1. 基幹システムを更新する動きが進み、市場の成長を支える
2018年のERPパッケージライセンス市場(エンドユーザ渡し価格ベース)は1,123億7,000万円で、前年比4.4%増となった。2017年は前年比0.8%増とほぼ横ばいだったが、2018年は再び堅調な伸びを示した。ユーザ企業のERPへの投資意欲は高い水準を維持しており、経営環境の変化にあわせて基幹システムを更新する動きが進み、市場の成長を支えている。
近年は、特にデジタルトランスフォーメーション(DX)としてITを活用し、事業変革を目指す動きが起きている。2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」においては、DXを実現する上でレガシーシステムを見直すべきであると指摘されている。
ERPにおいても、老朽化・複雑化したシステムを再構築することにより、経営データ活用の迅速化、運用管理のシンプル化、業務生産性の向上などの効果を得ることが期待できる。
2. クラウド化が進展し、2020年には利用率が45.8%に達すると予測
ERPパッケージのクラウド化が進んでいる。IaaS・PaaSの利用及びSaaSの利用を合計したクラウドの、2018年時点での利用率は28.2%であると推計する。アプリケーションをクラウドで利用するSaaS型のERPはまだ製品(サービス)の種類が少なく、ユーザ企業の利用率も低いが、システムの基盤にIaaSやPaaSといったクラウドを利用する企業は大きく増えている。
今後も、IaaS・PaaSの利用が牽引する形でクラウドの利用は拡大を続け、2020年にはERPのクラウド利用率は45.8%に達すると予測する。
3. 2019年は1.165億2,000万円で、前年比3.7%増になると予測
2019年のERPパッケージライセンス市場(エンドユーザ渡し価格ベース)は1.165億2,000万円で、前年比3.7%増になると予測する。2019年に入っても、ユーザ企業の投資意欲が減少する傾向はみられない。事業変革を目指すDXという大きな流れを背景にしているため、市場は底堅いと見込む。
ただし、景気の先行きには不透明感が強まっている。世界的な株安や円高が起きており、政府発表の各種指標にも陰りが見えることに加え、国内では2019年10月に消費税増税が予定され、国内消費の減退も懸念される。景気悪化は、ERP市場にもマイナスの影響を与えるため、経済動向には注意する必要がある。
なお、この内容について詳しくは、矢野経済研究所が刊行した「2019 ERP市場の実態と展望」に掲載されている。
■調査概要
- 調査期間:2019年5月~8月
- 調査対象:ERPパッケージベンダー
- 調査方法:専門研究員による直接面談