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個人の価値観やニーズにあったマーケティングサービスを実現―大日本印刷が構築したビッグデータ分析基盤

 大日本印刷(DNP)では、ライフスタイルや購買行動などの情報から、個々の生活者の価値観を判別し、顧客それぞれのニーズに適応した製品やサービスの開発、効果的なマーケティング活動に活用する「価値観マーケティング」のサービスを展開し、顧客企業の収益向上と競争力強化を支援している。DNPに蓄積されているさまざまな生活者情報は、50テラバイト規模に手が届く量にまで増加しており、この膨大なデータを活用するためには、構造化データと非構造化データの両方を高速に抽出し分析、加工する必要があった。そこで同社が採用した分析基盤とは? またその選定の理由は何か。DNPの担当者に、導入プロジェクトの経緯や概要、採用の効果やビジネスの可能性などについて話を聞いた。

生活者の情報を収集し、個人の価値観、ニーズに合わせたマーケティングを展開

 日本を代表する印刷会社の大日本印刷(DNP)。同社の印刷事業は、出版印刷や商業印刷、ICカードや写真用の材料などを提供する「情報コミュニケーション部門」、食品パッケージやペットボトル用無菌充填システム、木目等を印刷した各種建築材料などを提供する「生活・産業部門」、半導体製造用のフォトマスク、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターや光学フィルムなどを提供する「エレクトロニクス部門」の3つに分かれている。

 また、生活者の視点とソーシャルな視点に立った新しいサービス開発にも注力。紙と電子の両方の書籍を取り扱うハイブリッド型総合書店「honto」や、インターネットでの商品購入やアンケート回答等でポイントが貯まる「エルネ」などの「生活者向けサービス」を展開しており、企業だけでなく生活者や社会の課題を解決する製品、サービスの開発にも注力している。

DNPは、紙と電子の両方の書籍を取り扱うハイブリッド型総合書店「honto」や、インターネットでの商品購入やアンケート回答等でポイントが貯まる「エルネ」などの「生活者向けサービス」を数多く展開している。

 また、DNPは「未来のあたりまえをつくる。」ため、研究開発にも力を入れており、それぞれの部門において5年から10年先の市場を見据えた製品、サービスの開発に取り組んでいる。

 「我々が所属するABセンター第2本部生活者情報ビジネス開発ユニットでは、デジタルマーケティング技術を用い、生活者情報の活用によって新しい価値を提供するサービス開発を行っています」と、同ユニット マーケティングビジネス開発室 室長の島崎 勤氏は説明する。

大日本印刷株式会社 ABセンター 第2本部 生活情報ビジネス開発ユニット マーケティングビジネス開発室 室長 島崎 勤氏

大日本印刷株式会社 ABセンター 第2本部 生活者情報ビジネス開発ユニット
マーケティングビジネス開発室 室長 島崎 勤氏

 DNPはこれまで、さまざまなマーケティング情報を収集し、それをBtoB領域で活用してきたが、あまり生活者個人の状況は見ていなかった。そこでデジタルマーケティングの手法を用いて収集した生活者のビッグデータを分析することで生活者を知り、生活者が求めている最適な製品やサービスを顧客企業に提案していると島崎氏は説明する。

 そのような取り組みの1つが「価値観マーケティング」だ。「生活者は一人ひとりが違った価値観を持っており、その人たちの好みや感性も捉えた上で、それぞれのニーズに合ったサービスを提供することで、より高い付加価値を伴ったサービスを提供できる」と島崎氏。価値観マーケティングでは、集めた生活者のデータをベースに顧客の価値観を判別し、価値観を軸に顧客をセグメント化して、価値観に応じた製品やサービスの提案を可能にしている。

 このDNPの価値観マーケティングで活用されるのが「価値観データベース」である。「インターネットを利用したポイントサービス『エルネ』を用いて、大勢の会員モニターに調査した結果をビッグデータとして蓄積しており、これは日本人全体を捉えられる、いわば縮図のようなデータベースとなっています」(島崎氏)。

