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IBMがx86サーバーを売却した理由―レノボとの戦略的な提携を発表

  2014/03/06 16:00

 2014年1月23日、IBMがx86サーバー事業をLenovoに売却すると発表、IT業界には驚きの声が飛び交った。というのも、ほんの数日前、IBMはx86サーバーの新製品「IBM X6」の発表を行ったばかり。新製品に関する大規模なイベントも計画されており、このタイミングでの売却発表には驚かされることになったのだ。その後、米国で発表された内容以上のことはあまり伝えられていなかった。それが1ヶ月あまり経過した3月6日、「IBM System x事業に関する説明会」という形で改めて解説された。

レノボの持っている大きなサプライチェーンによる「規模の経済」効果

日本IBM 代表取締役社長執行役員 マーティン・イェッター氏
日本IBM
代表取締役社長執行役員
マーティン・イェッター氏

 「今日はレノボとの戦略的なパートナーシップの説明をします」

 滅多に記者説明会などで登壇することのない日本IBM 代表取締役社長執行役員のマーティン・イェッター氏は、説明会の冒頭でこう切り出した。そして、x86サーバー事業の売却について、イェッター氏は「1月にレノボとの間で正式に契約を交わした。これはたんなる製品の売却ではなく、レノボとの戦略的な提携なのだ」と語る。

 2005年にPCビジネスをレノボに売却して以降、両社は良好な提携関係を築いてきた。今回はそのさらなる拡大なのだという。

 「x86サーバーの領域でも両社で、高価値提案を引き続き提供します」(イェッター氏)

 レノボはIBMのPCビジネスを買収以降、めざましい発展をしている。世界のトップPCベンダーとなり成長を続け、日本でもNECのPCビジネスを取り込みトップを走っている。

 一方、IBMのx86サーバーのビジネスも好調だったと言う。日本市場においても順調に成長をしており、市場全体の成長率の3倍もの成長があったところもある。「IBMの製品は世界一級品で、とくに日本市場での評価は高い」と自信を見せるイェッター氏。そのように好調であっても、将来的なさらなる成長を考え売却するというのだ。

 その理由について、IBM x86 / Pure Systems Solutions部門のトップ、ゼネラル・マネージャーのアダリオ・サンチェス氏は次のように語る。

 「今後のクラウド時代に向けさらなるビジネスの俊敏性、柔軟性、そして規模の経済効果を得るためだ」(サンチェス氏)

 本格的にクラウドの時代になり、x86のビジネスではより迅速に顧客に対応できるようにならなければならない。そのためには、IBMが持っているよりもレノボのほうがより迅速で包括的にx86サーバーのサービスを提供できると判断した。

 そして、なんと言っても大きな効果を生むのはレノボの持っている大きなサプライチェーン。これがあることで、結果的に低価格化競争の中でビジネスを優位に進められるようになるわけだ。

 「両社が手を組むことで、今までとは大きな違いが出てきます。我々は技術を持っていてレノボは大きなサプライチェーンを持っています」(サンチェス氏)

 IT業界では、今後もサーバー製品などの低価格化は加速する。これはIBMがx86サーバーをレノボに売却しなくても必然だ。技術的な進歩よりも、さらなる価格競争力を出していくことが、ビジネスで成功する条件でもあるだろう。今回レノボに移管されることで、当然ながら価格競争力は高まるはず。たとえば、サーバー価格の30から40%はメモリの価格が締めている現状がある。これが大きなサプライチェーンを持つレノボがメモリを購入すれば、明らかに低価格で調達できることなる。

 さらに、これまでIBMでは、ハイエンドからミッドレンジのx86サーバーしか提供してこなかった。これがレノボに移管されることで、さらにローエンドの製品にまで製品の幅が広がるだろうとサンチェス氏。サーバーの価格そのものは、こういった流れの中で精査していくことなる。

 「規模の経済効果を発揮でき、今まで対応できなかった領域も取り込めます」(サンチェス氏)

 このx86サーバーに関する大きなサプライチェーンの話を持ち出されてしまうと、対抗できるのはデルくらいしか市場には残らないかもしれない。HPでも、かなり厳しいものがあうかもしれない。となると、日本市場を主な戦場としている日本のベンダーは、太刀打ちするのはさらに難しくなる。x86サーバーのビジネスは、今後さらに集約されていく可能性がありそうだ。

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著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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