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いよいよ本格始動、IBMのブロックチェーン活用事例


 今回のIBM THINK 2018で大きく取りあげたテーマの1つが、ブロックチェーンだ。CEO ジニー・ロメッティ氏の基調講演でも、海運事業を行っているマースクがIBMのブロックチェーンを活用する事例が紹介された。

ブロックチェーンのエコシステムへの参加者全てがメリットを得られるようにする

IBM Food Trust 
バイスプレジデント ブリジッド・マクドマット氏

 海運ビジネスの規模は、世界で年に4兆ドルにも上る。貿易で流通している品物の80%は船で運ばれているのだ。海運でものを運ぶ際、書類などをやり取りする管理コストがコストの20パーセントを占める。世界経済フォーラムによると、国際的なサプライチェーン内の障壁を削減すれば世界の貿易量を約15%増やせる可能性があり、経済の活性化や雇用の創出につながるという報告もある

 デンマークの海運コングロマリットA.P. モラー・マースクは、売上高世界一の海運企業だ。同社はIBMと合弁会社を作り、ブロックチェーン技術を利用した国際貿易遂行のための、より効率的で安全な方法を提供すると2018年1月に発表した。基調講演に登場しマースクとIBMのジョイントベンチャー企業のCEO マイケル・ホワイト氏は「海運の世界は、今はまだ紙に依存しています。それが世界貿易を妨げています。たとえばアボカドが港を出て消費者に流通するのに、30あまりの会社がかかわります。グローバルの輸送費を管理費が超えることもあり、これを変えなければならないのです」と語る。

 グローバル貿易をデジタル化し、世界を変える。「ブロックチェーンを使えば、簡単にセキュアな形でデジタル化が実現できます。ブロックチェーンを使い、グローバル貿易のエコシステムを作ります」とホワイト氏。今は統一がとれていない紙の書類を使っている、複数の貿易当事者がいる。それをブロックチェーンで実現する分散されたデジタルの台帳を使うようにする。それにより、サプライチェーンの仕組みが信頼のもとに効率化できる。

 ブロックチェーンにより、各プロバイダー間で不変の信頼が得られる。現状では「サインするのは誰か」を明らかにせずに書類を承認するようなこともあるが、新たな仕組みではそういったものがなくなり、運ばれている商品のトレーサビリティも瞬時に可能となる。ポイントとなるのは、海運のブロックチェーン・エコシステムの参加者全てが、それぞれに価値を見出せるようにすること。サプライチェーンの中の誰かだけが得をするような仕組みでは上手くいかないと指摘する。

 「エコシステムでは、海運に関わっている人をブロックチェーンでつなぎます。それが結果的には、港湾施設や船着き場の効率的な使い方にもつながります。海運では商品在庫を持てば、コストがかかります。どこに何があるかをなるべく早く上流で情報を掴めれば、短時間で在庫をリリースできるようにもなります」(ホワイト氏)

 またペーパーレス・トレードの実現で、輸入関係のコストは大きく下がる。再入力の手間は80%以上削減され、リアルタイムに近い形で情報を取得できる。実際、ブロックチェーンのエコシステムに参加したいというサプライヤーも増えてきている。

 IBMは2016年にブロックチェーンに本格的に取り組みを始め、これまでにユーザーの多くの要望を取り込んできた。2017年にはそれを使いPoCやパイロットプロジェクトを数多く実施している。そして2018年は、このマークスの事例のようにブロックチェーンは本番展開の年になる。

 従来のデジタル化のプラットフォームでは、何らかのサプライチェーンのようなものを管理しようとすると、中心にはブローカーが存在し、ミドルウェアを通じてコントロールしてきた。これに対しブロックチェーンは、PtoPのコミュニケーションであり、ミドルウェアは必要ない。より高速に処理でき、監査対象となっても耐えうる透明性を提供できる。

 こういったイノベーションは、オープンスタンダードの中から生まれる。そのため、IBMではオープンソースのブロックチェーン・プラットフォーム「ハイパーレジャー」のコミュニティに参加し、そこで大きな貢献もしている。結果的にハイパーレジャーでは、ブロックチェーンの中でも最も速いイノベーションが続いている。

 ブロックチェーンをビジネスの現場で利用するには、拡張性とエンタプライズレベルのセキュリティが重要になると。これを提供するために、IBM zEnterprise Systemをベースとした堅牢なIBM Cloudでブロックチェーンの仕組みを提供している。この仕組みではあらゆるところで暗号化されており、性能的には1秒間に数1,000のトランザクションを処理できる。

 IBMではこの仕組みを試す環境として、IBM Blockchain Platform Starter Planの提供を開始した。これは2ノード2社のメンバーで利用でき、30日間は無償で使える。従量制の仕組みで、小さく検証から始めて、本番に移行することも容易なものになっている。

次のページ
ブロックチェーンは既存の仕組みを置き換えるのではなくプラスアルファでトラストを入れる

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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