を現場アクションへと反映し、さらにデータを集めて解析する。この一連のデータの流れがPDCAサイクルの形で完成してこそ、真の意味でのIoTの実践だと安永氏は指摘する。

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データを活用し人が介在したPDCAサイクルを効率的に回す仕組み

 流通業においても、IoTの実践は始まりつつある。たとえば小売店舗などへの顧客の来店状況はスマートフォンなどのモバイル端末を利用すればリアルタイムに把握できる。さらに、商品や陳列棚にセンサーやICタグを付けることで、どの商品をどのようなタイミングで顧客が手にしたかも分かる。また、ECサイトならば、サイト上のどの商品に検索要求が集まっているか、モバイル端末の画面ではどの表示を拡大して見ているのかなどの細かなデータもいまや簡単に収集できる。

 つまり、モバイル端末やセンサーなどを用いると、あらゆるところで顧客と企業がつながる。そして、顧客と企業の接点では、関係性を表すさまざまなデータをリアルタイムに収集できる。この顧客との関係性というビッグデータを利用し、マーケティングオートメーションやデジタルマーケティングと呼ばれる新たなマーケティング手法が実践されつつある。

 「いまや、データを用いてテストマーケティングを行わないと、流通業などでは競争に勝てません」と安永氏。テストマーケティングを行い、その結果を反映させたECサイトの画面を作る。さらには個人向けにカスタマイズしたダイレクトメールを送付するなど、新たなマーケティング・アクションを実践する。実践したアクションからさらにデータを収集し、それを再びフィードバックとして新たなアクションへ。

 テストマーケティングでターゲットをプロセス化(PPT1枚目)
テストマーケティングでターゲットをプロセス化

 アクションが上手くいったかどうかは、基本的にマーケターなどの「人」が判断する。このように今注目のマーケティングオートメーションの世界では、大量データを活用し判断の際には人が介在しながらデジタル技術を駆使してPDCAサイクルを回すことになる。このPDCAサイクルを回すことこそがIoTの本質。前出の製造業のセンサー活用やデータセンターの空調制御なども、実はこの人が介在するPDCAサイクルを回すという面では同様なものだと安永氏は言う。

ビッグデータの処理で注目を集める機械学習技術

 センサーなどでビッグデータを集め、それを迅速に分析しより賢い判断を行う。ここで最近注目されているのが機械学習だ。これは、機械学習用ロジックを用いて大量データを自動学習させる。学習結果のモデルを使って、課題に対するもっとも適切な答えを自動で見つけ出すのだ。

 現状の機械学習は、大量データを学習することでその中からもっとも確からしい答えを迅速に探し出す技術だ。これを利用することで、人の自然言語での問い合わにもある程度機械が自動でやり取りできるようになる。富士通の中でも社内においてシステムトラブルなどのインシデント情報を収集し、機械学習を行い自動でサポートすることにも取り組んでいるとのこと。

 「現状の機械学習は、機械が考えて答えを出しているわけではありません。大量に学習した中から最適なものを見つけ出してくるものです。富士通ではさらに柔軟に、機械が人間の問い合わせに答えられるようにする取り組も行っています」(安永氏)

 これは学習した結果から、最適な答えを機械自身が生み出すというもの。現状の機械学習のさらに先にある世界とも言え、より完成度の高い人工知能の実現を目指すものとも言える。

新たなデータ活用を実現するためにデータベースはさらなる進化をする

 クラウド、ビッグデータ、IoT技術を活用した人が介在するPDCAサイクルを効率的に回すこと。また、機械学習技術を活用する考えるコンピュータ。これらを実現するために必ず必要になるのが、大量のデータを迅速に処理できるデータベースだ。とはいえ、ここで必要になるデータベースは、従来のSQLデータベースが単に大容量データに対応し、それを高速に処理できればそれでいいというものではない。

 「自然言語的なデータも大量に扱うことになるので、JSONやXMLといった新しいデータ形式にも柔軟に対応できる必要があるでしょう。さらに、検索方法についてもまったく新しいものが必要です。たとえば、地図上のこのあたりにあるものは何か、温度分布の中から似たような変化パターンを探し出したいといったような曖昧な検索がしたい。つまり、新たな直感的な検索方法も必要になります」(安永氏)

 この多様で柔軟なデータの扱いや直感的な分析を実現する検索手法の実現は、従来のSQLベースのデータベースだけでは難しい。「たとえば将来的には、人間が普段扱う自然言語のようなテキストデータに意味づけし分析できるようにする必要があります」と安永氏。そのために必要となるような機能を、自社のデータベースであるSymfoware Serverにも入れていく。また、すでにリアルタイムな情報活用を可能にするための、新たなプラットフォーム「FUJITSU Integrated System Analytics Ready AX1」の提供も開始している。「今後はさらにデータベースの適用を大きく広げていかなければなりません。そのためのデータベースの拡張に富士通は取り組んでいきます」と安永氏は言う。

 FUJITSU Integrated System Analytics Ready AX1(PPT2枚目)
FUJITSU Integrated System Analytics Ready AX1

 クラウド、ビッグデータ、IoT技術を利用したデータ活用の世界、さらには機械学習など新しいデータ活用に富士通がどのように取り組んでいるのか。2015年3月13日に開催するDB Online Dayでは、新しいデータ活用を実現するには何に注目し、どのようなソリューションを考えれば良いのか。そのために具体的に今データベースにはどのような変化が訪れており、それによりデータ活用の世界がどう進化しているかを安永氏に語ってもらう予定だ。

著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジ...

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