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日立製作所のシンクライアントソリューション 仮想化技術でシンクライアントは新たなステージへ

  2010/09/17 10:00

2009年10月、マイクロソフトが新たなクライアントOS「Windows 7」をリリース。これまでWindows Vistaを見送っていた各企業もついにPCハードウェアのリプレースを視野に入れた対応に乗り出した。システム管理者にとっては、これまで頭痛の種だったクライアント管理に関する課題を一挙に解決するためのチャンスの到来といえるかもしれない。

クライアント端末の在り方を変革する「クライアント仮想化」

 クライアントPCをめぐる状況が、大きく変わりつつある。2009年10月、マイクロソフトから新たなクライアントOS「Windows 7」がリリース。これまで投資マインドの低下などの理由からWindows Vistaへの移行を見送ってWindows XPを長い間使い続けてきた企業も、いよいよOSのサポート切れやPCハードウェアのリプレースを視野に入れた対応を迫られつつある。

 Windows XPからWindows 7へクライアント環境を移行するためには、幾つかのハードルが待ち受けている。Windows XPがプレインストールされていた世代のPCはスペック的にWindows 7を稼働させるのは難しいため、基本的にハードウェアは置き換えることになる。また、既存の周辺機器についてもデバイスドライバを更新しなければならないだろう。

 さらに、Windows XP上で利用していたアプリケーションがWindows 7上で正常に動作するか、一つひとつ地道に検証していかなければならない。従業員がそれぞれ異なるハードウェアの上でさまざまなOSやアプリケーションを利用しているような環境では膨大な作業になることが想像に難くない。

 OSの移行に伴う負担が大きくなる理由はこういうことだ。クライアントPCを構成するハードウェア、OS、アプリケーション、プロファイル情報といった各要素がレジストリ情報とともに複雑に絡み合っているため、どれか1つに変更を加えるだけでほかの要素すべてに影響が及んでしまう。ハードウェアを変更すればOSとアプリケーションが影響を受け、OSを入れ替えればハードウェアやアプリケーションが影響を受け……といった具合だ。

 こうした課題を解決する技術として、昨今大きな期待を集めているのが「クライアント仮想化」。これはハードウェア、OS、アプリケーション、プロファイル情報を分離した上で、仮想化技術を使ってサーバやブレードPCなどに集約して一括管理するものである。

ハードウェアからプロファイルまで各レイヤーを分離することで
システム管理者の長年の課題を解決するクライアント仮想化
ハードウェアからプロファイルまで各レイヤーを分離することでシステム管理者の長年の課題を解決するクライアント仮想化

 クライアントOSはすべてサーバの仮想化環境上で動作し、ユーザーはシンクライアントやPC、ネットブックなどのクライアント端末を通じてリモート操作する。アプリケーションもサーバ上で一括管理し、必要に応じてクライアントに配信することで実行環境を提供するわけだ。こうした方法であれば、先述したようなクライアントOSのアップグレードに起因する多くの問題を解決できる。

 しかし、クライアント仮想化が注目されている理由はそれだけではない。スマートフォンやネットブックといったさまざまなモバイル端末が普及した現在、業務用クライアント端末の種類は多様化しつつある。それに伴いPCとWindows OSの組み合わせだけではなく、さまざまな種類のクライアントプラットフォーム上で同一のデスクトップ環境を利用したいと考える人が増えてきている。そして、その実現にはデスクトップ環境をサーバやブレードPC上で一括管理するクライアント仮想化の手法が極めてフィットするのである。(次ページへ続く)

 

 

クライアント仮想化でも有効なシンクライアント

 ところで、クライアント仮想化技術の発展に伴って、新たな活躍の場を得たのがシンクライアントだ。

 シンクライアント自体は以前からあるソリューションで、決して目新しいものではない。1990年代、サーバ/クライアントシステムにおけるPC運用管理を簡素化し、TCOを大幅に削減するという触れ込みで登場したシンクライアントだったが、当時はまだネットワーク帯域や端末の性能に制限があり、大々的に普及するまでには至らなかった。

