今回の調査は、2015年3月にガートナージャパンが国内の企業に実施したもので、ユーザー企業、ベンダー企業双方を含むITリーダー(ITインフラに導入する製品/サービスの選定や企画に関して決済/関与する人)515人を対象にした。対象企業の業種は全般にわたり、従業員数規模は500人以上から1万人以上までの企業が含まれている。
調査結果によると、クラウド・コンピューティングの採用率は16%となり、2012年の10%から着実に上昇している。また、クラウドIaaSに期待する稼働率について、40%以上が「99.999%」でなくてもよいと考えているという。
日本におけるクラウド・コンピューティングの採用状況
すべてのクラウドにおいて採用が進んでいる中で、種類別には、SaaSが28%と最も採用率が高く、続いてプライベート・クラウド(23%)、ホステッド・プライベート(18%)、PaaS(16%)、IaaS(15%)、ハイブリッド(12%)、デスクトップ(10%)の順となっている。
クラウド・コンピューティングの採用率は、2014年には足踏みの感があったが、2015年に入って急速に高まっている状況がうかがえる。ガートナーのリサーチ部門バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏は、「クラウド・ファーストという言葉も浸透し、『クラウドを採用しない』という選択をしにくくなっている企業が増えていることの表れといえます」と述べている。
一方、「よくあるお問い合わせの多くは、どのクラウドを選ぶべきか、どうやってクラウド化すればよいのかといった『基本の確認』であり、多くの企業は試行しながら引き続き手探りを続けている段階といえます。また、毎年の調査の結果はあくまでも回答者が回答したものであり、世の中で必ずしもクラウドではないものまでがクラウドと呼ばれている状況、いわゆる『何でもクラウド』となっている中で、回答には本来クラウド・コンピューティングとは呼べないものが含まれている可能性があることに注意が必要です」とも述べている。
IaaSに期待される稼働率
今回、クラウドIaaSに期待される稼働率についても調査を行った。その結果、40%以上が「99.999%でなくてもよい」と考えていることが明らかとなった。
この結果について、前出の亦賀氏は次のように述べている。
「多くのクラウドIaaSが提示するサービス・レベル合意(SLA)は99.95%であり、これは絶対に止まらないことを保障するものではありません。日本では、業務システムは絶対に止まってはならないという暗黙の認識が根付いており、クラウド導入のハードルを上げている側面がありましたが、今回の調査の結果、多くのユーザーが、クラウドの実態に即した考え方を持っていることが明らかになりました」
「企業は各業務システムに期待されるSLAには『松竹梅』のように異なるサービス・レベルがあることを理解し、その考え方に基づいて仕分け、それぞれの業務システムに合った適切なクラウドを選択することが重要です。特にコスト削減を求める企業では、できるだけ『梅』や『竹』を増やすことがコスト削減の鍵となります。一方、『松』の要件のシステムをクラウド化しようとすることはコストやリスクの観点から避けるべきです。ベンダーやインテグレーターもこの結果を踏まえ、何でも『松』のような提案ではなく、システムの要件に応じた、割り切った提案をすることも重要です」
なお、ガートナーでは5月26~28日、虎ノ門ヒルズ (東京都港区) において、「ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2015」を開催し、亦賀忠明氏をはじめ、ガートナーの国内外のアナリストが、デジタル・ビジネスの時代に向け、ITインフラの企画、設計、構築、運用に携わるリーダーがなすべきことについて、さまざまな知見を提供するとしている。