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過熱するクラウドデータセンター競争

  2012/04/16 07:00

3.11 以降の各社の郊外型データセンターの動向

 3.11以降、IIJ やさくらインターネットなど、郊外型データセンターの設置が進んでいる。その背景や各社の取り組みについて整理する。

IIJ の「松江データセンターパーク」

 震災後に最も早く郊外型のデータセンターを開設したのはIIJで、2011年4月に島根県松江市に「松江データセンターパーク」を開設している。「松江データセンターパーク」は、外気冷却による低消費電力を実現した空調モジュールとITモジュール「IZmo」から構成され、各種機能モジュールを組み合わせることで、短期間で大幅なコスト削減を実現する。

 IIJが松江市に立地を決めた背景には、島根県、松江市ともにIT振興に力を入れ、電力助成制度をはじめとした優遇政策など、IT企業誘致に力を入れていたためだ。松江市はプログラミング言語「Ruby」を開発したまつもとゆきひろ氏が在住しており、ソフト産業の集積地として注目を集めている場所でもある。

 立地条件にあたっては、活断層からの距離、浸水ハザード、アクセスの利便性などや、外気温度、湿度、送電条件、建設の自由度などを、総合的に検討した結果、松江市に決定したという。

 IIJでは、IaaS(GIO)のサービス基盤として、「松江データセンターパーク」のようなコスト優位性と容易なスケールアウトを実現するデータセンターを今後も展開し、急速に拡大するクラウドサービスの需要に対応していく予定だ。さらに、IIJのクラウドサービス基盤としてだけでなく、プライベートHaaSとしての提供(コンテナにお客様の希望する機器等をキッティングしてコンテナごと提供)や、他のSI事業者やクラウド事業者のサービス基盤としての提供も行うことで、クラウドの集積拠点として発展を目指している。

 一方、IIJでは、都心のビル型データセンターも拡充していくことで、ユーザーの幅広い需要への対応も進めている。

さくらインターネットの「石狩データセンター」

 さくらインターネットは2011年11月15日、北海道石狩市でクラウドに最適化した郊外型大規模データセンター「石狩データセンター」を開所し、同日、業界最安値水準のクラウドサービス「さくらのクラウド」を開始した(写真1)。

写真1:石狩データセンター1 号棟、2 号棟(写真提供:さくらインターネット)

 さくらインターネットが石狩市にデータセンターの建設を決めたのは、立地に関しては、郊外の低価格な事業用地があり、自治体の優遇助成制度が利用できる点や、寒冷地特有の冷涼な外気を活用することで、空調コストを約4割削減できる点を挙げている。また、地震発生確率や台風や雷などの自然災害の少ない環境も選択のポイントとなっている。回線に関しては、日本海側と石狩湾の陸揚げ局から敷設された太平洋側の光海底ケーブルによる複数経路による冗長系統を確保できている。

 自治体の優遇策においては、北海道の支援では「北海道産業振興条例に基づく助成」により投資額の8%を助成(限度額3億円)、石狩市の支援では「石狩市グリーンエナジーデータセンター立地促進条例」により、(土地を除く)固定資産税及び都市計画税を5年間免除されるといったことも大きな理由となっている。

 さくらインターネットでは、石狩データセンターであれば、数百ラックにも対応できる規模と広大な土地にデータセンター自体を増設できる拡張性がある。これまでの都市型(大阪・東京のみ)データセンターでは、石狩データセンターほどの拡張性が無く、拡張性を求める顧客の要望には応えられないことがあったが、石狩データセンターではそのような要望にも応えていきたいという。

 さくらインターネットでは、さくらのクラウドの提供により、さくらのVPSからのサービス乗換えや、これまでのホスティングでは対応しきれなかった大規模なシステム要件にも対応していく予定だ。さらに、さくらのクラウドに続き、新たに専用サーバーサービスの提供も予定している。

 また、東日本大震災以降は、BCPやDR を目的とした問い合わせも増えているという。北海道では、北海道庁が主催となり「バックアップ拠点構想」を掲げている。さくらインターネットも本構想の有識者懇談会に参加し、首都圏における地震などの災害、東日本大震災にて認識された課題への対応として、北海道が日本(食料や水、エネルギー、行政機能、ITなどにおいて)のバックアップ拠点となるための取り組みを進めている。