 さらに2005年に個人情報保護法が施行され、クライアントPC経由の情報漏えいが大きくクローズアップされたことから「シンクライアント第二次ブーム」とも呼べる現象が起きる。この時期に各メーカー、ベンダーからさまざまなシンクライアントソリューションが登場した。日立製作所(以下、日立)はいち早く「セキュアクライアントソリューション」を発表し、市場を牽引。特に同社のシンクライアント端末「セキュリティPC」は堅牢なセキュリティ機能を持ち、多くの企業で導入された。

日立のシンクライアント端末「FLORA Se210」
日立のシンクライアント端末「FLORA Se210」

 このように、シンクライアントはこれまで、セキュリティ対策、TCO削減、コンプライアンス強化のためのものだととらえられてきた。しかしここに来て、前項で説明したクライアント仮想化技術の登場により、その活用範囲が一気に広がることになった。

 最近では、社外でインターネットに接続するための通信インフラの整備やデータ転送に利用する通信プロトコルの進化など、周辺をとりまく環境の変化もあって、性能や使い勝手といったシンクライアントが抱えていた課題も改善されている。

 さらに、使い勝手の面でシンクライアントの世界に新風を吹き込んだのがクライアント仮想化技術だ。シトリックスやマイクロソフトといったベンダーが提供する先進的な仮想化製品を利用すれば、PCとほぼ同等の使い勝手をシンクライアント端末上で実現できる。「PCだったらこのアプリケーションが使えるのに……」「ネットワークにつながないと、何もできない……」。このようなシンクライアントに対するこれまでの不満の多くが、解消されつつあるのだ。

 事実、これまで国内のシンクライアント市場をリードし続けてきた日立も、いち早くクライアント仮想化技術を取り込んでいる。特に近年では、シトリックスとマイクロソフトとの協業体制により、ハードウェアからOS、仮想化ソフトウェアまですべてのコンポーネントを揃えたトータルソリューションを提供している。マイクロソフトは、2010年7月から仮想デスクトップ用のクライアントOSライセンスを変更し、クライアント仮想化の導入をサポートしている。こうした動きもクライアント仮想化の普及を後押しすると日立は見ている。

有力ベンダー各社との協業でクライアント仮想化を支援
有力ベンダー各社との協業でクライアント仮想化を支援

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多様なニーズに応える日立のクライアント仮想化ソリューション

 一口にクライアント仮想化と言っても、その実現方法には何通りかの方法がある。例えば日立では、「SBC(Server Based Computing)」「仮想PC」「ブレードPC」という3つの方式のソリューションを提供している。

サーバサイドのクライアント仮想化では長所・短所を把握した上で実装方式を選ぶことが重要
サーバサイドのクライアント仮想化では長所・短所を把握した上で実装方式を選ぶことが重要

 

 SBC方式は、サーバ上でアプリケーションを動作させ、仮想セッションを通じて複数のクライアントで共用する方式である。具体的には、Microsoft Windows Server 2003/2008のターミナルサービスとシトリックスのアプリケーション仮想化製品「XenApp」を組み合わせたプラットフォーム上に、対応したアプリケーションを載せる。

 仮想PC方式は、サーバ仮想化と同じことをクライアントOSに対して行うものだとイメージすればいい。サーバ上で仮想化ハイパーバイザーを動作させ、その上にPC環境を模した仮想マシン、すなわち「仮想PC」を複数稼働させるという方式だ。これにシトリックスのデスクトップ仮想化製品「XenDesktop」を組み合わせることで、クライアント端末に対して複数のデスクトップ環境を提供する。

 ブレードPC方式では、PCと同じ機能を持つブレードPC上にデスクトップ環境の稼働場所を移す。ブレードPC自体はサーバルームで集中管理しておき、ユーザーはシンクライアントなどの端末からリモートアクセスし、利用する。

