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福田新社長が語る新生SAPジャパンの戦略


 SAPジャパンは9月18日、7月28日付で代表取締役社長に就任した福田譲氏の社長就任会見を開催した。抱負として、「変革を志すすべての人のパートナーであり続けること」「会社を変え、社会も変える」の2点を上げ、具体的な施策として「海外グローバル人材の輸入」「ERPへの再フォーカス」「クラウド」「公益、自動車、保険業界へのフォーカス」などに取り組んでいくことを強調した。

SAPの新社長に就任した福田氏
SAPの新社長に就任した福田氏

 新生SAPジャパンの船出にあたって、福田氏が明かした抱負は、「変革を志すすべての人のパートナーであり続けること」「会社を変え、社会も変える」の2点。福田氏は、「SAPは長らく、変革を志す方々がお客様でした。これからもそれは変わりません」とし、次のように「変革」や「変える」という言葉に秘めた思いを述べた。

 「グローバルで42年、日本で22年ビジネスをしていますが、会社を変えることに情熱を持つ人と一緒にしてきました。むしろ、グローバル化し、これからの行く末が見えてくると、今までの良さを残しながら、根本的なところを変えていくことが重要になってきます。本気で物事を変えようとしている企業や人を応援し、変革に貢献し続けられる企業や個人でありたいと思っています」(福田氏)

 そうした取り組みを進めるためのキーワードとして挙げたのが、「Globalization」「Transformation」「Innovation」の3つ。Globalizationについては、「10年前と比べて、質や深さ、本気度がまったく違っている。世界で本気で勝ちに行こうとしている企業や個人を応援する」と補足した。また、TransformationやInnovationについては「この2つは、日本企業は苦手科目とされているが、今後ますます大事になる。改善モデルを超えた新しいモデルにどう移行するか、堅実性、一貫性を保ちながら、どう変革していくかが大きなテーマだ」と説明した。

 「言葉だけだと浮いてしまうが、『この3つについてはまずSAPだ』という期待をもってもらう企業にしていきたい」(福田氏)

 福田氏は、1997年4月にSAPジャパンに新卒入社した生え抜き。会見に先立って「自分の人となりを知ってもらいたい」とし、新入社員から現在までの経歴を振り返った。新入社員100人中5人だけの営業の1人として入社し、「IT素人」ながら、1年目に「SAP販売/物流認定コンサルタント」の資格を取得し、「SAP R3」の販売に従事した。入社から5年間は、プロセス製造業の顧客を担当し、2002年からは、化学/石油業界を担当。「眼の色を変えて奮闘していらっしゃる経営陣やキーマンに接しながら、改善の延長ではない業務改革プロジェクトを担当させていただいた。今日の価値観の基礎になっている」と話した。

 その後の5年間は、化学/石油業界にくわえ、医薬品業界、中堅中小顧客の3つの異なった仕事をした。いまでこそ当たり前になった、ERPの業種別テンプレートは、このときに開発されたものだという。また中堅市場向けでは、テンプレートにとどまらない、導入プロジェクトの進め方をフレームワーク化し、短期化を図った。

 また、食品/消費財向け担当では、日本独特の商流、商習慣に合わせるために、日本向けの独自モジュール開発を行った。「SAPの標準に合わせるのではなく、SAPが日本にアダプトすべきだとSAP本社とかけあった。本社に日本の食品消費財業界向けの開発者チームを作ってもらい、新木場で実際に日本の消費者の行動をみてもらった。日本の消費者は、土日に買いだめをするのではなく、毎日新鮮なものを買いに来る、牛乳だったら棚の奥から新しい日付のものを選ぶ、消費者を飽きさせないために小売店は毎日特売を行う、といったことをきちんと説明して納得してもらった」という。その結果できたのが、「帳合ルート管理」というサブモジュールだ。

 その後、2006年に派遣で海外の大学院(INSED Regional Management Development Program)を終了し、帰国後、英語を使った仕事をしたいと申し出て、イギリス人を上司として、グローバルカンパニーの流儀やコミュニケーションの方法を学んだ。ビジネスオブジェクツやサイベースの統合にも立ち会い、異なった文化をどのように1つにしていくかを学ぶことができたことも大きな経験だったという。

 そんな福田氏が、今後の具体的な施策、フォーカス分野として挙げたのは、「SAPジャパンのGLOCALIZATION」「Globalインダストリービジネスユニット」「ERPへの再フォーカス」「Platform/Technology」「Cloud」の5つ。

 SAPジャパンのGLOCALIZATIONは、ローカル法人としてのSAPジャパンがグローバル対応することを指している。福田氏によると、顧客や社員から「付き合っているのはSAPでありSAPジャパンではない」「SAPジャパンはSAPの販社」といった評価をされることがあるという。

 「SAPジャパンとして、世界の経験を日本企業に提案し、実装できるようにする。そのために、営業部門、営業技術部門、実装するコンサルティング部門で、グローバル人材を海外から"輸入"することに取り組む。逆に、日本人社員を海外に出し、再輸入する。社内言語の英語化にも取り組み、世界で評価され、貢献できる人材の育成に務める」とした。

 2つめのGlobalインダストリービジネスユニットは、そうしたグローバルの知見を最大限に生かす組織や仕組みの導入のことだ。まずは公益、自動車、保険の3つの業界にフォーカスし、年末までに、グローバルの知見を生かすビジネスユニットを作り上げていくという。

 3つめのERPへの再フォーカスは、まだ国内でSAP ERPを採用していない企業に対してアプローチすることだ。国内売上げトップ100企業のうち、SAP導入企業は半分に満たない。「何が障壁になっているかをしっかり調査し、HANAやクラウドといった新しい時代のERPを新しい文脈で訴求していきたい」とした。

 4つめのPlatform/Technologyは、予測分析や情報活用、モバイルといった、ERP関連市場での取り組みや、HANAなどのプラットフォーム市場での取り組みを進めること。パートナー企業との連携や共同開発で、日本にあったスクラッチ開発のほか、さまざまなアプリケーションの開発に力を入れていく。

 最後のCloudは、まずは、既存ERP環境をクラウド化する取り組みに力を入れる。また、人事や購買、営業マーケティング、中小向けERPといった、買収などによって得たさまざまなSaaS事業を強化していく取り組みもある。来年にかけて、新たなサブスクリプションモデルも開発する。

 最後に福田氏は、「これらは複雑にからみあっているが、しっかりとそれぞれにフォーカスし、顧客から必要とされる存在になっていきたい。なかでも、クラウドとHANAがイノベーションの中心になる。『Run simple.』という考えのもと、これから、思いをかたちにしていきたい」と話した。

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この記事の著者

齋藤公二(サイトウコウジ)

インサイト合同会社「月刊Computerwold」「CIO Magazine」(IDGジャパン)の記者、編集者などを経て、2011年11月インサイト合同会社設立。エンタープライズITを中心とした記事の執筆、編集のほか、OSSを利用した企業Webサイト、サービスサイトの制作を担当する。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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