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IFRSは恐れるに足らず~経理・財務の第一人者、金児昭氏がIFRSへの“提言” と“適用の心構え” を語る

  2010/02/12 07:00

IFRSへの注目度が高まり、「黒船」「衝撃」「脅威」といった言葉を並べて取り上げるメディアも増えている。果たしてIFRSは日本の企業にとって脅威なのか。信越化学工業に入社以来38年間、経理・財務一筋のスペシャリスト金児昭氏に、IFRSに対する氏の見解と、これから適用の準備に入る企業の心構えについて聞いてみた。(聞き手・河原 潤)

IFRSが世界的な大不況を作り出す危険性も

―最近のIFRSブームについて、どのようにお考えですか。

金児氏 グローバル会計をリードしていた米国が方向転換し、米国のFASBがIASBの考え方を取り入れるようになってから、IFRSが世界の潮流になったことはご存じのとおりです。でも、それはIFRSが「世界で最も優れている会計基準である」ということを意味しません。国際会計基準をIFRSに一本化していくという動きが不可避であるというだけです。

 日本で言えば、IFRSは、企業250万社のうち4千社、その子会社・関連会社も含めて10万社の問題です。そうなると残り240万社にとっては当面関係がありません。とはいえ、この4千社が社会的影響のある大企業ばかりなので、あたかも日本中がIFRSのことを必死になって勉強しなくてはいけないといったムードになっています。

 

―会計基準としてIFRSを見た場合、現状では、どのような問題点があるのでしょう。

金児氏 IFRSの内容のすべてがよくないとは言いません。たとえば、時価会計の考え方などは理にかなっています。ただし、減損会計については、私は一貫して否定的な見方をしています。今の経済環境の中で、「M&Aのれん」を償却せずに減損会計の対象とする、IFRSの「無償却・のれん減損」を全世界で適用したらどうなるかを想像してみてください。

 日本では20年以内に償却する決まりになっていますが、米国ではのれんは無償却です。欧米の大手IT企業などはそれをいいことに数多くのM&Aを重ねてきました。そうした大企業が同時期、一斉にのれんの減損をするわけです。これは実に恐ろしいことで、世界経済は2番底、3番底ではすまなくなります。どれだけ減損を厳密にやったとしても、さらなる大不況を作り出してしまう危険性が高いのです。

 もう1つ大きな問題が、ここにきてのIFRS自体の変化。IASBの方針が揺れていることを懸念しています。今はIFRSに歩み寄り政治力を発揮してきた米国も方針を変え始めていて、IASBとFASBが必ずしも協調できていませんし、フランスやドイツなど欧州においても、IFRSのブレに危機感を強めています。工事契約の会計を巡る方針変更は、IFRSのブレを如実に示すものです。IASBは長らく、IFRSは工事進行基準で行くべきだと打ち出していたのに、最近になって収益認識(売上とは)の見直しを持ちかけてきました。

 2009年6月に金融庁からIFRSアドプションの方針が発表されたので、日本の上場企業はIFRSを必ず適用しなくてはならないのですが、拠り所となるIFRS自体がいまだ変化しているわけです。解釈や対応に右往左往している間に、日本企業が長年培ってきた経営や会計の良さを見失ってしまったら禍根を残すことになります。

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著者プロフィール

  • 河原 潤(カワハラ ジュン)

    ITジャーナリスト 明治大学文学部卒業後、教育系出版社を経て、1997年にIDG入社。2000年10月から2003年9月までSun/Solarisの技術誌「月刊SunWorld」の編集長を務める。同年11月、企業コンピューティングの総合情報誌「月刊Computerworld」の創刊に携わり、同誌の編集長に就任。企業のITリーダーを対象とする月刊誌とWebの両メディアで、エンタープライズITの全領域を追いかける。2008年11月、「月刊CIO Magazine」の編集長に就任。CIOの役割と戦略策定、経営とITのかかわりをテーマに取材を重ねる。2009年10月にIDGを退社し、ITジャーナリストとして始動。

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