ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は、デジタル・トランスフォーメーション(DX)とデータ/アナリティクス(D&A)の取り組みに関する調査結果を発表した。
世界では、D&Aリーダーの大半がDXに深く関与
ガートナーが昨年11月に世界で実施した第6回CDOサーベイにおいて、世界でDXに取り組んでいる組織の割合は全体の8割超に上り、そのような組織のD&Aリーダーの76%がDXを主導またはそれに深く関与していることが明らかになったとしている。このことから、世界ではDX推進にD&Aリーダーの深い関与が不可欠になっている現状が浮き彫りになったという(図1参照)。
日本でもDXは進展しているものの、D&Aの専任組織の設置は増えず
日本でも、DXやデータ利活用に取り組む大企業は増加。同社が日本のIT部門を対象に実施した昨年11月の調査では、従業員2,000人以上の大企業の約8割が、DXやデータ利活用に取り組んでいると回答したという。しかし、そのような企業のうち、DXとデータ利活用を明確に区別して取り組んでいるという回答者は14%にとどまり、大半の回答者は、DXとデータ利活用を区別せずに取り組んでいることが明らかになったとしている(図2参照)。
加えて、世界では特に欧米の大企業を中心に、D&Aに責任を持つ最高データ責任者(CDO)などの役職者の設置が増加しているが、日本の大企業では、それに相当する責任者はまれにしか見受けられないという。日本では、データの利活用によってビジネス成果を得る責任の所在を尋ねても不明確であったり、各業務部門や経営企画部門などが挙げられたりする場合が多く、専任で主管組織を設置する企業は少ないのが現状。実際、同社が日本のIT部門を対象に実施した昨年11月の調査でも、従業員2,000人以上の大企業において、データ利活用の専門組織を設置しているとの回答は15%にとどまったという。
アナリストでディレクターの一志達也氏は、「今回の調査や顧客との対話などから、日本と世界では、DXやD&Aの取り組みを担う責任者・役割の定義に違いがある現状が見て取れます。世界では大企業を中心にCDOが増加しており、CDOのリーダーシップの下、D&Aの取り組みを進めています。一方、日本の企業ではD&Aの取り組みの責任を担うCDOはいまだほとんど存在していません。日本は大企業を中心に専門組織の設置など、DXへの取り組みが積極的に行われており、データ利活用をその一環と捉えて最高デジタル責任者の下で取り組んでいるケースが多く見受けられます」と述べている。
また同社は、「2023年までに、CDOを持たない企業の最高デジタル責任者の半数は、成功するためには事実上のデータ責任者になる必要があると考えるようになる」との仮説を立てているという。
さらに、一志氏は「DXの推進にはD&Aが不可欠ですが、その2つを混同すべきではなく、D&AがDXの一部であると捉えるのは誤解です。世界と日本の状況を比較すると、責任者の明確化と組織的な関与に違いが見られます。DXやD&Aの取り組みを推進する際は、IT部門やビジネス部門の区別なく取り組むことが重要です。技術やインフラだけでは成果を得られないため、DXやデータ利活用の取り組みには、ビジネス部門を中心とした関係者の理解と協力が不可欠です。そのために必要な人材の確保やガバナンスの整備に加えて、データ・リテラシーの向上や組織文化の構築も考慮して取り組むことが求められます。つまり、技術やインフラとは無関係な要素に焦点を合わせて優先的に取り組まなければならないのです。組織のリーダーは、DXとデータの利活用にバランス良く取り組むことで相乗効果を高められるよう、資源の配分などを行うべきです」とコメントしている。
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