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第7回 韓国の先行事例から考える日本の国民ID制度導入の行方 

  2011/04/28 10:30

現在日本で話題となっている、いわゆる国民ID制度「共通番号制度」。実は韓国では日本の植民地時代に、韓国の国民ID制度の起源である「朝鮮寄留令」が導入された。今回は、韓国における「住民登録番号制度」と「公認認証書制度」の導入および行政情報共同利用サービスの導入の経緯を事例に、日本における「共通番号制度」の導入における課題について考えていく。

日本の共通番号、韓国の住民登録番号

 日本の電子政府・電子自治体関連の仕事に関わることになってから、不思議に思っていたことがいくつかある。その中でも一番理解に苦しんだのが、いわゆる国民一人ひとりを特定できる番号(以下、共通番号と呼ぶ)がないということであった。

 コンピュータ処理を前提にすると必ず、国民一人ひとりを確実に識別できる手段が必要なはずで、もちろん、類似のものとして住民票コードや、名寄せという方法があることは理解しているが、この分野で仕事をしている人であれば、両方とも個人を特定することが難しいことは誰でも知っている。 今まで、この分野の公務員や専門家の方々はなぜ、共通番号を作ろうとしなかったのだろうか。

 住基ネットを囲んだ様々な論難など、日本国ならではの諸事情があったかと思うが、とにかく、先般の「消えた年金」や「消えた高齢者」の問題などが社会問題として浮上したことをきっかけに、結果的に「共通番号制度」の創設の必要性が高まったのは、大変望ましいことである。

 特に、2009年衆議院選挙における民主党のマニフェストでは、「税と社会保障制度共通の番号制度」を導入すると明記されており、さらにその民主党が政権与党になり、急激に検討が進んでいることから、その分野に携わっている人間としては大きな一歩を踏み出したことへの期待が一層高まった。

 一方、2010年国連の世界電子政府ランキング1位になった韓国では、「住民登録番号」というものがすでに導入されており、その番号を効率的に活用し、申請主義ではなくPUSH型のサービスを次々と国民に提供している。

 特に、2010年に制定された電子政府法により、国と自治体および公共機関は、すでに保有している情報を改めて国民に証明書などで求めてはならないと定めている。これにより、「住民登録番号」を中心とする行政機関内部での行政情報の連携基盤を活用して、証明書などを発行しなくても各種処理が進むよう、革新的な行政改革を起こしている。

 この結果、韓国国民には今までにない利便性の向上が達成され、行政機関は業務の効率化を達成しつつある。当然、このようなサービスを提供するためには、個人情報保護の観点から様々な危惧も生じることから、それらに対する対策も進められている状況である。その意味で韓国の「住民登録番号制度」の由来と今日に至るまでの歩みを紹介することで、日本の「共通番号制度」に関する設計に少しでも役に立てばと考える。

韓国の「住民登録制度」の起源とは?

 歴史のアイロニーと言えるものか、韓国の「住民登録制度」の起源は朝鮮総督府の統治下にあった時期にあり、1942年日本帝国の植民地である朝鮮に出された「朝鮮寄留令」にあることに筆者も驚いたものである。

 当時の朝鮮総督府の意図を正確に知ることはできないが、日本による植民地支配に抵抗する朝鮮人を特定するという意図があったことは間違いないと思われる。韓国では、この植民地時代の「遺産」を基礎として「住民登録制度」が導入されたのだが、今やそれはあって当然のような存在となり、国民からは「住民登録制度」や住民登録番号自体への抵抗感も少なく、さらに北朝鮮との緊張関係もあって、本人確認の手段として定着し、幅広く使われることになったのではないかと推察する。

 確かに韓国人である筆者にとっては、今まで自分に与えられている「住民登録番号」について何の違和感も持たなかったし、それらの情報が国家や情報機関により勝手に利用されて自分に被害が及ぶということを想像したことがない。また、個人情報が流出したとしても、それらがどこまでの被害になるかと実例を考えてみても、心理的な被害はありそうだが、物質的な被害はあまり見当がつかない。

その一方で、もし韓国に今まで「住民登録番号制度」がなく、これから始まるということになったら、韓国でもそう簡単に導入はできないだろうとも考える。その意味で、結果的に「朝鮮寄留令」は、今の韓国にとっては有用なものであるが、それらを制定した側の日本国がこれから番号制度を導入するというのは、感懐深いものである。(次ページへ続く

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