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テープはエコなストレージ

 一時期、テープ代わりにディスクを使おうという風潮が広まったことがあった。丁度SATAディスクが一般的に利用される時期とも重なったため、各メーカーは挙ってテープを廉価なSATAディスクに置き換えることを推奨した。

 しかし現実にこれはあまり流行らなかった。意外と知られていないことだが、これは近年話題となっている地球温暖化と密接な関係がある。ディスクは使っていないときでもモーターを回して回転している必要があり、誰もいなくなった夜中であってもいつ使われるかもしれないということで回り続けている。これが「エコなこと」と相反するとユーザーに捉えられたのだ。

ディスクはラーメン屋?

 これはお客さんがあまり来ない夜中のラーメン屋さんに良く似ている。夜中でも大繁盛でお客さんがひっきりなしに来ると言うのであればいざ知らず、いつ来るか判らないお客さんに備えてラーメン屋さんはラーメンを茹でる湯を沸かし続けている。スープについてもまた然りだ。かといって鍋の火を落としてしまっては、お客さんが来たときにすぐにラーメンを出すことはできない。お客さんが来てから火をつけていたのでは、あそこの店はラーメンが出るのが遅いと悪い評判が立ってしまうからだ。故に延々とガスの火を絶やさないように湯を暖め続けるしかない。

 話をディスクに戻すが、中にはディスクへのアクセスが一定時間無かった場合、ディスクの回転を停止させるような省エネ・タイプのHDDまで登場しているが、停止しているとはいえ、ユーザーが使いたいと思ったときには起動しなければならないので、意外と待機電力を消費することに変わりは無い。それにディスクは普通に回転している状態が一番安定しており、起動と停止を繰り返すのはHDDにとってあまり好ましいことではない。最悪な状態である「ヘッド・クラッシュ(Head crash)」を引き起こす確率を高めてしまうからだ。

 ヘッド・クラッシュは文字通り読み書きヘッドが壊れてしまうというディスクにとっての致命的な障害だ。ディスクのヘッドは円盤の回転により発生する空気の流れを利用した空力抵抗で浮上させるため、よく飛行機に例えられるが、これも飛行機に置き換えて考えればわかり易い。つまり飛行機が空を巡航状態で飛んでいる時よりも、空港で離着陸する時のほうが、圧倒的に事故が多いのと同じ理屈だ。起動と停止を自動的に繰り返すディスクは相対的にはエコであることに違いないのだろうが、危険と隣り合わせというリスクを背負っている点は留意しておく必要がある。

 話をテープに戻すが、テープであれば例え何千本、何万本というカートリッジがあったとしても、実際にユーザーから要求があって読み書きする時以外には電気を消費することは全く無い。故にバックアップのように数多くの世代を保持するようなタイプのストレージや、アーカイブのように長期にデータを保管するストレージとしては最適なものと言える。

 テープは元々ドライブの数とカートリッジの数が1対多の関係にあるため、装備するドライブを少なくすればするほどエコになる。もちろん、ドライブは多ければ多いほうがアクセスに便利なことは言うまでもない。更にテープのカートリッジは熱エネルギーの元になる燃料にリサイクルさせることができるのだ。これは単にテープ・カートリッジを炉に投げ込んで燃やすという訳ではなく、一次処理として火を使わずに高温のガスで一旦カートリッジを炭素の塊のような状態に変え、その後、できた塊を燃料として再利用するという優れたリサイクル技術も実用化されている。加えてユーザーはディスクに比べて容量単価が非常に安いため、テープはディスクに比べて20倍もエコであるという報告もなされており、ユーザーにとってテープは経済的でエコノミーであり、地球にとっては環境に優しいエコロジーなストレージなのだ(図11-1)。

図11-1 テープは地球にもエコ、経費にもエコ
図11-1 テープは地球にもエコ、経費にもエコ

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プロフィール
佐野 正和サノ マサカズ

1986年日本アイ・ビー・エムの入社、本社SE技術部門で13年間ストレージ製品を中心に技術サポートを行なう。1999年にストレージ製品事業部に移り、以後、IBMストレージ製品の営業推進やソリューション推進、製品企画などの業務に携わる。現在、システム・ストレージ事業部でソリューション担当部長を拝任し、同社に17人いるシステムズ&テクノロジー・エバンジェリストの一人として各種講演活動も積極的に行なっている。




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