SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine Press

リクルートの「データ組織」を統括する阿部直之氏:多様性進化のためのデータマネジメントの方法論とは


 リクルートのデータ組織は、複数の事業領域に対峙し、データの運用に関しての課題に取り組む。8月に開催された「デタマネFES」で、専門性マネジメントを統括する阿部氏は、実践的な見解を披露した。事業領域ごとのデータ管理コンフリクトの解決のために、「トップアップ」、「ベースアップ」、「ボトムキープ」の3つのアプローチを組み合わせている。

リクルートのデータ組織の役割とマトリクス構造

株式会社リクルートデータ推進室 データテクノロジーユニット 阿部直之氏
株式会社リクルートデータ推進室 データテクノロジーユニット 阿部直之氏

 2023年8月1日から10日までの10日間、オン/オフ/ハイブリッドで『デタマネFES・夏2023』が開催された。JDMCコミュニティ主催によるデータマネジメントの推進と啓蒙活動を行うロングランイベントだ。

 8月3日のライトニングトークに登壇したリクルートのデータ推進室データテクノロジーユニットの阿部直之氏は、2021年4月、中核事業会社と機能会社の7つを統合した新制リクルートにおいて、取り扱うデータ特性も大きく異なる複数の事業領域に対峙することになったデータ組織の喫緊の課題について、横断組織の専門性マネジメントを統括する立場から、実践的な見解を披露した。

 リクルートホールディングス配下で、国内のマッチングのソリューションSBUを担当する企業であり、「SUUMO」「ゼクシィ」「リクナビ」「じゃらん」「カーセンサー」「ホットペッパービューティー」「スタディサプリ」「Airレジ」などを代表とする「Air ビジネスツールズ」など多種多様なサービスを運営しているリクルート。同社のデータ組織は「データ推進室」で運営している。

 「HR(human resource:人材)のデータ組織をはじめ、飲食、住まいなど、たくさんの事業領域のデータ戦略に分割した“縦組織”の中で、データサイエンティストやデータエンジニアとデータマネジメントを行うメンバーが活動しています。各自が縦の組織に点在するので、それぞれの知見の持ち寄りや各組織の専門性の基準を統一するために横断する組織を持っています」と阿部氏はリクルートならではのデータ組織の構成を語る。

 この横断組織は採用・育成を含むデータの専門性強化に責任を持つ組織として運営され、阿部氏はその専門性におけるマネジメントを統括する責任者だ。

図1 マトリクス構造のデータ組織
図1 マトリクス構造のデータ組織 [画像クリックで拡大]

 リクルートグループの会社統合や組織統合で、何がもたらされたのか。

 2021年、リクルートグループは中核事業会社と機能会社の7つの会社を統合して、一つの会社組織となった。データ推進室は各事業会社のデータ人材を集めて再編・組織化され、7つの会社にあったデータ組織を一つにまとめた形になり、マトリクスの構造を作る。

 阿部氏は統合直後を以下のように振り返る。

「会社統合した結果、リクルートは大小合わせて数百ものサービスを持つこととなり、各サービスの取り扱う商材やデータ属性、ユーザー層やアクション方法も異なる状況になっています。マッチングプラットフォームのメディアビジネスや「スタディサプリ」に代表されるサブスクリプションモデル、「Air ビジネスツールズ」などのSaaSモデルというようにビジネスモデルだけとってもバリエーションがある状態です」(阿部氏)

 さまざまな種類のサービスをもつ複数の会社組織を統合することは、それぞれ異なる事業領域の中で個別進化した複数の組織文化を一つの箱に強引に放り込むようなものだという。

 データ組織の観点からは、異なる技術スタッフが大量に集うことになり、クラウドをとってもAWS、GCP、Azureほかの多様な環境が存在していた。スタッフの技術にバラつきがあり、それを支える技術的思想も全く異なる。「デリバリーを促進する」、「品質を向上する」ための取り組みも、思想レベルで違いがあり、それぞれの思想が一つの組織の中に同居することで、多数の大変なコンフリクトが発生したという。

 通常、こうしたバラつきを標準化し、1つの手法や環境に揃えるアプローチがよく採用されるが、リクルートでは逆にその多様性を活かして、それぞれの事業領域の個別最適と全体のデータのバランスをとるアプローチを採用した。個別最適と全体最適という2軸の価値向上とそれぞれで向上した価値水準の維持を、「トップアップ」と「ベースアップ」、「ボトムキープ」という3つのアプローチを組み合わせることで図る方法である。

図2 価値向上と価値水準の維持を図る取り組み
図2 価値向上と価値水準の維持を図る取り組み [画像クリックで拡大]

次のページ
データ組織が目指す「多様性進化」の方法論とは

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
EnterpriseZine Press連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

Little Wing(リトルウイング)

ライター・カメラマンの集合プロダクション。記事制作、書籍編集、デザイン・レイアウトまで。代表:山本信行

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/18231 2023/09/01 11:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング