Sansanは、地域金融機関における社内業務のデジタル化・デジタルトランスフォーメーション(DX)の取組み状況の調査結果を公表した。
同社は法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」の提供を通じて、顧客情報を見える化することで、名刺管理を起点に企業のDXを推進してきた。今回、地域金融機関においてもDXの基盤整備の必要性が高まっているとし、デジタル化やDXの取り組み状況の実態と課題を調査したという。
調査結果
1.昨年同期比で62.8%が売上減、56.5%が利益減と回答
売上高(業務粗利益の前年同期と比較しての変化)が前年同期比で減少に転じていると回答した人は、「20%以上減(11.3%)」、「10-20%未満減(17.0%)」、「1-10%未満減(34.5%)」と全体の62.8%だった。また、「利益」については、「20%以上減(8.0%)」、「10-20%未満減(14.0%)」、「1-10%未満減(34.5%)」の合計56.5%が前年同期比で減少した。
その中でも10%以上減少に転じたと回答した人は、それぞれ28.3%、22.0%と、およそ全体の4分の1を占める結果となり、地域金融機関が経営改革に迫られている状況が明らかになったとしている。
2.72%が社内業務のデジタル化・DXの必要性を感じているが、25%は計画含め着手予定なし
デジタル化・DXについて、「必要性を感じている(46%)」、「やや必要性を感じている(26%)」と、全体の72%が少なからず必要性を感じている状況が明らかになったという。また、DXを推進する前段として必要不可欠な社内業務のデジタル化は、「あまり進んでいない(20%)」、「進んでいない(9%)」と全体の29%が「進んでいない」旨の回答となった。
また、「またどちらとも言えない」という回答も37%に上り、昨今では働き方改革や生産性向上がキーワードになりながらも、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、デジタル化の歩みが加速したとまでは言い切れない実態が明らかになったとしている。
3.デジタル化の障壁となっているのは投資コストや人材不足。30%以上の人が、紙の書類や手続きやハンコ文化を廃止、IT人材の確保に取り組みたいと回答
デジタル化を進める上での障壁として、「投資コストが莫大(72.8%)」に「デジタルやテクノロジーに関するスキルや人材の不足(36.5%)」が続く結果となった。今後取り組みたいことについても「IT人材の確保(34.0%)」との回答が2番目に多く、投資コストなどの課題のほか、デジタル化を推進する人材確保や知識レベルの底上げが障壁となっている状況がうかがえる。
また、今後取り組みたいことの上位には「紙の書類や手続きやハンコ文化を廃止(36.7%)」、「顧客との面談のオンライン化(29.6%)」などが挙がり、対顧客サービスの向上に寄与する項目への着手を展望していることがわかった。
地域金融機関におけるデジタル戦略のポイントについて
コロナ禍において地域金融機関にとって大切な経営のポイントを、デジタル化の観点から滋賀銀行 社外取締役/モルガン・スタンレーMUFG証券 顧問/Sansan シニアアドバイザー 安井肇氏は以下のように解説している。
「コロナ禍で地域金融機関は、地元企業の資金繰り支援を積極的に行う等金融仲介機能を十全に果たしていますが、他方でコロナ前からある課題への対応は益々緊要度を増しています。自らの貸出金利や世界的な債券金利の低下に加え、デジタル化が一段と加速化しているからです。今地域金融機関には、社内業務のデジタル化とデジタル技術を取り入れた顧客ニーズに対応した金融サービスの創出、特に取引先企業のafter/withコロナの需要構造に即応できる事業モデルへの移行促進や生産性向上支援等を通じた自らのビジネスモデルの転換が必要です。
地方銀行や信用金庫に勤務する管理職を調査対象とした今回の調査では、デジタル化に課題を感じつつも、コストや人材確保が障壁となり足踏みをしている状況が明らかになりました。デジタルを活用した金融サービスは地域を越え業態を超えて押し寄せてきます。地域金融機関は、IT人材の不足を外部のツールや人材を活用してDXを早急に進め、取引先企業の持続的な価値創造に貢献して自らの営業基盤を維持発展させると共に自らの『稼ぐ力』を高めることが、地域経済におけるエコシステムの中核として将来にわたって自ら生き残る道だと考えます。」
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