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施策につなげる「打ち手」としてのデータ分析とは? ブレインパッド草野社長語る

  2013/01/08 00:00

10月16日におこなわれた「IT Initiative Day 2012/Big Data & Business Analytics Special」でブレインパッドの草野 隆史社長が講演をおこなった。「ビッグデータ」という言葉が流通する以前から、データ分析支援を通じて数多くの顧客企業の課題解決に貢献してきた経験により、ビッグデータを企業の戦略資産として活用する具体的な方法や事例が紹介された。

いきなりビッグデータではなく、データ分析を始めることが大事

株式会社ブレインパッド 代表取締役社長 草野隆史氏
株式会社ブレインパッド 代表取締役社長 草野隆史氏

 インターネットの普及は、非対面コミュニケーションの増加、生産側主導から生活者主導への転換などをもたらし、市場環境の変化が急加速している。そこで「企業におけるデータ分析の必要性が高まっていく」と判断した草野隆史氏は2004年「データマイニング&最適化」に特化した企業、ブレインパッドを立ち上げた。同社では具体的には大きく、3つの事業を行っている。

 まず「アナリティクス事業」は、企業の蓄積データの分析業務を受託するものだ。そこで用いられている分析技術を使ったネットサービスを提供しているのが「ASP関連事業」。3つめの「ソリューション事業」は、CRM&分析ソフトの販売やシステム構築になる。

 現在、ブレインパッドの顧客は、外食、金融、EC・通販・小売、広告代理、旅行・運輸、通信・メディアの各業界の大手が中心だ。草野氏は創業時「大手は分析を自前で行っているだろうから、中堅企業が顧客ターゲット」と想定したが、意外に大手もなかなか手が回っていないことが分かった。そこで「現在はデータ活用に課題を持つ、各業界の大手企業ともお付き合いをし、貴重な経験をさせていただいている」(草野氏)。

 いわゆる「ビッグデータ」市場の成長ということでいえば、やはり米国が先行しており、今後5年で約10倍になるとされている。すでに成功事例も数多くあり、たとえば米国大手スーパーマーケットのTARGETでは、顧客の購買履歴から女性客の妊娠と出産予定日まで推定し、タイミングに合わせて関連商品のクーポン券を送るなどの施策を実行している。そのほかにも様々なシチュエーションに合わせたきめ細かい対応を可能にするデータ分析を行い、業績をアップさせている。

 一方、日本でも「ビッグデータ」に関する報道、イベント、検索などが急増しており、関心が高まっていることが実感できる。しかし今後5年の市場規模は、米国の10倍に対し、日本は3倍と予測されている。実際、2012年にリクルートが実施したアンケート調査では、約7割の企業が「ビッグデータ分析の要望無し」と回答している。

 さらに実際に活用されているデータは、顧客属性データ、購買履歴データ等の構造化データが大半を占めている。今後分析に活用したいデータについても、引き続き構造化データへのニーズが圧倒的に高く、ビッグデータの代表格である非構造化データへの関心が薄い。

 そこで草野氏は「当面、ビッグデータを蓄積している、あるいは蓄積できる日本の企業は限定される」と見ている。また、多くの企業において、従来の構造化された社内データの活用もままならない中、データの量と種類の増加や発生速度・更新頻度の向上で、その状況が改善する事はない。

 実際、ペタ単位のデータ蓄積環境への投資から十分なリターンを引き出すのは、難度の高い仕事だ。日本の企業の場合、まずは、ビッグデータに限定せず、社内のデータ活用自体の取り組み方から見直す方が、ROIが高い。そこで草野氏は「大事なことは、ビッグデータではなく、実際の施策に結びつけるためにデータ分析を始めること」と強調する。

「打ち手」を見つけるための分析アプローチ
「打ち手」を見つけるための分析アプローチ

現状は分析インフラ投資優先で、なかなか人材まで手が回らない

 では、実際に企業がデータ分析を行う際、どのような問題、課題があるのか。まず、企業データ分析に対する現状のアプローチは、「インフラ投資優先型」になっているところが多い。分析ツールへの投資まで進んでいる企業もあるが、ここで息切れになっている。人材の採用、教育などは限定的だ。

 草野氏は「データ分析を実際に施策の改善につなげるためには、“施策課題優先型”のアプローチが必要」と指摘する。どういう施策をするのかが決まらないと、「どういうデータを蓄積するのか」、「どういう分析をするのか」が決まらない。活用方法が決まらなければ、貯めたデータは単なるコストになってしまう。

