ITによる業務への直接的貢献を期待される情報システム部門
野田伊佐夫氏

ITがビジネスの成否を決めると言われて久しい。その担い手である情報システム部門への期待感は徐々に高まり、業績向上に直接貢献することまで求められるようになった。確かに、BPM(Business Process Management)やSOA(Service Oriented Architecture)などの取り組みによる情シス部門の「業務貢献」は、いまや事業に直結したミッションとなりつつある。業務改革や新規事業の成否はITがカギを握るといっても過言ではない。
「そんなこといわれても、という人は多いでしょうね」と株式会社オープンストリーム取締役の野田伊佐夫氏は苦笑する。
「よくあるのが『顧客価値創造企業になろう』とか『年間○%の成長率をめざそう』というようなお題目を並べられて、『タブレットを使えば提案効率が上がり、営業訪問件数が増やせるでしょ』などと安易に言われてしまうケースです。そもそも様々な基軸に則って全体を俯瞰した場合、ほんとうに『営業支援だけ』でいいのか疑問でしょう。単にタブレットで訪問件数を増やすだけでなく、そのデータを商品開発に活かすとか、顧客満足度を上げるとか、業務連携による総合的なIT活用こそが必要でしょう」
こうした背景のもと、ビジネスとITの緊密な連携を行い、迅速にプロジェクトを進める方法として、アジャイル型開発手法が提唱されている。しかし、従来の開発プロセスと管理方法が全く異なるため対応できる人材が少ないこと、ユーザーの要求をコントロールできずに予算をオーバーしかねないなど、様々な問題を抱えており、特に最も大きな障壁とされているのが、管理思考が強い日本企業の組織的な問題だ。工数が未確定の見積段階では決裁が下りないことも多く、一括請負契約ではオーバー分が回収できない可能性がある。画期的な開発手法とはいえ、なかなか採用できていないのが実状だ。