 これら3つの方式にはそれぞれ特徴があり、ユーザーのニーズや事情に適したものを選択できる。例えばSBC方式は、単一のアプリケーションを複数のユーザーで共用する方式なので、同じ業務を複数の要員が行うコールセンターやバンキング業務など、いわゆる「タスクワーカー」のニーズに合致しているといえるだろう。

 一方、研究・開発業務のように、個々の要員が異なる作業を行い、かつそれぞれが高いコンピューティング能力を必要とする「ナレッジワーカー」のニーズには、それぞれのPC環境が独立しているブレードPC方式が適しているだろう。実際、ある大手企業の開発部門では、早くから日立のブレードPC型クライアント仮想化を導入している。

ユーザーに応じて最適なシステムは異なる
ユーザーに応じて最適なシステムは異なる


 仮想PC方式には、サーバリソースを効率よく利用できるメリットがある半面、どれだけの数の仮想PCをサーバ上で運用するかプロビジョニングする必要がある。またSBC方式も、アプリケーションが仮想化環境上で正常に動作するか、あらかじめ検証しなくてはいけない。こうした作業には時間を要するため、まずはシンプルなブレードPC方式でクライアントの仮想化をスタートし、その後で段階的に仮想PC方式やSBC方式を導入していくようなやり方も可能だ。

 日立のソリューションは、これら3つの異なる方式を、ユーザーの各種ニーズに合わせて提供できる点にある。クライアント仮想化を謳ったソリューションを提供するベンダーの多くが単一の方式しか提供していない場合も多いため、この点は明らかな強みと言えそうだ。

 先述したように、日立では自社ですべてのハードウェアを提供している。中でもクライアント仮想化の中核を担うシンクライアントとサーバに関しては、日経ソリューションビジネス(2009年末で休刊)が実施した「第12回パートナー満足度調査」で堂々の満足度No.1を獲得している。また、日経コンピュータが実施した「第15回顧客満足度調査」ではメインフレームやPCサーバ分野で1位を獲得するなど実績という面では申し分ない。

 同社はこうしたハードウェア・プラットフォーム製品の強みに加え、豊富なSI実績、そしてシトリックス、マイクロソフトとの緊密な協業を武器に、あらゆる企業のニーズに合致したクライアント仮想化のトータルソリューションを提供している。(次ページへ続く)

 

 

クラウドサービスにも適用されつつあるクライアント仮想化技術

 これまで見てきたように、日立では現在、シンクライアントにおける高い実績をベースに、クライアント仮想化ソリューションを展開している。しかし同社はさらに、来るべきクラウド・コンピューティング時代を先取りした次世代ソリューションにも既に着手している。

 同社が提供する日立クラウドソリューション「Harmonious Cloud」のメニューの中には、クライアント仮想化技術を応用したサービスが幾つか含まれている。例えば、「Microsoft統合開発環境提供サービス」はその1つだ。これは、マイクロソフトのVisual Studio Team Foundation Serverのサーバ/クライアント環境を丸ごとクラウド内に設置したもので、ユーザーはリモートアクセスによって提供された開発環境を利用する。

Microsoft Visual Studioを利用したサーバ・クライアントの開発環境を月額サービスで提供
Microsoft Visual Studioを利用したサーバ・クライアントの開発環境を月額サービスで提供

 

 このように日立では、クライアント仮想化を「導入する」だけでなく、サービスとして「利用する」形態までラインアップしつつある。日常業務や開発などシーンに応じて各所に配置された複数のクライアント環境を使い分けるスタイルが定着する日は近いかもしれない。

 「シンクライアント」「クライアント仮想化」そして「クラウド」に至るクライアント技術の進化を常にリードしてきた同社が、今後どのようなソリューションを展開していくのか、大いに期待されるところだ。

 

 

著者プロフィール

  • EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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