 この価値観データベースのデータを分析し、ライフスタイル、感度、メディア、コミュニケーションに関する10の因子でクラスター分析を行い、5つのクラスターに生活者を分類した。さらにそれぞれのクラスターをいくつかの層に分け、合計21の応用セグメントに分類するロジックを導き出した。このロジックを使うことで、誰でも10設問34項目の価値観アンケートを行えば、対象となる生活者を21セグメントに分類でき、このセグメントから顧客プロファイルを理解することや対象となる業種、業態のスタイルにあわせた顧客の価値観を明らかにできるというのだ。

 「たとえば、価格を重視する価値観を持っている人に機能を前面に出したダイレクトメールは響きません。価値観に応じてダイレクトメールのデザインを行うと、実際に効果が違ってきます」(島崎氏)。

 そして、各価値観に分類される個人が、実際にどんな商品を購入しているかといった購買情報と紐付けて分析を行うことで、その商品が持つ「商品DNA」を定義することができると島崎氏は言う。これが商品の特徴を恣意的に捉えるものではなく、データから商品特性を導き出すDNPの価値観マーケティングの特長だ。「価値観がさまざまな商品やサービスを展開する際のハブになると思っています。個人の価値観と購買などの個人の行動をデータで結び付けることで、新たな商品価値が見えてきます」(島崎氏)。

 またDNPは、これらの価値観データベースのデータと、さまざまな情報を連携する取り組みもすでに始めている。食品の購買から調理、消費に至る食卓のマーケティング情報の「食MAP」、生鮮三品や惣菜を含めた食品流通業界の「商品標準化コード」である「i-code」、さらにはTwitter上の投稿データなどを価値観データベースと連携させることで、価値観のクラスターを分類する分析精度を向上させ、より顧客企業のマーケティング活動に貢献できるデータベースとしての整備を進めている。

ビッグデータ時代に求められるITインフラとは?
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新時代ITインフラの衝撃

冊子『新時代ITインフラの衝撃』(全32ページ、無料PDF、提供:日本IBM)では、そもそもビッグデータとは何なのか、企業はこれをどのように活用すればいいのか、またビッグデータ時代に向け様々な取り組みを開始しているIBMの戦略とはどのようなものかなど、IT業界に起きている変化とIBMの新たな取り組みを通して、ビッグデータ時代のITインフラに求められる要件について詳細に解説した内容です。

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柔軟で安定性のあるデータ分析環境を、Hadoop技術を採用し、構築

 DNPは価値観マーケティングを使ったサービス「カスタマーフォーカスマーケティング」を2012年から提供している。このサービスの裏側では、当然ながら膨大なデータ分析が行われる。そして、単にビッグデータ分析を行うだけでなく、さまざまな形で顧客企業に分析結果を提供する必要もある。このサービスだけでなく生活者に関わるデータをさらに収集してビジネスを展開するには、拡張性があり安定した高速データ分析基盤が必要だった。そのため、DNPでは新たなデータ分析基盤の構築を開始する。

 「データが増えていくので、クラウドを使う案もありました。けれども価値観マーケティングでは、個人に関わるデータも扱います。DNPには“個人情報は社内に持つ”という規定もあり、オンプレミスでデータ分析基盤を構築することにしました」と語るのは、ABセンター 第2本部 生活者情報ビジネス開発ユニット データマネジメント開発室 室長の村上晶子氏。さらに顧客のデータを預かって分析することもあるので、顧客ごとに確実に分離できるマルチテナント性の確保も重要だったという。

 DNPではもともと、データ分析ツールとして「IBM SPSS」を活用してきた。さらにSPSSでビッグデータを高速に分析するために「IBM PureData System for Analytics」とも組み合わせてきた。これらにより、まずは「蓄積してきた構造化データを中心としたデータを、分析者自らが、必要なビューで分析を行うことができる環境を整備しました」と村上氏。

