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週刊DBオンライン 谷川耕一

クラウドだからできた、あたらしいERPの世界

 先週は、米国シリコンバレーにあるサンノゼでのイベント「SuiteWorld 2014」に参加していた。これはクラウドERPのトップベンダー「ネットスイート」の年次カンファレンスイベント。ERPという基幹系システムをクラウドに載せるというチャレンジを同社は続けており、日本でのビジネス規模こそまだまだ大きくないがひたひたとシェアを伸ばしている。

オムニチャネルとマーケティングオートメーションのバランスが大事

ザック・ネルソン氏
ザック・ネルソン氏

 今回、CEOのザック・ネルソン氏によるキーノートなどで、強くメッセージとして打ち出していたのがオムニチャネルだ。オムニチャネルは最近のIT業界における流行キーワードの1つ。販売チャネルや流通チャネルの統合といった意味で使われる。Eコマースなどの台頭で実店舗のビジネスが危機に瀕している中、むしろ積極的にEコマースなどのオンラインチャネルを活かしリアルとの融合で顧客に新たな価値を提供する。Web上のストアーで注文し店舗で受け取るといったことを、一貫したサービスとして顧客に提供するのも1つの例だ。

 このオムニチャネルを実現するのに、ERPで管理されている「商品の販売情報」が最も重要だと主張するのがネットスイートだ。さらに、ERPが整備されていれば調達や在庫管理、配送などの管理もシステム化され効率化されているはず。これらがクラウド上で1つのシステムとして存在することが、効率的で現実的なオムニチャネルを実現できる理由だと言うのだ。

 これが、CRMだけしかないとオムニチャネルはうまくいかない。顧客のマーケティング的な属性情報などは集約されるかもしれないが、実際にいつどこで何を買ったのか、商品はきちんと顧客のもとに届いているのかといった情報がすぐには揃わない。それらがなければ、どのタイミングでどんな情報を顧客に提供すればいいかの正確な判断ができない。つまりこれまでのオムニチャネルの課題は、コールセンターやEコマース、店舗のPOSシステムなどをばらばらに作ってきてしまったことだ。そのせいで顧客1人1人を即座に把握できないのだ。

 これを、単一のERPというバックエンドにデータを一元的に管理し、そこからフロントエンドの顧客チャネルに必要なデータを渡す構造にする。それができるクラウドサービスは、ERPが主軸として存在するネットスイートだけというのが、彼らが今回オムニチャネルを強く打ち出す理由だ。

 ネットスイートが主張するように、ERPの購買情報こそがオムニチャネルの核となる考え方は理解しやすい。多くのビジネスにおいて、売り上げや利益の多くは2割程度の優良顧客によってもたらされるという話がある。つまり、既存顧客からの売り上げを継続的に最大化できれば、その企業のベースとなるビジネスは確保されるわけだ。そのために、「誰が何をいつ買ったか」のデータをもとに顧客に対する売り上げ拡大シナリオを書くのはそれほど難しくないだろう。

 そういう視点では、購買情報を管理するERPをまずクラウドに載せたネットスイートには先見の明があったと言える。ちなみに、ネットスイートの創業者にクラウドのビジネスをERPから始めるべきだとアドバイスしたのは、いまもネットスイートの大株主でありOracleのCEOでもあるラリー・エリソン氏だ。

 ところで購買データにばかり執着していても、新規顧客の獲得には結びつかないのでそこは注意が必要だ。新規顧客を獲得するための施策はオムニチャネルと言うよりはマーケティングオートメーションの世界だろう。オムニチャネルとマーケティングオートメーションをどうやって連携、融合していくか。先端をいく企業ならば、すでにビジネス課題はそこに移っているかもしれない。

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クラウドERPを普及させるために

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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