 変化し続けるビジネスで、十分にデータを活かすには、データとITとビジネスの現場を繋いだ分析視点での動的な全体最適化が必要だ。つまり、分析と施策への十分な投資、構築よりも運用に投資比重を厚くする。データ収集、データ蓄積は主に情報システム部の担当であり、データ分析、施策実施(改善実現)は、主にビジネスサイドの担当、というアプローチが必要になる。

「施策課題優先型」分析アプローチを実現するデータ環境

 草野氏は、ビジネス部門主導で分析アプローチを効果的に進める分析環境は、以下のような要件を満たしている必要があると考えている。

 まず「データ蓄積」では、常に分析に“使いたいデータ”が“使える形”で“統合的に”管理されている環境だ。「データ分析」では経営環境、企業目標の変化に柔軟に対応するために、多様な分析アプローチに迅速に対応できる環境ということになる。「データ活用・共有」では、直近の分析結果を、必要とする人が常に参照、活用でき、また分析結果が、次の施策のインプットとして活用できる環境が必要になる。

データ蓄積環境
データ蓄積環境

 企業内の各部署で分散して管理されている多様な形式のデータから、分析に使う可能性のあるデータを、いつでも、直近のデータが使える状態に統合されるような環境構築が重要。

 

データ分析環境
データ分析環境

 外部環境(競争環境)の変化、企業目標の変化、KPIの変化に柔軟に対応するため、また、環境変化の激しい昨今、分析結果を新鮮なうちに施策に適用するために、大量データを様々な分析アプローチで高速に処理できる環境を用意することが求められる。

 

データ活用・共有
データ活用・共有

 また、分析結果をダイレクトに施策に展開できるように、各種タッチポイントに対するアプローチシステムと連携していることが望ましい。また、各種データ及び分析結果は、自社の施策実施担当者、及び分析官が、共に参照し、作業を行える環境が望ましい。

 では分析をする人はどう担保するのか? 実際、その育成や、経験と能力のある人材の採用は簡単ではない。そこで有力な選択肢として考えられるのが、外部リソース(システム、人材)の活用だ。その事例として草野氏は、ブレインパッドがサポートしたある化粧品通販業者のケースを紹介した。

外部リソースの活用で分析コストと成果のバランスを確保

 その化粧品通販業者では、新規会員加入の急増が落ち着き、売上増加が鈍化していた。さらに新規会員の中に、顧客単価や継続率の低い会員が増えてくるという状況があった。しかし、現状把握するための環境は、システム面、人材面ともに不足。そこで、業績の伸びの鈍化原因を特定して業績回復に効果的な打ち手を実施するために、ブレインパッドと共にプロジェクトを開始した。

 その進め方だが、単純なデータ項目のクロス表を作成していては、掛け算で仕様が増える。そこで情報系の帳票の作成やそのためのDB(DWH)をいきなり構築せず、ブレインパッドが過去ログを預かり、受託ベースで仮説を立てて分析することにした。アドホック(非定型)な分析を繰り返すことで、必要十分な分析項目、意味のある指標だけを残し、今後追うべき指標は何かを議論しながら構築。何が起きているか、問題を発見するための構造分析を半年ぐらい行った。その中で現状把握を実施し、課題解決のための適切な打ち手を立案、実施することで個客単価のアップやリピート増などの成果を得ることができた。

 この事例において、ブレインパッドは、施策見極めのためにシステムと人材を提供した。顧客は、その結果を基にシステムリプレースの段階で、施策実現環境を構築している。ここでのポイントは、外部リソースの活用により、必要十分なコストで結果を出したことにある。

 

ブレインパッドが目指す、統合分析環境サービス提供
ブレインパッドが目指す、統合分析環境サービス提供

 

 現在、ブレインパッドでは、社内のオンプレミスに存在していたデータ分析環境を、クラウドへ移行することを推進している。そこでは顧客向けに分析の支援をしながら、施策の実行支援までワンストップで提供する。草野氏は「クラウド上にデータを上げていただければ、あとは全部面倒を見ます」と語る。

 現在、DWHといくつかの分析ツールが連動するかたちなのだが、今後、BIをはじめとする視覚化ツールなどのクラウド化対応を強化していく予定だ。また、天候データや位置情報などの外部データなども、各種情報サービスと連携させ活用できる環境を作っていく。ユーザーが分析をするためのシステムをオンプレミスで作るのではなく、必要な時に迅速に始めることができる環境を用意し、どんどん拡張しているところだ。

 最後に草野氏は「コストを抑えてチャレンジすれば、絶対に成果が上がる。ぜひデータ分析を開始し、成果を上げていただきたい」と呼びかけ、セッションを閉じた。

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