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クラウドが導くインターネットの新たな衝撃と秩序―そこに日本の勝機あり(前編)

インターネットイニシアティブ鈴木幸一氏インタビュー


インターネットイニシアティブ(IIJ)は1992年の設立以来、インターネット分野における技術やサービスの開発・提供において、文字どおりイニシアティブを取り続けてきた企業である。創業者として18 年間にわたって同社そして国内インターネット業界を牽引してきた鈴木幸一氏は今、クラウドコンピューティングの台頭や国内外のインターネット技術および業界の動向を、どのように見ているのだろうか。今回、クラウドが導くインターネットの新たなフェーズにおいて、IIJ自身や日本企業がクリアすべき課題について、鈴木氏の見解を舌鋒鋭く語ってもらった。(前編)

「電話の通信とインターネットは別物である」という認識の欠如

― IIJが日本初の商用インターネット接続サービスを立ち上げて18年になります。鈴木さんから見て、インターネットという技術は成熟の域に達したのでしょうか。

 海外に比べて、日本のユーザーの意識は遅れていると言わざるをえません。今に至っても、電話とインターネットが通信の概念としてまったく別物であるという認識が欠如している人が多いと思います。電話の発展の延長線上にインターネットがあるといった捉え方では、怖さも含めたインターネットの本質に辿り着くことができない。

 このことは私たち提供者の側にも責任がありますが、なかでも政府や大手企業のリーダーたちの認識の欠如には少し呆れています。彼らには、インターネットの登場で技術基盤がガラリと変わって、その上でコンピュータや通信の仕組みをどう設計するかということをあらためて正しく理解してほしいと思います。

― 技術面に関しては、インターネットとそれを活用する人間の関係を整えるまでに進歩したと言えるのでしょうか。

 いろいろな課題があるにせよ、だいぶ使えるようになったのではないでしょうか。インターネットは、誰でも参加できて恩恵を受けられる、すばらしいネットワーク技術ですが、一方で、誰でも簡単に壊すことができるという怖さとリスクもあります。サービスの内容が技術的な規定ですべて決まってくる電話の安全性とは違って、インターネット・サービスの安全性の大部分がユーザーや端末メーカーの側に委ねられているわけです。

インターネットイニシアティブの代表取締役 鈴木 幸一氏
インターネットイニシアティブの代表取締役 鈴木 幸一氏

 インターネットが民間に利用され始めた当初は、プロトコルに沿って皆が― 皆と言っても専門家ばかりですが―忠実な使い方をしていて、たいしたリスクもありませんでした。

 その後、WWWが登場した頃からインターネットは本当の意味で皆に開放され、様々な技術やサービスが次々と登場することによって、活用の幅は一気に広がっていきましたが、それに伴って、利用時のリスクを十分考えなくてはならなくなっています。でも、我々のようなサービス事業者が安全性を優先して利用を止めたら発展もしていかない。そういう意味で、リスクの増大は必然の流れだと言えます。

― おっしゃるように、ユーザーとの関係も含めて、電話による通信とはまったく別の論理、秩序で発展してきたわけですね。

 まず、何か新しい技術やサービスの登場ありきで、それは誰が作ってもかまわない。それがインターネットの世界のルールです。IIJは初期の技術基盤作りから大きく貢献してきたと自負していますが、その後、どんな破壊的なテクノロジーやサービスが出てきても、誰にも止められなかったし、止める理由もないのです。

― 近年、この業界では、群雄割拠の状態から、優れたサービスを開発して、短期間に大きな財をなすベンチャー、インターネット企業のイメージが強いです。

 今はそうですね。1990年代初めは、パブリックドメインという考えのもとで、「うちがこれを作って別のところがあれを作って」といったかたちの共同作業で、徐々に商用インターネットの基盤が整えられていきました。ソフトウェア業界からノーベル賞が出ないのは、おそらく、誰が、何を作ったのかが他の分野ほど明確ではない面が大きいのではないでしょうか。

 米国国防総省の技術公開から始まったインターネットでは、それが顕著だと思います。また、インターネットの黎明期に関わったプレーヤーの多くは、古い言葉で言えば愚連隊のようなエンジニアたちだったこともあって、特許を取得するような手段に及びませんでした。

 よく冗談で、マイクロソフトのような企業がインターネットの技術基盤作りに関わらなくてよかったと言われますが、みんなが使えるものでなければ、特許なんて弊害にすぎませんから。例えば、基本的なプロトコルにライセンス料を支払うような事態になっていたら今のようなインターネットの発展はなかったでしょう。(次ページへ続く

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一私企業の論理より先にあった、大きな使命

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この記事の著者

河原 潤(カワハラ ジュン)

ITジャーナリスト 明治大学文学部卒業後、教育系出版社を経て、1997年にIDG入社。2000年10月から2003年9月までSun/Solarisの技術誌「月刊SunWorld」の編集長を務める。同年11月、企業コンピューティングの総合情報誌「月刊Computerworld」の創刊に携わり、同誌の編...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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