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第1回 2012年は「インスタント社会」へのパラダイムシフトが起きる

  2012/01/19 07:00

今月からEnterprizeZineで「月イチ解説 ITトレンド」を担当させていただく事になりました、ITジャーナリストの大元隆志と申します。本コーナでは、企業のIT活用といった視点で、今おさえておくべきトピックについて毎月一回紹介させて頂きます。取り上げるトピックは話題性のあるモノというより、今後世の中の方向性を変える可能性のある基礎技術、企業の戦略が中心になります。2012年、第一回目となる今回は、2011年のITトレンドを振り返り、それらのトレンドが消費者の生活スタイルをどう変化させていくのかを解説します。

【1】デバイス

スマートデバイス市場の活況

 2011年は、スマートフォン、タブレットの二つのデバイスが市場の話題を大きくさらった一年だったと言える。iPhone/iPad、Android、Windows Phoneといった、三種のプレイヤーが日々ニュースを提供している。特にソフトバンクの勢いを牽引していたiPhoneがついにauからも販売されることになったニュースは大きな注目を集めた。米国Amazonが発売したタブレット、Kindle Fireも発売一ヶ月で400万台を販売するなど、好調な売れ行きを見せている。   

図1:スマートデバイス

 MM総研による調査では、2011年度の国内携帯電話販売台数は4,160万台。そのうちスマートフォン出荷台数は前年比約2.7倍の2,330万台になると予測している。携帯電話販売台数の全体の56%がスマートフォンとなりスマートフォンがフィーチャーフォンの販売台数を初めて超える年度になる見通しだ。月日を追うごとにスマートフォンの割合は増加し、BCNの調査によると昨年12月には約8割がスマートフォンになったとのことだ。 

 スマートフォンの販売は、キャリアとしてもデータ通信定額サービスによるARPU(*ユーザー1人当たりの月間売上高)上昇に貢献するため積極的に販売する傾向にある。そのため2012年も引き続き堅調な販売が見込まれている。

 タブレット端末も矢野経済研究所の推定によれば、2011年度の出荷台数は前年度比301.8%増の291万5,000台となっている。   

 スマートフォン、タブレットの販売が堅調な一方で、コンテンツプロパイダーは悲鳴を上げている。なぜなら、ブームに乗り遅れまいとするメーカーからの製品リリース、モバイルプラットフォームの台頭、頻繁なOSアップデートとコンテンツプロパイターの工数は増加する一方だからだ。

 これらを解消したいと思うコンテンツプロバイダーの思惑と、OSメーカー主体の垂直統合モデルからの脱却を狙うキャリア陣営によって、2012年は従来のアプリコンテンツだけでなく、HTML5によるコンテンツ提供も進むだろう。  

 また、スマートフォンやタブレット端末の販売はキャリアにとってARPU上昇のメリットがあるが、消費者にとっては、通信費の高騰につながる。イオンが販売する日本通信製「b-mobileSIM」は月額980円のデータ通信プランのみで「速度は遅いが安い」を売りにしてヒットしている点も見逃せない。

 2012年は、2011年以上にパワーユーザー以外の誰もが「普通に」スマートデバイスを活用するようになる。ITに詳しくない女性や、メールと電話で十分といったフィーチャーフォンユーザーの移行が予想される。これらの新規顧客層には低価格路線、音声やジェスチャーによる操作で誰でも簡単に使える工夫が施された、新たな利用者層の拡大戦略が購買動機につながってくるだろう。 

企業導入ではスマートフォンよりタブレット導入が進む

 一般消費者向けには大きな伸びを見せたスマートフォンだが、企業への導入は思うように進まなかった。スマートフォン導入による業務効率改善期待が強い一方で、情報漏えいやマルウェア感染によるセキュリティリスク、端末紛失時の不正利用に対する懸念が強い。いつでもどこからでも、大量のデータに瞬時にアクセス可能で、顧客情報や機密情報に溢れた社内の情報へもアクセス可能となれば便利な反面、セキュリティリスクももちろん高まるという訳だ。

 その反面、タブレットの導入事例は増えている。WiFi版を採用し、利用可能な場所を限定させることでセキュリティリスクを軽減できるからだ。例えば、次世代オフィス環境を提案しているコクヨでは会議時にタブレット端末を配布し、紙による会議資料は配布せずタブレットで閲覧するといった取り組みも行われている。これはペーパレス化といった効果もあるが、紙の資料を個々人に配布しないことによって情報漏えい対策、経費削減になるといったメリットがある。

 また、タブレット端末は営業マンの利用にも適している。外出先でも画面サイズが大きく動画も手軽に見せることができるため、プレゼンテーションツールとしても、紙のカタログ以上に、訴求力の高い表現が可能になったのである。クラウドのデモも実演できる点もメリットだ。KDDIでは従業員2800人にタブレットを配布し、訪問先の企業でクラウドの実演を行い、ソリューションの動作イメージを実際に操作してもらうことで、紙では表現できなかった提案を実現している。

 なお、海外も含めた導入事例として、一企業におけるiPad導入の最大事例では韓国のKorea Telecomが従業員に三万台のiPadを配布している。

 今年発売が予定されているiPad3では解像度がiPad2と比較して四倍になるとの噂がある。iPad2でも大きな文字でメモ書き程度なら可能であったが、ノートに書くレベルの細かい文字の描写は難しかった。もしこれが事実であればより高精細な描写が可能になり、電子ノートとしての可能性を開拓するのではないだろうか。

 2012年は消費者へのスマートデバイスの普及と比例して自己所有の製品を社員が会社に持ち込む行為、いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)が増加すると考えられる。企業は自社で購入する、しないに関らず、スマートデバイスの利用ガイドラインの整備や、MDM(Mobile Device Management:モバイル端末管理)、DLP(Data Loss Prevention:情報漏えい対策)を導入し安全にスマートデバイスを利用できる環境構築を検討する必要があるだろう。

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著者プロフィール

  • 大元 隆志(おおもと たかし)

    ITビジネスアナリスト/顧客視点アドバイザー 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、 技術者、経営層、顧客の3つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。講談社 現代ビジネス、翔泳社EnterpriseZ...

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