大日本印刷株式会社 ABセンター 第2本部 生活者情報ビジネス開発ユニット データマネジメント開発室 室長 村上 晶子氏

大日本印刷株式会社 ABセンター 第2本部
生活者情報ビジネス開発ユニット  データマネジメント開発室 室長 
村上 晶子氏

 しかし、より高度な生活者情報分析のためには、これまでの構造化データのみではなく、SNSやモバイル端末から取り込まれる各種非構造化データと連携した分析や、さらなる柔軟な分析レポートに対するニーズが出てくると考えた。また、扱うデータ量も大幅に増加していくと予想されることなどを総合的に検討した結果、新たにHadoop環境の導入を決めたという。「これまで活用してきた分析ツールであるSPSSから透過的にHadoopのデータにアクセスできる環境を整えることで、分析者がこれまで培ってきたノウハウを活かしながら、より柔軟かつ高速な処理を実現できる、まさに求めている環境が構築できると考えました」と村上氏。

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“考える人”に負荷を与えないデータ分析プラットフォームの解: 「Power Systems」+「InfoSphere BigInsights」

 村上氏は、データ分析の業務では“考える人”が重要だと言う。考える人に負荷をかけず、柔軟で拡張性のあるデータ分析環境を実現する。これらの条件を満たし、柔軟で十分なデータ分析性能を発揮できるプラットフォームとして選ばれたのが、IBMの「Power Systems」とHadoopソリューションの「InfoSphere BigInsights」の組み合わせだった。

 「各種プラットフォームを比較、検討した結果、IBMのPower Systemsを基盤インフラとして採用しました。Power Systemsは、大容量データを高速処理できる性能を持っており、一般的なIAサーバーよりも少ない台数でもさらなる性能が得られると判断しました。また、マシン台数が少なければ、管理は確実に楽になりますし、今後はインメモリで高速にデータ処理をするSparkも出てくるので、Power SystemsのようにCPUパワーが大きいほうがいいとの期待もあります」(村上氏)。

 Hadoopと言えばIAサーバーを並べて構成するイメージがある。これは一見拡張性も高く安価に構築できそうに思えるが、台数が増えれば複雑化して運用管理の手間も大きくなる。トラブルが発生した際の問題の切り分けもかなり面倒だ。

 村上氏は、もう1つの採用ポイントとしてBigInsightsのSQLインターフェイス「BigSQL」の存在もあったと言う。BigSQLを使うことで、使い慣れたSQLでHadoopに高速にアクセスできる。これはかなり魅力的だったそうだ。結果的にSPSSとPureData System for Analyticsの環境から、BigInsightsに透過的なアクセスが可能となっている。

聞き手:DB Onlineチーフキュレーター 谷川耕一

聞き手:DB Onlineチーフキュレーター 谷川耕一

 「分析者からはこれまで通りSPSSとしてしか見えていません。裏で何が動いているかを気にしなくていいのです」(村上氏)。

 またDNPは、ストレージ製品のIBM Storwize V7000、V3700も合わせて導入している。ストレージ仮想化の技術を活用して高い拡張性と柔軟性を確保し、将来的なデータ増加にも柔軟に対処できる環境を手に入れた。ストレージも含めてトータルでIBM製品に統一したことで、ハードウェアとソフトウェアの親和性を含むトータルの価値が得られる上、管理性向上のメリットは大きいと村上氏は強調する。こういった管理性の向上も、考える人に負荷をかけずに安定したデータ分析基盤を提供することにつながる。

 今回のデータ分析基盤について島崎氏は「社内に閉じた環境ではなく、将来的には得意先にBIツールを使って“見える化”するビジネスも考えています。柔軟性、安定性、高速性すべてを兼ね揃えたデータ分析基盤があれば、さまざまな使い方が展開できると期待しています」と語る。

 最後に、今後IBMに期待することを伺ってみた。
 「IBMの次世代ITに対するビジョンは他社に先行している感があり、そのビジョンを確実に製品・ソリューションに反映しているIBMの姿勢を評価していますし、『未来のあたりまえ』をつくっていくDNPの取り組みとも、同じ方向性を持っていると感じています。ぜひビジネスのパートナーとして、今後もお付き合いをしていければ」(村上氏)。
 「データを活用し、さらに新しい価値を提供していきたい。そのために、他がやっていないようなことにもどんどんチャレンジしたい。IBMは世界で活躍している企業なので、協力して世界初の取り組みを一緒にできれば」(島崎氏)。

 製品提供だけでなく、ビジネスを一緒に進めるパートナーとしての存在もIBMには求められている。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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