PwCネットワークの戦略コンサルティングチームStrategy&は、調査レポート「量子コンピュータがもたらす産業構造変革」を発表した。
2019年10月、Googleの研究グループが、スーパーコンピュータでは1万年かかる問題を量子コンピュータによりわずか3分程度で解いたと発表し、大きな話題となった。
現在使用するコンピュータ(古典コンピュータ)は、0か1のどちらかの値で表現される「ビット」で演算を行うのに対し、量子コンピュータは「量子ビット」と呼ばれる情報単位を使い、量子力学的な重ね合わせの状態(0と1の状態を同時にとる状態)を活用して演算を行うことで、古典コンピュータよりも高速で問題を解くことが可能になる。
本調査レポートでは、汎用的な演算に活用できる「ゲート型量子コンピュータ」と、最適化問題に特化した「アニーリング型量子コンピュータ」の2種類の量子コンピュータの特徴や開発状況などについて解説を行っている。
その中で、量子ビット数100以上が実現された段階を第1段階、数千万量子ビット以上が実現された段階を第2段階として、それぞれの段階で量子コンピュータの適用が検討される主な産業をユースケースとともに紹介しているという(図表1)。
また、Strategy&は、ムーアの法則を量子ビット数に適用した議論を参考にして、第1段階の量子コンピュータは2025年までに実現、一方、第2段階となるRSAなどの暗号の解読が可能なレベルの量子コンピュータの実現は、2040年代中ごろになると予測されている。
他にも本調査レポートでは、量子コンピュータが実装された後の世界において想定される既存プレイヤーへの影響について、創薬・素材産業や金融などを例に挙げ論じている。
さらに、RSA暗号や楕円曲線暗号の解読が可能になるとされる段階まで量子コンピュータの開発が進んだ際に、サイバーセキュリティ領域に新たに起こり得る国防も含めたサイバーセキュリティ領域への影響の可能性についても示唆しているという。