IoT時代のエッジコンピューティングはアナリティクス志向
広域に分散したモノや人をICTで連携させ社会やビジネスの効率を高めるには、IoT(Internet of Things)デバイスと、IoTデバイスから遠く離れたクラウドコンピューティングだけでは不十分で、IoTデバイスの近くでコンピューティング処理を行うエッジコンピューティングが必要であるということが広く認識されつつある。
エッジコンピューティングと類似の概念としてフォグコンピューティングがある。エッジコンピューティングはこれまでも、Webパフォーマンスの向上を目的とするCDN(Content Delivery Network)などで広く利用されてきたが、IoTにおいてその重要性に再び注目が集まっている。
IoT時代において、エッジコンピューティングは、クラウドコンピューティングと並んで重要になるとIDCでは予測している。今回の調査では、国内ベンダーのエッジコンピューティングへの取り組みについて広く調査した。その結果、IoTで利用されるエッジコンピューティングの特徴として、以下の点が明らかになった。
・アナリティクス志向:IoTデバイスで生成された膨大なデータを、クラウドに集約せずに、IoTデバイスにより近いところでアナリティクス処理するために、エッジコンピューティングが利用される。
・システムの機能分散による全体最適化:システム全体(エッジ、クラウド、IoTデバイス)にインテリジェンス機能を分散し、これらを連携させることで、システム全体のコストや負荷を低減させることができる。
・異なるエッジ間で連携:エッジコンピューティングがデータ流通プラットフォームとなり、エッジ間でデータを流通させることで、企業や業界の壁を越えてデータを利活用する新たなソリューションとビジネス機会がつくられる。
将来データ流通基盤として重要な役割を担う
また、エッジコンピューティングは、エッジのロケーションによって、オンサイト型と広域ネットワーク内型の2つに分類することができ(参考資料図参照)、それぞれ適するユースケース(用途)が異なること、および、クラウドコンピューティング同様、パブリック/プライベート/業界(コミュニティ)型などに分類されることも分かった。
現在、エッジコンピューティングについての一般的な認識は、レスポンスのリアルタイム性を高めるための、IoTデバイスとクラウドコンピューティング間の中間システムといった程度にとどまっている。しかし今後、データを利活用するための基盤としても、エッジコンピューティングの重要性は高まっていくとIDCではみている。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は、「IoTに取り組むベンダーおよびユーザー企業は、エッジコンピューティングが将来データ流通基盤として重要な役割を担っていくことを認識すべきである」と提言している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2016年 国内エッジ/フォグコンピューティング市場分析:IoTのための分散協調とデータ活用のプラットフォーム」にその詳細が報告されている。このレポートでは、IoT時代のエッジコンピューティングの役割と機能、将来への影響、またこれを見据えた国内ベンダーの動向をまとめている。