IDCフロンティアの新白河データセンター(仮称)

 IDCフロンティアでは、「3メガデータセンター構想」を掲げ、データセンターの集中している首都圏に加え、東日本エリアおよび西日本エリアにも大規模拠点を構え、広帯域ネットワークで相互接続を行い、トライアングルのように国内全体をバランスよくカバーする計画を進めている。

 すでに西日本エリアでは九州で北九州データセンターが稼動し、東日本エリアでは福島県白河市に外気空調システムなどを採用した環境対応型データセンターの新白河データセンター(仮称、以下「新白河」)の建設を進めている(写真2)。当初は2011年4月に着工を計画していたが、震災の影響により5カ月遅れの2011年9月の着工となり、2012年9月に竣工予定だ。

写真2:新白河データセンター(仮称)完成予想イメージ図(画像提供:IDC フロンティア)

 データセンターの立地を選定するにあたり、国内の多数の候補地の中から、首都圏からのアクセス、ネットワークの接続性や低レイテンシー、電力会社の分散や電力供給事情、効率の良い外気空調を行うために必要な気候条件など、いくつもの検討ポイントから選定を行った。

 白河市は、電力・通信インフラも整備されており継続的に拡張可能な広大な敷地が提供できることや、税制面や助成金など優遇措置が用意されているなどの誘致策も充実していることから、実際の視察を重ねた上で最良の候補地として白河市に決定している。また、白河市が誘致にあたって関係各方面との調整に積極的に動いたのも大きかったという。

 福島県は、会津大学などITに取り組んでいる教育機関が一般企業の連携に積極的なこともあり、将来の優秀な人材の確保や、データセンターへ訪れるIT技術者との交流による一大IT拠点への成長なども、福島県の復興と併せて期待をしているという。

 IDCフロンティアのクラウドサービス(IaaS)では、マルチリージョンクラウドとして、首都圏と北九州のデータセンターで提供をしており、新白河データセンターも加わることで、ユーザーの選択肢の幅を広げるとともに、サービスの可用性の向上を図っている。また、IDCフロンティアではクラウドサービスの拠点だけでなく、マルチデータセンターとしても力を入れている。

クラウドに対応した都内最大規模のデータセンターも

 郊外型のデータセンターの立地が進む一方で、首都圏においてもクラウドに対応したデータセンターの建設が進んでいる。NTTコミュニケーションズは、2013年度第1四半期のサービス提供開始に向け、東京都北区に都内最大規模の総延床面積約22,000m2( 約3,000ラック相当)の「東京第6データセンター」を建設中だ(写真3)。

写真3: 東京第6 データセンター完成予想イメージ図(画像提供:NTTコミュニケーションズ)

 本データセンターでは、OpenFlow等の技術を活用し、システム構成変更時の変更作業がオンデマンドかつ柔軟に可能となる仮想ネットワークを活用することにより、クラウドサービスを国内外へシームレスに提供する予定だ。

郊外型データセンターの今後

 今後も国内外のクラウド市場の拡大が予想される中で、特に、アジアの新興市場などの急速な市場拡大に伴い、アジア各地でデータセンターの誘致合戦が益々加速すると予想される。日本の郊外型データセンターは、国内市場向けのサービスにとどまらず、日本国内からアジア市場向けにサービスを提供する国際競争力のあるデータセンターへと発展していけるのか。今後の郊外型データセンターをはじめとしたクラウドデータセンターの展開は、日本におけるクラウド業界の行方を占う上でも重要な位置づけとなるだろう。



著者プロフィール

  • 林 雅之(ハヤシ マサユキ)

    国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュケーションズ株式会社勤務) 1995年NTT(日本電信電話株式会社)入社。地方で中小企業の営業ののち、マレーシアにて営業および国際イベントの企画・運営を担当。NTT再編後のNTTコミュニケーションズでは、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開発などの業務を担当。政府・地方のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画に従事。国際大学GLOCOM客員研究員。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。主な著書に『クラウド・ビジネス入門』(創元社)、『オープンクラウド入門』(インプレスR&D)など。

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