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「次世代データマネジメント」推進に向けたデータアーキテクチャを探る

自社はどこに? 5パターンでわかる“データ活用”の現在地 「次世代データマネジメント」実現への第一歩

【第1回】日本企業のデータマネジメント取り組み状況と今後目指すべき方向性


 ChatGPTをはじめとした生成AI技術が急速に進歩し、ビジネスにおける本格的な利活用を検討する企業が急増している。さまざまなテクノロジーが日々進化していく中、差別化や効率化などを図るために、これら進化に追従し、変革を進めようとする企業は多い。一方、筆者はこれらの取り組みに比例し、企業における「データマネジメント」の課題はますます多くなっていると感じている。連載「『次世代データマネジメント』推進に向けたデータアーキテクチャを探る」では、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデータ活用に関する取り組み状況を踏まえ、企業は今後データマネジメントとデータアーキテクチャをどのように捉え、推進していくべきかについて全4回にわたり解説していく。

日本企業の「データ」に関する取り組み状況

 ここ数年、多くの企業でDXが営まれており、いち早く新たなテクノロジーを導入する先進的な企業、それらに追従する企業も増えている。しかし、社内環境や各業界の特性などにより、なかなかDXに追従できていない企業も見受けられ、対応状況で大きく差が開いていることも事実だ。

 では、「データ」に関する状況はどうか。筆者がデータマネジメント/データガバナンスに関するコンサルティングを通じて感じるのは、“DXなどの取り組みに比例し、データマネジメントに関する相談が多くなってきている”こと、“特に先進的なテクノロジーの導入やDXを推進する企業からの相談が多くなっている”ということだ。

 こうした取り組みを進める企業は、さまざまな先進的なテクノロジーを導入することで、それぞれの領域での成功を(ときには失敗を)積み重ねている状況だと捉えることができる。しかし、“データの観点”で見るとデジタル化により、さまざまな種類のデータが急速に生み出されためにデータ量が膨大になり、データのサイロ化、ブラックボックス化、煩雑化などといったデータの課題がより顕著に。これらの課題を解決する道筋は見えず、本来達成すべきDXに赤信号が点った状態だと考えられる。

 これは、新たなテクノロジーやアプリケーションへの関心が高く、率先して投資がなされている一方、コアとなるデータに対しては企業理解が浅く、放置されてしまった結果と言える。そして、この状況は非常に多くの企業に当てはまると筆者は考えており、今後デジタル化が進めば進むほど、同じような状況に陥ってしまう企業が多数出るのではないかと危惧している。

 そこで本稿では、企業におけるDXやデータ活用に関する取り組みの状況を考察し、データの観点から目指すべき方向性について論じたい。なお、ここでは自社が現在おかれている状況や今後目指すべき事項などを理解しやすいよう、5つのパターンに整理した。

パターン1:DXやデータ活用の重要性は理解しているが、推進できていない企業

DXやデータ活用に関する取り組みの特徴
  •  DXやデータ活用に関する必要性は組織として理解しているが、どのように具体化すべきかイメージがなく、進んでいない
  • レガシーシステムから脱却できておらず、古いシステム環境や考え方に依存している
  • 多くの社員がアナログな業務やレガシー環境に妥協しており、変化を求めていない
  • 業務改善のためのシステムは導入されているが、データを蓄積・活用するための基盤や環境がなく、組織・人材も育まれていない
データに関する施策の実施状況
  • 業務報告はExcelなどで集計したレポートで十二分であると認識されており、DWH(データウェアハウス)やBI(ビジネスインテリジェンス)などのデータ活用環境への投資が進んでいない
  • 一部の担当者が属人的にBIツールなどを導入・利用しているが、組織的な利用はなされていない
  • 基幹システムや各業務システムから発行できるレポートなどで十二分に業務が遂行されているため、上位層の危機感が薄い

パターン2:DXやデータ活用の必要性を理解し、システム環境を整備している企業

DXやデータ活用に関する取り組みの特徴
  • 世の中の“DXの取り組み状況”などは理解しており、その流れに遅れないようにデジタル化やデータ活用環境への投資がなされている
  • データ活用基盤の構築、SaaSなどのクラウドサービス利用、レガシーシステムの刷新などが検討・実施されている
  • データドリブンな意思決定を促進させるため、BIツールなどの導入にチャレンジしている
データに関する施策の実施状況
  • データレイクやDWH、BIツールなどは導入されているが、一部のデータしか利用されておらず、組織全体でデータを活用していくような状況ではない
  • データ活用のニーズが強い、マーケティングやセールス、管理会計といった領域ではBIツールなどが有効的に利用されつつある

パターン3:以前からデータ活用基盤への投資をしているが、DXへ対応するために基盤の強化、再構築などを検討・実施している企業

DXやデータに関する取り組みの特徴
  • データレイクやDWH、BI、MDM(マスターデータ管理)などのデータ活用基盤、データ統合基盤は構築されており、社内である程度利用されている一方、DX推進、全社的なデータ利活用といった観点で再構築しなければならない状況にある

(例)

  • データ管理が上手くいっておらず、複数のデータ基盤環境が存在している
  • 一部データしか管理されていない、または冗長的な管理をしてしまっている
  • DX推進の名のもとにプロジェクト化はしているが、旧システムの置き換え、新たな業務領域のシステム化などに留まり、変革までたどり着く道筋がない
データに関する施策の実施状況
  • データ活用基盤、データ統合基盤に蓄積されているデータを上手く利用できないという課題に対応しており、データ活用を促進するため、データカタログやデータガバナンスの導入を検討もしくは実施している

パターン4:個々の領域ではDXが実現できている企業

DXやデータに関する取り組みの特徴
  • 個々の領域、強みとなる領域においてAI導入、データの高度分析などDXが推進されており、外部からも評価されている
  • ただし、遅れている領域もあり、全社的な取り組みとはなっていない
  • 個々で推進している側面が強く、全社的なデータ活用基盤などの取り組みが遅れている
データに関する施策の実施状況
  • 事業横断でデータ利活用を推進していくためにデータ活用基盤、データ統合基盤を導入している

パターン5:先進的なDXに取り組んでいる企業

DXやデータに関する取り組みの特徴
  • 自社でのデータ活用基盤、データ統合基盤が整備されているなど、環境が整っている
  • 企業全体としてDX推進、AI活用やデータの高度分析などに取り組んでいる
データに関する施策の実施状況
  • さらなる成長のために横展開やグループ企業間の連携、もしくは発展に向けたデータ統合基盤の強化・拡張を考えている

次のページ
5パターンから考える、データ活用推進に向けたポイント

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この記事の著者

小林 靖典(コバヤシ ヤスノリ)

株式会社クニエ シニアマネージャー
ITコンサルタントとして、システム企画、提案依頼書策定、要件定義分野から、データマネジメント/データガバナンス(データアーキテクチャ、MDM、データHUB、DL/DWH/BI、メタデータ管理、データ品質管理、データガバナンス組織構築、制度策定など)の分野で多数の実績を有...

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